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魔物退治

 ルーナリアは、今まで考えついたことを、思い出せる限り伝えた。

 だが、一番筋道が通っているのが、務めを果たした後に命を失うということだった。フォルマも同様の考えだという。

 膨大な魔力の行使には、それ相応の対価が必要だ。自分の実力以上の魔力を使おうと思えば命が削られる。だが、どんなに無茶をしようとしても、体は命を優先する。何度も何度も繰り返せば本当に命の危機が訪れるかもしれないが、魔法を使うことで命を落とすことがないように、体は出来ているらしい。命を代償に魔力を使うことが出来るとなれば、それを悪用しようと思う輩は出てくる。それが行われないように創造主はしたらしい。

 だからこそ、虹の魔法使いが命を落とすとなれば、大ごとになるのだ。

 虹の魔法使いが、ただの救世主で、英雄であったならば問題はない。だが、それが命と引き換えの行為となれば、反発が生まれる。

 善人は、虹の魔法使い1人に負担を押し付けず、それ以外の方法で国に平和をもたらす方法を検討する。親類縁者ならば余計にそうだろう。そしてそれが無理だと分かったところで、虹の魔法使いに勤めを請えば、それが国王陛下であっても非難は免れない。命と引き換えの平和を望まないほど、この国は平和すぎる月日を重ねているからだ。

 悪人は、虹の魔法い1人に全てを押し付ける。家族から引き離すべく攫って、その時まで閉じ込めておくかもしれないし、家族を人質にとり、勤めを強要するかもしれない。

 だがしかし、それは本当に悪なのか。平和を取り戻すためにそれしか手段がないとして、それを強要するのは悪なのか。平和を取り戻した後に、その悪人達は自分達のしたことを必要悪として受け入れられるのか。

 死と引き換えの魔法があると言うことは、それだけ混乱を招くのだ。だから、秘すべきして秘されているのだろう。けれど、知る権利だってあるはずなのだ。自分の人生を、辿る道を知りたいと思うことは当然の事だ。命を落とすかもしれないと言うのなら、殊更。


「ねぇリア、虹の魔法使いは死と引き換えの魔法を使うかもしれないってずっと思ってきたわけでしょ?そして自分が虹の魔法使いである可能性も否定できなかったでしょ?まぁ、それは今も否定できないけど。でさ、死ぬかもしれないって思いながら、そんなに平静でいられるもの?」

「山での生活は死と隣り合わせのようなものでしたから」

「慣れちゃってるってこと?死ぬのって怖いでしょ?」

「…自分が虹の魔法使いだとしたら、いつ死ぬ事になるのかは知りたいと思います」

「…なんか……悟り開いちゃってる?」

「そういうわけでは…ないのですが…」

「あ、こいつ炎を吐くやつだ。もしかして噂のリアの剣でお返しできちゃうやつ?」

「そうですね。できます」

「じゃあちょっと見せてくれたら嬉しいなー。僕も追って魔法を打ち込むからさ。リアに全部やらせたと知られたら、ウィルとレイにお説教されちゃう」


 緊張感なく、ワクワクした様子のマルクランに、ルーナリアはくすくす笑みをこぼした。けれどお説教は免れたいのだろう。マルクランは詠唱を始めていた。

 ルーナリアは自身にかけられた防御魔法を確認し、魔石が光る剣を構えた。

 目の前には唸り声を上げる四足歩行の獣型の魔物。開けっ放しの口の中には、マルクランが予想した通りの炎がチラリと見えていた。


 事の始まりは5分前。

 今日はウィルフレドとレイアードが外に出ているということで、ルーナリアはマルクランと2人でお弁当を食べていた。気さくにポンポン話すマルクランと会話が弾み、いつもと変わらないお昼を過ごしていたが、お弁当を食べ終わったあたりで2人とも禍々しい空気を察知したのだ。

 とりあえず防御魔法を展開しようとなり、先程の軽口を叩きながら、合間合間でお互いに防御魔法をかけていたのだ。そして、図ったかのように目の前に現れた魔物への作戦を立てていた。

 魔物を前に軽口を叩く余裕があるのは、ルーナリアはもう魔物と対峙するのが3度目であり、マルクランはそのあっけらかんとした気性からであろう。


「いきます!」


 魔物が火を吹いてきたところでルーナリアが地面を蹴り、剣で炎を薙ぎ払った。


「おぉ。やるねぇ」


 念のためにと自分を囲っている防御結界の中で、マルクランは楽しそうにルーナリアの剣技を見た後、攻撃魔法の詠唱に入った。

 その間、ルーナリアは剣を振って魔物を翻弄していた。足に跳躍魔法をかけ、難なく炎を避けたと思えば、魔物の足を狙って剣を振り払う。魔物の動きが鈍ったところで少し距離を置くと、待っていましたとばかりに魔物は口から炎を吐き出した。ルーナリアはニヤリと口角を上げ、剣を構える。魔石が埋め込まれた剣を魔物に向け、足を踏み込んだ。ちらりとマルクランを見ると、すでに詠唱は終え、放つタイミングを見ていた。

 魔物が炎を吐き出したタイミングでルーナリアは剣を突き出して迫り来る炎を受け止め、剣が全てを纏ったのを確認し、軽く剣を回した後、勢いをつけて剣を横に振りぬいた。吐き出したはずの炎が戻ってきたことに驚く間も無く魔物は炎に包まれ、叫び声が響き渡る。

 ルーナリアが高く跳び、後ろに避けたところで次はマルクランの魔法が魔物を襲った。氷の刃が幾つも魔物に突き刺さり、絶命した。


「さすがマルクラン様です」

「リアの剣技もすごかったよ。さすがだね。あいつらが唸るだけのことはあるね」


 2人は魔物の絶命を確認しながら声を掛け合った。


「向こうにも魔物が現れたようですが…」


 裏庭とは対岸にある学園の入り口方向にも魔物の気配を感じていた。そして、そちらはそちらで誰かが対峙しているだろうことも。


「まぁ、教師が対応してるんじゃない?こっちに誰も来ないくらいだし」

「そう…ですね」

「前はウィルを狙った第三王子の仕業じゃないかと疑ったみたいだけど、この様子だと純粋に魔物の数が増えて、ランダムに襲撃を仕掛けているのかもしれないね」

「裏庭での遭遇率が高いのが気になりますが…」

「通り道ができちゃったのかもしれないね。それに今日はウィルもレイもいない。僕達を狙ったところで利益はさほどないと思うんだよねぇ」

「確かにそうですね」

「魔物の数が増えているとしたら、虹の魔法使いの出番も…そう遠くないのかもしれないね…」

「そう…ですね…」


 魔物を浄化しながらつぶやいたマルクランの言葉に、ルーナリアは俯いた。


「あ、あっちも決着ついたね。こっちにもそろそろ人が来るかな」

「…魔物はマルク様が全力で倒したことにしてもらえますか?」

「もちろん。リアはプルプル震えていたことにしておくよ」

「ふふ、ありがとうございます」






アクションシーンが苦手で申し訳ないです。


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