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隠された意図は

「第三王子殿下が虹の世代なんですから、王家が情報を持っていないわけがありません。王子殿下が虹の魔法使いである可能性があるんですから。違いますか?それとも、第二王子殿下であってもそのような情報は隠されていて知らないとか?」


 挑発するようなルーナリアの視線と言葉に、ウィルフレド達3人は疑惑より先に戸惑いを感じた。ルーナリアの表情は硬く、冷たく、今までの彼女とは全く違うものだった。その雰囲気に、ウィルフレドは顔を顰めた。


「俺の知っていることなんて、ほんの僅かだ。陛下はきっと知っていることがあると思う。弟がどこまで知っているかは把握していないが、そんなに重要なことは知らされていないだろう」

「それは、第三王子殿下の言動、様子から見て、ですか?」

「そうだな。あいつは虹のことよりも、王位継承権の方に意識がいっている。だから、俺を狙うんだろう」

「…第三王子殿下が、自分は虹の魔法使いではないと知っているとしたら?」

「何?」

「陛下が虹の魔法使いが誰なのかを知っていて、第三王子殿下はそうではないと教えているとしたら、どうですか?」

「…リア、君は何を知っている?」

「私は……、何も……」


 さっきまでの迫力はどこへといった風に、ルーナリアは口をつぐんだ。


「何も…知りません…」


 俯き、膝の上で拳をぎゅっと握った。


「リア、どうしてそんなに虹の魔法使いのことを知りたいんだ?」

「どうして?そんなの当然じゃないですか?私は当事者です。虹の世代に生まれ、この学園に囚われました。虹の魔法使いは自分かもしれない。そう思ったら、知りたいと思うのが普通じゃありませんか?」


 寧ろ、それを知りたいと思わない人達の頭の中が分からない。ルーナリアはそう続け、ウィルフレドを見る。怒っているようで悲しんでいるような瞳に、ウィルフレドは胸が跳ねるのを感じた。


「何故虹の魔法使いの情報がこんなに隠されているのか、考えたことはありませんか?国にとって、隠したいことがあるからだとは、思いませんか?」

「え…」

「百年に一度、虹の魔法使いが現れ、魔物を一層する。国民に与えられた情報はそれだけです。歴代の虹の魔法使いの名前すら知ることができないんです。もちろん、消息も。虹の魔法使いがどうやって選ばれるのかも、どうやって魔物を一掃するのかも知られていない。それが異常だと思うのは、おかしいことですか?」


 ルーナリアの言葉に、確かにそうだと思う反面、何故そう思うことがなかったのだろうと3人は思案した。誰が虹の魔法使いなのかと考えたことはあっても、それ以上疑問に思うようなことはなかったのだ。

 いつか虹の魔法使いが現れて、魔物を一掃してくれる。そうすれば国には安寧が訪れ、魔物に怯えることはなくなる。何の疑問もなく、ずっとそう思って生きてきた。ルーナリアに指摘されるまで。

 3人が答えを求めて戸惑いの表情でルーナリアを見ると、ゆっくりと口を開いた。


「私は山で育ったので、いろいろな情報に疎いんです。都で何が流行っているかなんて知ることはなかったし、どんな問題が起ころうと知るのは父が都に行って帰ってきてからでした。私に情報を与えてくれるのは、父でした。父を介さなければ、何も知ることができないようなものです。もちろん、それが不満だったわけではありません。私に都の情報は不要でしたし、山で生きるためのことだけ知ることができればそれで良かったので。だから、虹の魔法使いのことも、父から聞いただけです」


 ルーナリアが何を伝えようとしているのか読み取れず、3人は静かに話を聞き続けた。


「虹の魔法使いは偉大だ。虹の魔法使いに選ばれることは栄誉だ。虹の魔法使いは素晴らしい。魔物を一掃し、国に光をもたらす勇者だ。そんな風に虹の魔法使いを持て囃し、褒め称え、恐怖心は一切煽らない。とにかく虹の魔法使いは国に必要で、絶対に存在しなくてはならなくて、全てを救ってくれる。私は、そんな風な刷り込みは受けませんでした」

「刷り込み…?」

「言い換えましょうか?」

「何を…」

「洗脳は、されませんでした」

「!」


 洗脳という言葉に、3人は言葉もなく動揺した。

 一体何に洗脳されているというのか。皇帝陛下が国中の国民を洗脳しているとでもいうのか。その発言は間違いなく不敬であり、今ここで切り捨てられてもおかしくないことをルーナリアは言っている。

 けれど、それをしてはならないと、3人が3人とも思っていた。

 ルーナリアの言葉が、欠けていたところにしっくりと当てはまる。そして、切り口は強引だが、ルーナリアの発言は、自分達を信頼してのものだと思うからだ。そうでなければ、こんな過激な発言はできない。


「こんな言い方しかできなくて、すみません」


 自分を非難して来ない3人の態度に、ルーナリアも警戒を解いて眉を下げた。








もっと楽しいシーンにするはずが、シリアスになってしまったという…。なかなか暴走気味です。

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