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ルーナリアの疑問

 ルーナリアは、ずっと隠していた魔力を使った。あの巨大生物に襲われた時、咄嗟に使った攻撃魔法。あれは、間違いなく色々な者達に感知されただろう。それがルーナリアのものだと悟られたかどうかは分からないが、知られたことは間違いない。その後治癒魔法も使ったのだから。


「これからも隠し続けるつもりではあります。ですが、あの巨大生物が現れたように、これからも同じようなことがあるかもしれません。悟られるリスクは上がっているでしょう」

「あれは多分弟の仕業だ。僕達があそこに行くことを分かっていて魔石をあれに与えたのだろう。だが、確固たる証拠がない。…僕達と一緒にいることでリアのリスクが上がるというのなら…」

「いいえ」


 ウィルフレドの言葉を遮り、ルーナリアは首を横に振った。ウィルフレドが考えていることは分かっていた。自分達と共にいることでルーナリアが危険に晒されるなら、離れることも致し方ないと言いたかったのだろう。だが、今やルーナリアは惰性でウィルフレド達と一緒にいるわけではないのだ。


「私だって、皆さんと一緒にいたいと思ったから、こうして一緒にいるんです。あれくらいのことで離れる気はありません。……あれ……は、もう嫌ですけれど」


 話しながら、大嫌いな生き物を思い出して、渋い顔になった。目を閉じて頭を横に振る。嫌いなものは嫌いだ。あれはもう遭遇したくない。

 ウィルフレド達はルーナリアの思いがけない気持ちに驚いた。イヤイヤ一緒にいるわけではないと思っていたが、一緒にいたいと言ってもらえたことは、純粋に嬉しかったのだ。


「魔物が学園に現れるようになった。もう、それだけで、きっとダメだったんです」

「どういう意味だ?」

「これから魔物が出現する頻度は上がって行くと思います。攻撃魔法はどうしてもという時まで使いませんが、上級の補助魔法は使うことになるでしょう。そうなれば、隠すことの方が難しいです。殿下と一緒にいる時ならば私は殿下を守りますし、殿下がいなくても私は自分を守るために魔法を使います。どっちにしろ隠しきれません」


 リスクが上がるのはウィルフレド達と一緒にいるからではない。3人の顔を見回して、それが伝わっていることがわかり、ルーナリアはホッとした。


「リアに攻撃魔法を使わせないためにも、一緒にいた方が良さそうだ」

「守っていただくのは、気がひけるんですが」


 フォルマの前で守られるつもりはないと断言したが、一緒にいれば守られることになるだろうことは予想がついている。なるべくそうならないようにしようとは思っているが、気が引けてしまうのだ。ルーナリアは苦笑するのを止められなかった。


「それよりもリア、何故魔物の出現頻度が上がると思うんだ?何か知っていることがあるのか?」


 ルーナリアの言葉に引っかかりを覚えたレイアードが、食後のお茶を差し出しながら問いかけた。魔物については色々と調べてはいるが、そういった報告は上がってきていなかったからだ。


「……だって、虹の魔法使いが出現するのは、大体百年周期でしょう?増えた魔物に対応すべく虹の魔法使いが現れるというのなら、魔物は増えていくはず。王宮の次に守れられているはずの学園に魔物が現れ始めたのがいい証拠だと思うのです」

「…なるほど…」


 前回虹の魔法使いが現れてから、約百年が過ぎようとしている。そしてルーナリアの生まれた年に虹の魔法使いが生まれたというお告げがあった。虹の魔法使いが誰なのかは分かっていないが、その力を行使する日はそう遠くないのだろうとルーナリアは思っていた。

 納得している3人の顔を見て、ルーナリアはゴクリと唾を飲み込み、もう一度口を開いた。


「皆さんは、虹の魔法使いのことを、どこまでご存知なのですか?」

「ん?」

「え?」

「何?」


 なんのことか惚けた顔をしていた3人は、ルーナリアの真剣な表情を見て気持ちを切り替えた。


「リア、それはどういう意味?」


 ウィルフレドが表情の硬いルーナリアに声をかける。


「王家は、虹の魔法使いの情報を、どれだけ隠し持っているのかと、聞いています」


 視線をさらに強めたルーナリアに、ウィルフレドは警戒をした。こんなルーナリアを見るのは初めてだった。残りの2人も、ルーナリアの纏う雰囲気が変わったことに、息を飲んだ。


「もう一度聞くよリア。それは、どういう意味?」

「そのままの意味です。虹の魔法使いの情報は少なすぎます。調べても、当たり障りのないことしか分かりません。私たちは、虹の世代だけれど、誰が虹の魔法使いか分からない。いつ、どのタイミングで虹の魔法使いが明かされるのかも分からない。そして…、虹の魔法使いのその後の足取りも…分からない。当事者は私たちなのに、何も明かされないまま、学園という檻に閉じ込められているようなものです。知る権利くらいあってもいいと思いませんか?」

「…なるほど。そういう意味か」


 虹の魔法使いは百年に一度現れ、魔物を一掃する。それ以外の情報が、ほとんどないのだ。おとぎ話であったり、詩吟や劇はあっても、それは勇敢な魔法使いの物語であって、詳細ではない。虹の魔法使いがどのように生まれ、その力を発現させ、その後どうなっていったのかは分からないし、それを疑問に思う者もいない。まるで、洗脳されているようだと、ルーナリアは思っていた。

 虹の世代に生まれ、魔力を持つ者は全て学園に集められた。外出はできるが、その動向は管理されている。それを監視だと、軟禁のようなものだと感じていたのだ。


「殿下は、どこまでご存知なのですか?」





ようやく虹の話に届いた…

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