襲撃、その時
本日2話目の投稿です。
短めです。
こちらから来られた方は、前話をご覧ください。
ルーナリアの悲鳴が聞こえる少し前。ルーナリアとウィルフレドから少し離れたところで、レイアードとマルクランは昼食の準備をしていた。といっても、ほとんどはレイアードが行い、マルクランは茶々を入れていただけだったが。
「ウィルは好きな女の子に意地悪しちゃうタイプだったのかなー。ねぇレイ、どう思う?」
「さぁな。お前は少しは手伝え」
「僕が手を出さない方が早く終わるでしょ?」
「…確かにそうだ」
「ね」
湖から少し離れた草むらに敷物を敷き、お弁当やお茶を出しているレイアードに、そのすぐ側に立ったままでマルクランは清々しい笑顔を見せていた。
「それにしても、僕は今日全然リアと話していないなぁ」
「ウィルをからかうからだろ。お前こそ好きなやつに意地悪して喜ぶタイプか」
「気持ち悪いこと言わないでよ」
ぶるっと震える仕草を見せたマルクランに、レイアードはしてやったりな笑顔を見せる。マルクランがウィルフレドを好きなのは本当だが、正面切ってそれを認めるのは嫌らしい。
「気持ち悪いと言えば、ここまでの道、獣一匹出なかったよね。リアの剣さばきを見たいと思ってたのにさ」
「そう言えばそうだな。俺達の他にも演習に来た奴らがいたのか…」
「ここまで来る奴らがいると思う?庶民だってそんなに深く森に入ったりしないでしょ。ましてや今は魔物がいつ現れてもおかしくないんだし」
「そうだよな…」
貴族が森に足を踏み入れることはほとんどない。下級貴族ならばあるかもしれないが、深く足を踏み入れる者はそういない。貴族が魔法の鍛錬をする時は、大抵学園内の演習場を使う。その方が汚れず綺麗にできるからだ。
庶民は森を使うが、魔物と違って獣からは魔力の淀みを感じることがないから、慣れない者は急襲されると大怪我を負うことがある。小物ならどうにかなっても、大物だと致命的な事も起きうる。森の奥に進めば進むほど獣は大きくなると言われているから、庶民も深くは足を踏み入れないのだ。
学園内に魔物が現れたとなった今では、森に魔物が現れてもおかしくはないのだから、自分の力に自信がある者位しか森に入る事はないのだ。ここにいる四人以外。
「なんか、変な感じがする。なんだろう、この感覚」
「なんだそれは。この森にか?」
「さっきまではなんともなかったんだ。でも…」
マルクランはよく分からない違和感に首を捻って、探知の魔法を呟いた。しかし。
「きゃあぁぁっ」
「リア!?」
ルーナリアの悲鳴に二人は急いで視線を移す。そこには湖から這い出た何かに足を絡め取られているルーナリアの姿があった。




