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日常のあれこれ

 ウィルフレドと、たぶんレイアードともお友達になってしばらく、ルーナリアは前と変わらない平穏な生活を送っていた。

 変わったことは、昼休憩を一緒に過ごすことが増えたことと、昼休憩を一緒に過ごさなかった日は放課後に時間を作ること。

 学年の違うお友達なので、こうしないことには会うことすらできないのだ。別に毎日会う必要はないと思うのだが、毎回ウィルフレドに次の約束を告げられるので、言われるがまま付き合っている。

そしてそれは、毎回レイアードによって張られる三重の結界によって誰にも知られることなく、ルーナリアの周りも何も変わらずにいられた。

 ウィルフレドが何を考えているのかはよく分からなかったが、父親の昔話をできるのは楽しかった。自分の知らない父の話を聞くのは新鮮だった。


「フォルマはスパルタ中のスパルタだよ。笑って連なる雷を落としながら、打ち消してみろとか平気で言うんだ。当てないようにスレスレのところに落とされるんだけど、逃げてるこっちは分からないし、一度だけでも打ち消さないとやめてもらえない。しばらく雷はトラウマだったくらいだ」


 昨日ウィルフレドが教えてくれた父親の魔法教育は、父らしいと笑っていいものか、父に変わって謝るべきか本気で悩んだ。隣でレイアードも苦い顔をしていたから、彼もその経験があるんだろうと、申し訳ない気持ちにまでなった。

 かく言うルーナリアも、父親の攻撃魔法の恐ろしさを体験したことは何度もある。

 防御魔法も実践が必要だったのだ。どれだけのものを防げるか、父親の魔法で実践した。防げるとわかっていても、自分に向かって父親の攻撃魔法が飛んでくるのはなかなかの恐怖だったことを覚えている。

 それでも父親は娘可愛さにかなり威力を弱めてはいたらしい。父親とともに魔物に対峙した際、本気の魔法を見て感じたことだ。

 しかし、父親はウィルフレドを気に入っていたらしいし、ウィルフレドもレイアードもそこそこな魔力の高さだと分かっていただろうから、きっとルーナリアの時のように手加減はなかったのだろうと考えていた。御愁傷様ですとしか言えない。


「ウィルフレド様っ!」


 毎日会うようになっていた人の名前が聞こえ、ルーナリアは窓の外を見た。

 今は補助魔法の授業中。ルーナリアのいる教室からは外の演習場が見える。今は2学年上、ウィルフレドのクラスが実技演習中らしい。そして、ウィルフレドの魔法を見て、誰か女子生徒が黄色い声をあげたようだ。

本当に名前で呼ばれているのだな、と、廊下側の席でルーナリアはその事実を飲み込んだ。

周りをチラッと見ると、授業そっちのけで窓の外に意識が飛んでいる女子生徒が見えた。それも、クラスほとんど。このクラスの女子はルーナリア以外ほとんど貴族だから、仕方ないのだろう。向上心のある庶民ならば、視線を前に保っている…かもしれない。

 ちなみに、貴族の女子生徒はほとんど窓際の席に座っている。王子殿下や、身分の高い生徒だったり、見栄えのいい生徒を眺めるためだ。

 男子は己の学や技術を高めなければ、将来の職に響くかもしれないため、なかなか真面目に授業を受けている…らしい。


「レイアード様も素晴らしいわ」

「ウィルフレド様の炎だって負けてはおりませんわ」


 コソコソ話しているつもりが、興奮しているからか、窓際の声が廊下側のルーナリアまで聞こえてくる。教師がピクリと眉を動かしたが、聞こえないふりをして授業を続行した。 

 教師もほとんどが貴族とはいえ、そこまで身分の高い者は少ないから、余計な揉め事は控えたいのだろう。


 ルーナリアの席からは演習場にいる2人の姿までは見えないものの、やけに大きい竜巻が起きているのと、炎の柱が立っているのは確認できた。ウィルフレドとレイアードが対戦式の実戦でもしているのだろうか。

 実技演習中は念のためにと結界が張られているので、派手な攻撃魔法も演習場の外に影響を及ぼすことはない。だからなんの心配もなく、なかなかの強大な魔法でも警戒せずにその様子を見ていられる、らしい。


 しかし、皆様お忘れになってはいないと思いますが、そろそろあの方が限界のようですよ…とルーナリアは心の中でため息をつく。前の席なので後ろの様子は見えないが、前に立つ教師の顔色がどんどん悪くなっていくのは確認できた。チラチラと、背後を気にし始める男子生徒も出てきた。


 ガンッ!


 大きな咳払いとともに、何やら机か前の人の椅子を蹴り上げたような音が教室に響いた。教師はもう顔面蒼白である。

 窓の外を見ていた女子生徒たちも慌てて目線を前に戻す。若干顔色が悪い。


 貴族のくせにバカだなとルーナリアは思う。感情むき出しで怒りを表現する王族ももちろんバカだが。

 このクラスには、この学園にいる王族のうちのもう1人がいると言うのに。しかもすぐ激昂する、兄への嫉妬心むき出しな王子殿下が。それを知っていて、ウィルフレドにうつつを抜かすなど、愚の骨頂である。赤の王子殿下の不興を買えば、どんな末路になるかは想像にたやすいことであるというのに。


 もう1人の王子殿下はそれ以上何も言葉を発しなかったが、その授業時間中、教室はずっと冷気に包まれていた。







迷走しているかも…しれません…。


そして。子供が30分おきに泣くので全く進まない…

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