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ルーナリアの髪の色

「私の髪の色は見えましたか?」


 ルーナリアとウィルフレドは元の位置関係に戻り、向かい合っていた。ウィルフレドはルーナリアの機嫌を取ろうとしているのか、しきりにフルーツを進めていた。


「薄い…茶色で合っているか?」

「正解です。さすがですね。父の話で動揺したのは振りですか?」

「いや、フォルマの話は本当に心臓に悪い。動揺する前に、うっすらと見えただけだ」

「なるほど」


 動揺を隠すかのように、ウィルフレドはルーナリアにフルーツを差し出す。仕方ないので桃をひとかけら口に入れると、恐ろしいほど甘く、恐ろしいほどジューシーな桃が、口の中で溶けるように消えていった。


「フォルマと同じ髪の色だな」

「ふふ。髪の色は変えたくはなかったのですが、さすがに悪目立ちするからと説き伏せられまして。父が魔法をかけてくれるなら変えてもいいと言って、変えてもらいました。でも、以外と誰も疑問に思わないものですね。父と髪の色がこんなにも違くても」


 髪の色…すなわち、魔力量は親から子へ受け継がれる。大体は血筋によるものだから、親と子の髪色は近しいのが普通だ。


「父を知る人が少ないか、母よりの色だと思われているのか、どちらかは知りませんが」


 本来であれば、強い魔力を持つものの髪色が受け継がれる。だから、茶色から紺色が生まれることはそうそうない。

 薄い茶色は、かなり魔力が高いことを示す色だ。


「庶民は魔力の受け継ぎさえまともに出来ないと思われているんでしょうね。身分は人間の作りさえ変えると本気で思っていそうですし。…あぁ、お貴族様の前で失礼なことを言ってしまいましたね。すみません」

「いい。そう思わせるような事を貴族はしているし、僕はそれをどうにも出来ずに見ていただけだ。僕たちは君の言葉に腹を立ててはいないし、君が僕たちに謝る必要もない」

「…殿下はいい人ですね。レイアード様も。普通だったら怒りますよ」


 ルーナリアは眉を下げて少し笑った。


「リアは僕たちを試しているのかな?」

「先に私を試したのは殿下ですよ?」

「確かに」


 2人はふふっと笑いあった。


「庶民は疑り深いんです」

「なかなか危険なやりとりだったと思うけど」

「なんとなく殿下も…レイアード様も、大丈夫かなと思ったので。殿下は父のお気に入りみたいですしね」


 野生の勘も侮れないですよ。ルーナリアは笑ってそう続けた。

 先程までの緊張した空気は消え、穏やかな雰囲気が戻ってきていた。


「ところでリア、どうしてレイのことは名前で呼ぶのに、僕は呼んでくれないんだい」

「えぇー…、さすがに恐れ多いですし…。私は父とは違いますし…。いいじゃないですか、殿下って愛称みたいなものですよ」

「そんな愛称はいやだ」

「子供みたいなこと言わないでください」

「レイだけずるいじゃないか」

「心が狭いですよ」

「そんなことはない」

「レイアード様はお名前呼びで、殿下は愛称呼びですよ。それでいいじゃないですか」

「よくない」

「普段から呼んでいたら、有難みがなくなりますよ。たまに呼ぶからこそ、特別感があっていいんじゃないですか」

「丸め込もうとしている感じがすごくする」

「気のせい気のせい」

「腑に落ちん」


 ウィルフレドには申し訳ないが、庶民が王族の名を呼ぶのはやはり気がひけるのだ。ウィルフレドの拗ねたような顔を見てルーナリアは申し訳なくは思ったが、自分の心臓の方が大事なのだからやはり仕方がない。


「えーと、午後の授業があるので、私はそろそろ行きますね」


 気まずさもピークになったところで、ルーナリアは逃げる事を宣言して立ち上がった。


「何を言っているんだ、リア。午後の授業はないぞ?」

「え?」


 何を言っているんだ?という顔のウィルフレドに、同じく何を言っているんだ?という顔を返す。


「昨日の魔物の件で、午後から会議をすることになったから授業はないぞ。もちろん全員だ」

「なんと!」


 朝担任が言っていたのかもしれないが、ルーナリアは聞いていなかった。友人もいないから、情報の共有もできていなかった。昨日の魔物話題に自分の名前がないかどうか、そちらばかり気にしていたからそんな情報知る機会がなかったのだ。


「さてリア、午後の授業は無くなったわけだし、時間はたっぷりある」

「え?」

「この学園の先輩である僕たちが、攻撃魔法の補習をしてあげようではないか」

「えぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜」

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