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黒電話  作者: ツヨシ
5/5

「ただいま」


諏訪子がそう言ったが、返事はなかった。


「あれっ。あの人どこにいったのかしら? お母さん、知らない」


「知らないわよ」


「まあ、そんなに遠くへは行ってないよね」


諏訪子が部屋に戻ろうとして黒電話の前を通ると、黒電話が鳴った。


――えっ?


菊江がベルの音に気付き、やってきた。


顔がこわばっている。


諏訪子は菊江の顔を見た後、受話器に手をかけようとした。


「諏訪子! なにやってるの。危ないでしょ!」


諏訪子が笑い、言った。


「わかってるわよ。つながっているんでしょ。私が生まれる前に、山崩れにのまれて全滅した隣村に」


諏訪子は受話器に伸ばしていた手を引っ込めた。


そして辺りを見回した。


「それにしても、あの人いったいどこに行ったのかしらね」



         終

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