ケルニアの盗賊 A
ひとまず前編だけ投稿!!
なかなか連日で投稿できずすみません!!!!!!!!
「やっとケルニアの外壁が見えてきたな。」
森を抜け、草原に通りかかったところで、遠方に石造りの壁が見えてきた。
壁の高さはせいぜい3mほどだろうか。街道の終着点には門があり、そこで身分を確認するのだろう。
「やっと凱旋といったところだな。しかし、いやに堅固な街だな。どこの街もこんな感じなのか。」
「いや、ここは石龍の外縁に位置するからとりわけ防御を固めているのだろう。壁の上を見てみろ。砲台がいくつか配備されているのがわかるだろう。
それにだな。まだ凱旋ではないのだよ。ここは二重帝国領。我がミリアまでは残り5日ほどだ。」
「え?そうなの。俺はてっきり領内の魔物駆除のために行ったものだとばかり思っていたんだが。」
「まあ、政治的駆け引きがあったということだな。ジル・アチュレ二重帝国はこの大陸を二分する超大国の一角。今回はその号令の下に衛生国家が動員されたというところだ。」
まるで冷戦期の米露みたいだな。二重帝国っていうのもオーストリア・ハンガリー帝国を彷彿させるし、どの世界でも歴史は繰り返すものか。まあ異世界だから繰り返してはいないんだがな。
「我々はケルニアで後方支援隊と合流し、ミリアへと向かう。負傷兵もいるから2日ほど滞在する形になるだろう。その間、君には医者による治療を受けてもらいながら、私自らこの世界の常識を叩き込むとしようではないか。」
アレルナは屈託のない笑顔で答える。この提案はまさに天恵なのだが・・・・
「何から何までありがたいんですけど、なんでそこまでいろいろ配慮してくれるんですか。
師団の状況を見るに、俺の方まで気を遣うべきでもないような気がするんですけど。」
「本来我々が倒すべきドラゴンをしかも2体退治した英雄に、『はいじゃあ解散』では、ミリア騎士の名折れではないか。君はなにも不安になる必要はない。ミリアでも私が君の面倒を見ようではないか。」
そう言ったアレルナの顔に嘘をついている素振りはなかった。
まあ俺の直感だ。
そうこうしているうちに門へとたどり着く。
門は閉ざされており、その前に筋肉粒々の守衛が二人いた。
守衛がこちらに気づくと話しかけてくる。
「おお!これは2日前に出立されたミリア師団ではありませんか。ご無事でなによりです。」
「まあ無事といえる状況ではないがな。その様子だと、他の国の軍勢は既に街の中にいるのだろう。」
「はい。ガレリア、キシなどの師団はすでに街に帰還しています。ミリア勢が帰還するまではこの街に留まるという話は聞いておりますが。
ちなみに師団長殿はいかがなさいましたか。お姿が見えないのですが。」
「師団長はドラゴンに食い殺されたよ。」
「それは・・・なんといっていいか。ご冥福を祈ります。」
場の空気が重くなる。
俺と会ったときも副師団長からしか挨拶がなかったからおかしいとは思っていたが、戦死していたとは。
この世界でのダンジョンというのはゲームみたいにイージーじゃないらしい。
「なーに。彼女も石龍制圧戦で討ち死にしたのだから、ある意味本望さ。
このあとの戦後会議には私が出るつもりだから気にするな。」
「さすが、ミリアの副師団長、気丈であられる。では、門を開けさせていただきます。
会議は明日の朝とのことですので、お忘れなきよう。負傷者は病院に連れて行ってもらえればと思います。」
そういうと、守衛は門の横に設けられた守衛室らしき部屋に戻ると、門が外側に開きだす。
「さあ、まずは負傷兵を病院に運ぶぞ。」
アレルナは気丈にそう指示するのであった。