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龍が来りて炎を吐く

イーガルの声に皆が立ち上がる。


「まだ視認できる距離ではないが、こちらに向かってきているのは間違いない!!


 どうする副師団長?」


先ほどまで寝ていたはずなのに、そのことを感じさせない声でアレルナが指示を送る。


「皆行軍を再度開始する。速度は最大だ。」


アレルナの声が響き渡る。そんな大きな声で言ったらドラゴンに気づかれるんじゃねと思ったが、素人は口を出さないにつきる。餅屋は餅屋だ。




俺も行軍に遅れないようにしないとなと、先ほどまでいじっていた銃を腰のポケットに入れて立ち上がる。


するとアレルナが俺に渋い顔を向けているのに気が付いた。俺なんかしたっけ?


「君は我らと違う行動をとったほうがいいだろう。我々は負傷兵を見捨てることができないため、行軍のスピードは牛歩並みだ。それに魔物は一人よりも多数の人間を襲いたがるだろう。

 君をそんな死地へと向かう行軍に参加させるわけにはいかない。」


「え?え?ちょっと待ってくださいよ。おれこのあたりの土地勘とかないですよ。急にそんなこと言われても・・」


「大丈夫だ。近くの街まではこの道をひたすら進めば着く。君は道から少し外れた森の中で身をひそめておけばよい。我々はこのまま行軍を開始し、ドラゴンの囮となろう。

 騎士として最後まで民のためになりたいのだよ。」




このやろう!かっこいいこと言うじゃねえか!!

それに牛歩とかした行軍と道連れするなんて自殺しにいくようなもんだ。

ここはアレルナの騎士の矜持に乗じさせてもらおう。



なんかこれだけきくと俺悪者みたいだな。



「わかった。本当に恩に着る。無事生き延びることができたら第二師団の勇名を喧伝させてもらうぜ。」


「ふふっ。無事戻れたら私も英雄の一人になれるやもな。それではまた会おう。記憶を無くし男よ!」




そう言うやアレルナ率いる第二師団は行軍を開始する。

牛歩ではあるが、確実に進むその姿を後にしながら、俺も森の中をかきわける。


道上にいて、負傷兵もいて、人数もいる第二師団よりも、木々に覆われた場所に潜伏する俺をドラゴンが狙うとは思えないが、念には念を入れてなるべく見つからなさそうな場所を探す。





そうこうしているうちにひときわ大きな木が見えた。


あそこの裏に隠れていればドラゴンにも気づかれないだろう。

俺は巨木の裏に回ると、巨木を背にして座り、日が昇るまでここで待つこととした。










どのくらい時間がたっただろうか。いまだ暗いことから朝になるにはまだまだなのだろう。

命綱として銃を離さずに持っているが、非情に心もとない。



この銃が本当に現役なのかも確証がないし、そもそも銃なんて打ったことない。

何度か試し打ちでもしようと思ったが、銃声でドラゴンにこちらの居場所を知られるのが怖いからそれもできない状態だ。


「異世界転移だったらそろそろ俺のチート能力とかチート仲間が出てきてもいいはずなのにな。」



善意とはいえ第一異世界人のアレルナ一行とは離れてしまった。

正直、森の中で独りドラゴンにおびえるのはかなり辛い。





グォォォォン



ん?なんだ今の鳴き声は??


声の聞こえた方、上空を仰ぎ見る。



先ほどまで何もなかった夜空に影が2つ。



それは巨木のはるか上空を飛び回っていたが、動きを止めて、口らしき部分を光らせている。






やばいやばいやばい。多分ビームとかレーザーとかそんなんの準備だ!なんとかなくそんな気がする。

急いで逃げないと!!






俺は飛び跳ねるように巨木から距離をとる。



その瞬間。




ズドーン




俺は衝撃波のせいで2mほど吹っ飛ばされる。



痛えええええ。ちょっと頭を打ったみたいだ。痛みの個所に手を触れて血が出ていないか確認。

ただの打ち身のようだ。



けがの程度を確認したところで、巨木の方に顔を向けることができた。





巨木は火に包まれ真っ二つに割れていた。





そして明かりに照らされる、2匹の龍。




龍は第二師団よりも俺を選んだのである。



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