思いは言葉に、言葉は現実に
一人でも読者がいるというのはほんとうにうれしいことだ。
現在、夜営中である
野営といっても、テントがあるわけでもない。ほんとに野営なのだ。見張り番を立てて、他の者は木にもたれかかったりなんかしている。
ちなみに夜営と野営をかけたわけではない。特に面白くもないし。
アレルナ率いる第2師団は14名。手負いの者がいることから、行軍を中止して休むことも必然と多くなる。
アレルナの話だと、2日程度で近くの街まで辿り着くとのことであったが、実際のところどうなのだろうか。この行軍スピードを考慮しての計算であればよいのだが。
そうこう考えながらパンを口に運ぶ。最初の装備品の中にあったパンだ。食べれるのか不安だったが仕方ない。このパンが無くなればアレルナたちに頼ることになるだろうが、自分で食料を持っている状態で食料を求めるのは、なんていうかプライドが許さない。
「しかし、異世界転移というのも難儀なもんだな。」
つい愚痴が零れる。俺はてっきり天使なる者が出てきて、
「あなたには異世界に行ってもらって魔王を倒してもらいたいのです。
魔王軍は強力ですから神の御加護を授けたいと思います。もちろんチート能力です。ついでに道案内役として美女とハーレム状態になることも約束します。」
ってな感じでベリーイージーモードが約束されたものだと思われたのだが、その神様も天使も出てくる気配はない。
となると、どうにか自分の力でこの世界で生き延びる、いや、せっかくだから活躍する道を探さないといけないな。
第8志望ぐらいの会社に入って、社会に役立っている実感もない仕事を毎日過ごしていた自分としては、せっかくの転移チャンスを棒に振るわけにはいかないのだ。
そう考えると、どうにか街に着いた後もアレルナたちの庇護下にありつきながら情報収集できるのが一番なんだけどな。
ちらとアレルナのほうを見る。
最初は軽口をたたきながら俺に色々教えてくれたアレルナも今は木にもたれかかって静かな寝息を立てている。副師団長が率いているということは師団長は死んだのだろうか。そもそもかなりの人員を割いた作戦だったらしいのに、撤退先が近くの街ということは軍が三々五々で撤退しているということだろう。
あまり作戦のこととか被害状況については触れちゃいけない気がして詳細を聞いていないが、凄惨な状況に違いない。
俺は腰に差していた銃に触れる。
現状、自分の命はこれにかかっているとも過言ではない。
アレルナがこれにびっくりしなかったということはこの世界では銃は珍しいものではないのだろう。
当然銃の使い方など知らないが、もしものときはこいつでドラゴンとやらを打ってみよう。もしかしたら銃術の才を神様が恵んでいたりするパターンかもしれないし、あわよくばドラゴンを討ったヒーローとしてもてはやされるかもしれいないし。
「早くドラゴンの1匹でも2匹でも襲ってこないかな」
このとき俺はまだこれはよくある異世界転移で、何事もゲームのような設定で動いていると勘違いしていたのだ。困難が来ても誰も命を失うことをなく、ハッピーエンドとなるものだと。
自分がヒーローになる願望に愉悦を感じていると、見張り番のイーガルががなり声をあげる。
「大変だ!!魔素感知あり!!!この魔素量からしてドラゴン2体。こちらに進行中!!!」