ケルニアの盗賊 C
なんか1話ごとが短い気がするな。けれど、区切りがいいんだよなー
俺は診断を一通り受けた後、「問題なし」と言われ、病院を後にした。
日も暮れてきたことからまっすぐ帰ろうかなと思う。
帰る先はミロス王国第2師団の駐屯地だ。まあ宿屋らしいんだが。第2師団の負傷兵たちは今回の連合軍で負傷した者をいっきにあずかる戦時病院で治療を受けているらしい。
まあ俺は正式な軍人ではないから町医者を紹介されたわけだ。
宿屋につくと、おおらかそうなおばさんが出迎えてくれた。
「ご予約のお客さんですか?」
「いえ第2師団の関係者でして・・・。」
「そうでしたか!副師団長様が第2師団当てに尋ねてくる黒髪の青年が来れば、自室に通せと仰ってましたので、御案内いたしますね。」
そう言うとおばさんは2階の突き当りの部屋まで案内してくれる。
「副師団長様、お客様を連れてきました。」
「どうぞ、入りたまえ。」
俺は一応サラリーマン流礼儀であるノックをして、部屋に入る。アレルナは窓際の椅子に座っていた。彼女の前にある机があり、椅子に座るよう促された。
「どうだった?病院の方は。まあ私の見立てでは何ともならずだな。」
俺は診察の内容を説明した。といっても、彼女の見立て通りではあるんだがな。
「やはり・・そうか。毒竜の毒気は現状の医療技術では治療不可能と言われていてな。
心中察するが、安心しろ。ドラゴンを倒した貴殿は当分当家で面倒を見てやつつもりだ。」
「本当にありがとうございます」
「今日はもう寝たまえ。君の部屋は手配している。105号室だ。」
「その前に一つだけ質問いいですか。いや、質問はいっぱいあるんですが。」
「答えたいのはやまやまだが、私がこれから会議だ。今回の石龍制圧戦で得た情報と被害の総決算をしなくてはならないからね。だからまた明日としようではないか。」
「わかりました。ではおやすみなさい。副師団長様。」
「職名プラス様付けはよしてくれ。君は師団配属でもないし、国籍も不明だ。アレルナでいいよ。」
「ではアレルナ。おやすみ。」
俺は部屋を後にし、105号室に向かった。
血とか泥は病院で拭いてもらったから清潔であるし、第一疲れたからすぐ寝よう。
樵のような服を脱ぎ捨て、下着だけになる。
転移した際に装備していた銃とかはサイドテーブルの上に置いとこう。
「明日はアレルナに質問責めをしないとだめだな。てかその前に自己紹介だ。名前も教えていないし。」
記憶喪失という体だから、紹介といっても名前ぐらいにしていおいたほうが無難だろう。
あとは明日質問したい事項を頭の中で整理する。正直膨大だ。
だって俺が予想していた異世界とかけ離れている点が多い気がする。
「まあその辺は明日解決するだろう。」
俺はこの世界のことが少しでも理解できることを祈り、寝ることにした。
このとき俺はまだ危機回避意識が低かったみたいだ。
まだ心のどこかで所詮これはいわゆる異世界転移で、ご都合主義だと楽観視していたのかもしれない。
翌朝、サイドテーブルの上には何も乗っかっていなかった。