表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染達と行く異世界生活  作者: 篠宮ソラ
異世界転生編
1/44

プロローグ

皆さんどうもお久しぶりです!


息抜きに書き始めたつもりが意外と筆が乗ってしまい、気づけば一章を書き終えていました。


どうか皆さん、お楽しみください。

季節は夏。ジリジリと焼け付くような日差しの中でガードレールに寄りかかるのは2人の男。


「そういや、もうすぐ夏休みだな。剛はなんか予定あんの?」


「いや特にない。」


雲ひとつない晴天を見上げるのは2人の男。


方や耳にピアスを開けて髪を茶髪に染めた軟派そうな男ともう1人は黒色の髪にきっちり前を閉めた制服を着ながら携帯をいじる男であった。


「ははっ、どうせそんなこと言って夏休みに入ったら女と遊びに行くんだろ?死ねよ。」


「その言葉はそっくり返してやる。」


憎まれ口を叩きながらも携帯をいじる手を辞めないのが気になるチャラ男。こんな姿をしているが童貞である。もう一度言おう、童貞である。


「てかさ、さっきから何をカチャカチャやってんの?女?」


「なんでお前の頭にはそれしかないんだ。道場の子供達への通達だ。」


「ああ……なるほど。てっきり女にあいつの誕生日プレゼントの相談かと。」


「……お前は決めたのか?」


「とっくに決まっとるわ、ボケナス」


一通り決まったのか携帯を閉じてガードレールに寄りかかる男、力。チャラ男もとい友哉はまた炎天下の中で揺らぐ陽炎の向こう側を眺める。


「なあ……まだあいつら来ねえの?もう近くの喫茶店で待ってようぜ。」


「駄目だ。待ち合わせ時間に間に合わなかっただけでこの場から離れるのはどうかと思う。」


「糞真面目か。」


「常識だろ。」


既に炎天下の外の世界で佇んでいるのが辛くなってきた友哉。隣の力も同じくらい暑い筈なのに我慢しているところに一抹の尊敬を覚えなくはない。


「つーか、外に出たがらない正義はともかく(キム)が俺たちについて来たことが意外だわ。あいつも中々インドア派だろ。」


「……嗚呼済まん、聞いてなかった。」


「意識手放しかけてるじゃねえか。」


既にシャツに汗が滲み始め、暑さに我慢できなくなった友哉が自販機に飲み物を買いに行こうとした時にようやく待ち人が訪れた。


「お待たせしました!」


「遅えわ!一体いつ迄待たせんだよ!時間通りに集合しろよ!」


「流石に今回は擁護出来ないぞ。一体何があったんだ?」


「………特に何もないですよ。」


「ええそうよ!私たちは別に寄り道なんてしてないわ!」


「証拠のクリームが口にべったりついてるぞ。」


人間悪いことは出来ないらしい。はっとした表情で口元を拭うちっこいハーフの少女、金は証拠隠滅とばかりにない胸をはってドヤ顔をする。


「違います!聞いて下さい。私は悪くないですよ。むしろ悪いのは金だから。」


「ちょっと私を売るってどういうこと!?愛紗だって一緒に寄り道したじゃない!」


「私は貴方が人気アイスクリームを食べ終わるのを待っていただけですし?それ以上でもそれ以下でもないですし?」


「むきー!!この裏切り者ー!」


腕をぐるぐる回しながら金は背が高く美乳美脚の持ち主の愛紗へと突撃する。


「悲しいかな。成長の差が嫌でも分かる戦いって。」


「後で殺されるぞ、友哉。」


「てか、早く行こうぜ。今2時過ぎだからプレゼント買って夕飯の支度と準備したら、今から行かねえと間に合わねえぞ。」


2人の喧嘩の間に入って仲裁する。ちなみに友哉の言葉をを聞いていた2人から何発か食らったが彼は気にしない事にした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「お前らぁ今日の夜道には気をつけろよ。後ろから刺されるかも知れねぇぞ?」


「明日の新聞にホストかぶれの間抜けな顔が載るのか……」


「ええ、通り魔をしようとしたらか弱い女の子にあしらわれて御用という阿保みたいな記事ですか……」


「友哉ってダサいのね!」


「お前らはなんか俺に恨みでもあんの!?俺が一体何をしたぁ!?」


ギャーギャー騒ぎながらも彼らは下らない話をしながらも商店街へと向かって行く。


「今日のご飯は何するの?私はオムライスがいい!」


「今日は焼肉だ。未来の好きなもんを食わせなくてどうすんだよ。」


「え?何で?」


すっとぼけたようにアホな表情を浮かべるカレンに頭を抱える友哉と剛と愛紗。


「今日はあいつの誕生日だろうが!?忘れたのか!?」


「そこらへん、気が利かないからアホの子としてマスコットキャラの位置に定着してるんだよ。お前は。」


「……女子のみんなはだから友達が出来ないって言ってますよ。」


「……それ初耳なんだけど。」


「……ついでに言うと最近幼稚園児じゃないって言われてるよ。」


「もう辞めて!?カレンのライフはもうゼロよ!?」


「ほら無駄口は終了だ。ーー行くぞ、ここからは戦場だ。」


その言葉に気を引き締める彼等。靴紐を結び直し、覚悟を決めて、一歩を踏み出す。


「ーーさあ行こうか、同志達。」






「お一人様野菜の盛り合わせ150円でございます!無くなり次第終了致しますので皆様お早めに!」


「こちらで牛肉150グラムが180円でございます!これだけ寝下げるのはうちだけですよ!この機会をお見逃しなく!」


「よし!?野菜は俺がいく!剛は牛肉だ!頼むぞ!」


「皆様甘いスイーツでございます!数が限られていますので無くなり次第終了です!」


「何だと!?愛紗頼んだ!?」


「無理、手が足りない。」


「ならどうする友哉!私が行くか!?」


「馬鹿言え!今この集団から抜けて仕舞えば俺たちは2度とここには戻っては来れない。


「……なら俺が行く。」


「馬鹿野郎!?死ぬ気か!?あの集団を前にしてお前が生きて帰れる保証なんてーー」


「だからこそだ。ーー誰かが犠牲にならなきゃいけないだろ?」


「……分かった任せる。」


「友哉!?正気か!?お前はみすみす死にに行くやつを見過ごせと言うのか!?」


「馬鹿野郎!!俺だって……俺だって辛いに決まってんだろ!」


「心配するなって、必ず生きて帰って来る。約束するよ。」


力は彼らとは逆方向へと走り出す。前にはたくさんのおばさん達。後ろにはもう人垣ができ始めた以上引き返せない。


「なら進むしかねえよなぁぁぁ!!!」


そして彼は闘いの舞台への一歩を踏み出したーー


「邪魔よ!」


「いやぁぁぁぁ助けてぇぇぇ!!!!」


先ほどまでのかっこよさはどこへやら、見るも無残に特売品を求める主婦たちの波に飲まれて彼は消えていく……


「……よし、次は飲み物の所に行くぞ。」


「……そうですね。」


「タレも買わないと」


彼らは見なかったことにした。




「……酷い目にあった。」


「お疲れ。後は帰って作るだけだな。」


レジを通って待っていた3人に合流する。あの波は危険だ。命に関わる。


とんだ茶番劇ではあったが割と時間も潰せたし、いい具合にお腹も空いてきた。後はみんなで馬鹿騒ぎするだけだな。


「酒はどうする?買って行きます?」


「いや辞めとこうぜ?未来がうるさいだろうし。」


「だな、炭酸の飲み物は買い込んだから問題はないはずだ。」


「普通のお茶もあるしね!。」


迫る夕日の中で歩く4人組。毎日何も変わらない穏やかな日常。こうやって歩きながら今日あったくだらないことを話したり、夕飯の献立を聞いたりしながらいつもの道を帰って行く。


「そうえば未来は今日なんで遅くなるんだ?なにか知ってるか?」


「今日高校のクラスで遊びに行くから遅くなるって言ってだぞ?聞いてないのか?」


「私も朝、ラインで知りました。剛も聞いてましたよね。」


「私はさっき知ったわ!ぷぷー、友哉だけはぶられてるわね!」


どうやら俺以外の全員は未来が遅くなる理由を知っていたらしい。解せぬ。


「やったね、みんな。金は飯いらないってよ。」


「「わーい」」


「扱いの差!?」


調子に乗るのが悪い。反省しろ。とりあえず恨みがましくこちらを見る金を華麗にスルーしてようやく帰り着く。




俺達6人の家へ。




「「「「ただいま」」」」


「よっ!おかえりお前ら!。お勤めご苦労様です!ささ、荷物をお持ちいたしますよ?」


入り口で俺達を出迎えたのは多少ぽっちゃりとして眼鏡をかけた男。彼は正義。学校に行かずに家事をしてくれる俺らの友達だ。


「まーた変な口調しやがって、今度は何に影響されたんだよ?」


「いや〜最近軍系のものに嵌っててね。司令官と兵士みたいな関係に憧れを覚えたわけだよ。どうだい?金も結構好きだよね?こういうの。」


「好きじゃないわよ!!だいすきなだけ!」


「なら後で貸してあげるよ。読み終わったら部屋に投げ込んでくれればいいからさ。」


荷物を持って廊下の先に消えて行く彼を跡目に各自の部屋へと荷物を置きに行く。


ここのマンション父と母が貿易商だった金の所有物であり、今現在の管理人は金である。


ちゃんと男子、女子とで別れているので集合時間を決めてから別れた。


「さてとメインは焼肉で野菜の下ごしらえと……後はプレゼントか。」


集合時間は夜の7時。今は5時過ぎだからまだ余裕はあるな。今のうちにプレゼント取りに行くか。ーー未来の誕生日プレゼントを。


そう決めた俺は財布と携帯だけをポッケに滑らせて部屋から出て行く。軋む床を踏みしめながら廊下を歩いて行くと曲がり角の先にはよく見知った少女が首を傾げていた。


「今からどこ行くんですか?」


「なんだ愛紗か。今からプレゼントを取りに行ってくる。アホのカレンがつまみ食いしねえかどうか見張っといてくれ。」


「流石の彼女も生の食材をつまみ食いしないとは思うけど……一応了承しときますよ。貸し一つですからね。」


いつもと変わらないポーカーフェイスで了承を得た彼女の横を過ぎ去り、玄関へと向かう。


「場所はここから徒歩10分くらいだったよな。早めに戻ってこねぇと他の奴らが何をやらかすか、気が気でならねぇ。」


そう1人愚痴ると靴を履いてプレゼントを取りに行くのだった。




「友哉から伝言。金がつまみ食いするようなら半殺しだって。」


「「分かった」」


「なんでつまみ食いごときで殺されなきゃいけないのよ!?」


友哉が出て行った後、私達は金の部屋に集まっていた。彼女はニマニマしてるし、剛は「また碌でもないこと考えてるな」っていう目で見てるし、正義も同じ。こういう私もくだらないことを思いついたなって目で見てる。


「というか何で俺達を呼んだ?大方、誕生日のお祝い買ってないから見せろとかだろ?」


「なんで、毎回毎回、私がそんなことやると思ってるのよ!?」


「日頃の行い。」


「……失礼ね!!けど今回は違うわ!いいじゃない!話を聞くくらい!」


「分かったよ、話がくだらなかったら半殺し。面白くても半殺しでいいかい、みんな?」


「異議なし」

「同じく」


何よ、みんなしてと若干涙目になりながらも語り始める、金。意外とメンタル強いよね。


「ふん!貴方達を呼んだ理由は友哉と真実をくっ付けるためよ!!!!!」


エコーが響く中で帰ろうとしていた私達の足を止める。勝機とでも思ったのか、目を輝かせながら次から次へと言葉を並べる。


「ふふん!皆んな分かってなかったでしょ!?あいつら2人が両片思いのことに!ちなみに私は期末テストの間に気が付いた!」


「テストに集中しなさいよ。」


「それに遅すぎる。俺と愛紗はとっくに気づいてた。」


「僕はけっこう2人の距離が近いからそうなんじゃないかなぁとは思ってた。」


「なんでそんな冷めた目で私を見るのよ!?……話を戻すけどもどかしくないの!?無自覚にいちゃついてるくせにお互いがお互いを嫌っているみたいな関係に見せてることに!だからこそ!いつも私達の為に動いてくれるあいつに恩返しをする時なんじゃないのかぁぁ!!!」


立ち上がって熱く語ったその提案を2人は真面目に聞いていた。いつもの哀れみの表情は何処へやら、信頼を湛えた表情で金に頷く。


「その提案、乗った。俺もあいつらの関係性にイラつきを覚えていたところだ。」


「僕も乗るよ。彼らは結ばれてハッピー。僕達もハッピーのwin-winだからね。」


残るは後1人とばかりにこちらに向き直る仲間達。まぁ私も反対する理由はないし、それに、


「ああいう感じの愛は綺麗だから応援したくなるよね。」


「……参加するってことでいいんだな?」


「むしろ、私を省いたらただじゃおかなかったよ。」


人の恋路を見守ることはみんなを暖かな気持ちにすると私は思う。それが大事な家族のような存在なら尚更だ。


「よし!作戦はこうよ!真実が帰ってくる時を見計らって私達は何やかんやで理由をつけて部屋から退出する。未来には友哉が話があるとでも行っておけばいいでしょ!」


「しかし、友哉は意外とヘタレだからな。そこんところはどうする?」


「え?でもさっき友哉がプレゼントを貰いに行くって言ってたけどあれって恋人御用達のお店だった気がする。」


ばっ!と振り向く彼らはよりニマニマしながらも細かい部分を詰めて行く。結果、友哉が告白しなかったら私達が周りから囃し立てることになった。


……それって彼らの恋路を邪魔してるような……


「よし!それじゃ解散する前にプレゼント見せてよ!私まだ買ってない!」


オチもついたところで私達は各々部屋に戻るのだった。





「意外と入り組んでんなここら辺。今時路地裏なんてあんのな。」


着々と本人の知らぬ間に進められていた告白作戦とほぼ同時刻。友哉は複雑な道を歩いていた。


徒歩10分とは書かれていたが間違いなくそれ以上はかかっている気がする。そんなことを思いつつ、歩みを進めるとひらけた場所に出た。


「何つーか幻想的だな」


少し古びた建物にわずかな夕日の光が差し込む。そばには立派な木が植えられていて、いつの間にか別世界に迷い込んだようで景色の美しさにやや呆然としながらも彼は店へと入っていく。


「いらっしゃい。お客さんは何をご所望かしら?」


店に入ると出てきたのは妙齢の女性。白の髪に翠の瞳という日本では見ない色にまるで造られたかのように均等に整った顔立ち。服はかなり露出が抑えられており、そこから彼女の清楚さが滲み出ていた。


「あ?ああ、すいません。ここはこのお店で合ってますか?」


「……嗚呼、お客さん道を間違えてますよ?ここの前の道を右に曲がらないとたどり着かないんですよ。」


「はぁ!?マジか!?くっそ!時間の無駄じゃねぇか!……嗚呼すいません。教えてくれてありがとうございました。それでは俺はここら辺で失礼します。」


指摘に気づき、間違いだと理解した彼はすぐに踵を返して店から出て行こうとする。だが彼女は友哉の腕を掴み、後ろに引っ張った。


「まあまあお客さん、ここで会ったのも何かの縁。どうです?何か買っていきませんか?」


「いや、結構です。」


即答。一寸の迷いもなく言い切り、掴まれた腕を物ともせずに店から出ようとする友哉に泣きつく店主。


「お願いです!何か……何か買って下さい!このままだと経営が苦しいんですよ!ここの品物は身につけるだけであら、不思議な効果が得られますからぁ!」


腰に抱きつき、足に足を絡めてみっともなくすがる女性。対して友哉は金が無いために(真実の誕生日費用として鐘恋に有り金全て徴収されたため)何としてでも店から出ようとする。


しかし、そんな問答を繰り返した結果、先に友哉の方が折れたのだった。


「さあ!お好きなのをお選びください!?私のお勧めはこれ!アクセサリー詰め合わせ!6つあってお値段は1000円!どうなさいます?お客さん?」


「……じゃあそれで。」


「毎度あり!!」


せっせと包んでいく彼女の横目で夏休みバイトするかぁと虚ろな目をしてつぶやきながら財布からなけなしの1000円を取り出す。


包装が終わり、差し出された品物を受け取って1000円を差し出す。


「……お客さん、お札から手を離してはくれませんか?」


しかし、本心ではまだ納得がいかないようで粘る友哉に対抗する店主。接戦の末に店主の足ちら攻撃に動揺して離してしまった友哉の負けとなった。


「ったく、いい性根してるぜあんた。それでこのアクセサリーに何の効能があんの?」


疲れたような表情を出す彼に対して満面の笑みを浮かべる彼女は年甲斐もなく人差し指を口に持っていき、ウィンクをしてこう言った。


「ひ・み・つ ♪」


「舐めてんのか?」


人を射殺すような視線をくぐり抜け、朗らかに笑う彼女にすっかり毒気が抜かれた友哉はさっさと店から出ていく。


言われた通りに戻ってきた彼は右に曲がってお目当ての店に向かうのだった。




「私は祈ります。ーー貴方達に幸せが訪れるように。」




後ろを振り向かなかったのは彼にとって幸か不幸か。店があるはずの道はただの行き止まりがあるだけでどこにも道はなかったことに彼は最後まで気が付かなかった。



「ようやく買えた。ったく意外と時間食っちまったな。真実も帰りついてるかもしれねぇ。急ぐか。」


俺はプレゼントを脇に抱えて走りだした。ようやくたどり着いたお店ではかなりスムーズに渡されたおかげでまだ時間に余裕があるとは思う。……けどなんか嫌な予感がする。なんか剛らへんが碌でも無いことを考えているに違いない。よし、帰ったらしばこう。


ほぼ全力疾走の勢いで玄関を開けて転がり込むように入った俺はキッチンへと向かう。時間はちょうど7時を回ったところだ。あかりが漏れる扉を開けるとーー





「遅かったな?道にでも迷ったか?」


「大体下ごしらえは済ませたわ!後は食べるだけよ!」


「パーティグッズももらってきたよー。」


「というわけでほとんど準備は終わってる。そんなに焦らなくても良かったぞ?」


「嗚呼……ありがとな。」


そこには派手に飾り付けられた真実、誕生日おめでとうという看板に準備されたホットプレートや野菜。終いには小さな山のようになっているパーティグッズが置かれているのを見て笑う。


こいつら気合い入れすぎじゃねぇか。立案したのは俺なのにな。


「おい!今の写真撮ったか!?滅多にないあいつの笑顔だぞ!?」


「勿論さ!ちゃんと撮ってパソコンに送ったよ!後で処理した後に真実ちゃんにも送ってあげよう!」


「くっ、不覚!私の乙女心がキュッってなった。」


「今のは卑怯だろ。いつも仏頂面した男が見せた少年みたいな笑顔なんて卒倒もんだぞ?」


何でだよ。そう言いたいのを飲み込んで剛の顔面にアクセサリー詰め合わせをぶつける。しかし、なんて事はないように鍛えた手で飛んで来た箱を掴むと彼女達に投げ渡す。そんな剛には目もくれずに彼女達は品物を開ける。


中は6つの仕切りからなっており、端から順に銀でできた装飾に綺麗な石(鐘恋曰く宝石ではない)が嵌った全て違う形のアクセサリーが入っていた。


「ねぇ?これはどこで買ってきたの?どこかの宝石店?」


「……まさかとは思うがお金を無駄に使ったんじゃないでしょうね!あれほどお金は大事にしろって言ってるじゃない!」


「離せ馬鹿!まずは話を聞け!ったく、なんか道に迷った挙句に見つけた装飾店で買わされたんだよ!野口一枚で!」


だからいい加減離せや!胸ぐらをつかみながら近くで怒鳴るな!唾が飛ぶ!何とか引き剥がそうとするも金がかかったこいつの力は恐ろしい。体格差はあるのに力で押し負けてる気がする。


「なあこれもらっていいのか?」


やっと誤解が解けて手を離してもらったところで愛紗が簪片手に嬉しそうな笑顔を浮かべている。いつもの無関心な顔ではなく、年相応の笑顔を浮かべた少女にそんなことをお願いされたら断れるものはいるのだろうか?いやいない。


「なら俺はこのドックタグだ。」


「……直ぐに死にそうな剛にはぴったりじゃねぇか。」


「剛が遠い異国の地で亡くなったらあのドックタグが届くのか……」


「何で今、俺を殺そうとした?何で?そんなに日頃から死亡フラグが立ってるように見えるか?」


嘆く剛を無視して各々好きなものを取っていく。正義は腕輪を。カレンはイヤリングを。俺はペンダントを選んだ。


「後残ったのは指輪だけだね。これは真実ちゃんのぶんかな?」


「なら帰ってきたら渡してやれ、友哉。その大事に抱えてるプレゼントと一緒にな。」


「……分かってるっての。」


それと同時に玄関で物音がした。どうやら彼女が帰って来たらしい。軋む廊下を歩きながらこちらに向かってくる。


「おい早く出迎えてやれ。あと同時に告れ。俺たちは席を外しといてやるから。」


「ーーっ!てめぇらやっぱ碌でもねぇこと考えてやがったな!」


後ろで囃し立てる4人に制裁を下そうと振り返ると食堂に彼女が入って来たらしい。囃し立てた4人が静かになる。


「おお、おかえりーー」



そして振り返った俺はーー






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


……何だやけに辺りが暗い。


おい、誰かいねぇのか?力、金、愛紗、正義?誰か返事してくれ。


「ーーっ!?ーーきて!!ーーないで!!」


何言ってんだ……?うまく聞き取れねぇ。なんか暖かいもの…が頭を…包んでいるのか?


まてよ、この声……どこか…で聞覚えある……な。


やば……意識が……はっきりしねぇ。やけに体が重い。……どうなってんだ?


嗚呼……駄目だ。眠い。もう意識を手放したい


「ーーて!?ーーよ!?ーーないで!?」


分かった………この声……ははっ何だ………帰って来たのか。なら………プレゼント…を渡さ……ないと。


いやその前にーー


「………おかえり、未来。誕生日……おめでとう」


懐から取り出しのはお洒落なオルゴール。だがそれは粉々に砕けており、彼が掴んでいるのは僅かな破片。


彼女はそれを受け取ると彼は酷く穏やかな表情を浮かべた。


「ありがとね。友哉。私、貴方のことーー」


頬を伝う雫とともに紡がれた言葉はもはや彼には届くことはない。


徐々に冷たくなる体が彼女に現実を突きつける。


それを知っていながらも彼女は繰り返し言い続けた。


「ーー大好きだよ」




誤字、脱字、感想。何でもこいです!皆さんどうか応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ