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私は、永久保存版。  作者: 壱村梨花
1話 幽霊
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5・私がそこに侵入するワケ。

 「なんじゃ、ヤヤ?」


 長い深みのある紫色の髪を(はら)いのけ、こちらを()り向いた女の子。彼女は、豪華(ごうか)な金の椅子に足を組んで(すわ)っている。身長が小さいせいか、足は椅子に(ちゅう)ぶらりんになっているのだが、彼女がまとう雰囲気は神々(こうごう)しさに満ち(あふ)れてている。

 そんな彼女は胡散臭(うさんくさ)そうに僕を見下ろす。

「だから、さっきからなんじゃ」

「はっ、はい!」

彼女は指にすみれ色の(かみ)をからめて、目を細める。

「今日、実は、重要なご報告がありまして」

「はぁ。で?」

僕は言う。


 「不正侵入者(*****)が――――」

「なんじゃと!?」



 僕が言いおえる前に、彼女はびっくりし金の椅子から(ころ)げ落ちる。少しドジなのも、彼女の魅力かもしれない。


「不正侵入者じゃと!? ヤヤ、何人いるのじゃ」

「そうです。どうやら、二人ほどいるそうで」

 僕が()げおわると、彼女はすぐにその椅子に座り直し、姿勢を正す。そして、右腕を(くう)にあげる。すると、彼女の手のひらから光が現れる。いわゆるホログラムだ。

「ミロ、いるか?」

彼女が呼び()ける。

「はいっ、拙者(せっしゃ)はいつでもおります!」

彼女の手のひらに、一人の男の子が(うつ)る。白い髪をした彼は、神影(みかげ)ミロだ。


 「なにか御用(ごよう)でございますか、閻魔様(###)

「うむ。大惨事(だいさんじ)じゃよ、ミロ」


 そう、この彼女(**)こそが、世界一お偉い、13代目閻魔大魔王(えんまだいまおう)炎馬(エンマ)イミなのだ。



 「やっぱやめるか?」

『ううん』

 今、私の目の間には悪魔がいる。悪魔との交渉中である。


 ここは、閻魔がいるらしい”閻魔の庁”という宮殿の地下のある部屋。ここまで侵入してくるのは結構簡単だったのだ。本当は、何とかいう山と三途の川を通らないと辿(たど)り着けないらしいが、二級悪魔さんの”特権”とやらで瞬間移動で安全かつ超短時間でここまで来れた。特に三途の川は危険で、溺れてしまったら最期、特に未練が有ろうか無かろうが強制的に成仏させられてしまう。感謝しろよ、と悪魔はそういった。


 と、そこでジンが急にひょんなことを問う。

「なんで、お前、そんなに生き返りたいんだよ」

『逆になんで? 希望(のぞみ)持っちゃいけないの、幽霊って。』


 私は()ねてそっぽを向く。そもそも悪魔って、人間と契約してさ、お命頂戴(ちょうだい)するやつでしょう? なんで、そんじょそこらの浮幽霊の相談のっちゃってんの。こいつ(ジン)、悪魔失格じゃない? いくら、二級(**)といえど。

「いや、別にいいんだけれどよう・・・やばくないか?」

『へ?』

「お前がやろうとしてることって、大罪だぜ?」

『た、大罪?』 

「そうだ」

ジンは私をまっすぐ見る。目を合わせて真剣な顔でいう。真っ赤な瞳が私を(にら)みつける。少し、脚がすくんでしまう。

「一度死んでしまった者などが、生き返るなんて、そんなことしたら人類破滅なんぞの問題じゃないぞ?」

『・・・うん』

私は、うつむく。そして、頭をあげる。


『確かにそうだけれど、私はっ―――』



「お前は自己中なんだっっっ!!!!」


 急に大声で怒られ、私はびっくりしてしまう。

「いくら、神様でも、閻魔様でも、このジン様でも”できられないこと(********)”があるんだっ!」

ジンのしっぽがブンブンと唸りを上げる。

「わかるか?! ”できない”じゃなくて、”できられない”だ!その違いがわかるか!?」


 『・・・ごめんなさい・・・わがまま言いすぎた・・・』

 悪魔は、ハッと我に返る。ここは、地下牢。叫び声が響く。

『・・・ぅっ』

 悪魔は急に慌てる。


 私は、壱村梨花は、泣いていた。幽霊だって、泣く。私は情けなくぽたぽたと大粒の涙を流した。


 「・・・なんか、ごめんな・・・。言い過ぎた・・・」

悪魔は反省する。

 梨花は、涙を見せまいと制服の袖で(ぬぐ)おうとした。

 と、そこへ二級悪魔がばつの悪そうな顔でそっぽを向き、無言で何かを私の前に突き出した。

 ―――ハンカチだ。

 悪魔のイメージに合わぬ、純白のハンカチ。見事な刺繍が(ほどこ)されていた。

「すまない・・・」

『いいや、あやまらなくていいよ。私が悪いのだから』

私は有難くハンカチを受け取り、ゆっくりと涙を拭った。

やがて私は、落ち着きを取り戻す。


 「じゃあ、行こうか」

ジンが仕切りなおす。

「お前が、生き返りたいなら。いざ、閻魔様のもとに!」

『うん!』




 こうして、私達は閻魔がいるところを目指すのだったが・・・。


「・・・その用は、無いようでございますよ?」

『え?』

「え?」


 私たちの背後から、男の子の声がした。

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