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ビー玉ころころ。

作者: ビー玉取った瞬間溢れた記憶

ビー玉は坂道を転がる。

ころころと。


ユウジは窓から空を見上げていた。

特に理由はない。

特にやることがないからだ。

ユウジはゆっくりと立ち上がり一冊のアルバムを取る。

ゆっくりと捲る。

恐れるように、慈しむように、壊れないように。

ゆっくりと。

ゆっくりと捲る。


ビー玉は透明だ。

ラムネの窪みに挟まっているビー玉は実にもどかしい。

ビー玉を取り出すことに意味はない。

だが、取り出したくなる。

欲しい。

サエもユウタもリツもビー玉を欲して試行錯誤していた。

そんな遊び?

そんな遊びをする時代だったのだ。

私の時代は。

私はそうだなあ・・・取り出すのが苦手だった。

いつも一番最後に取り出していた。

そのくせ無くすのだけは一番早い。

よく坂道で落として、二度と戻ってこなかった記憶がある。

ビー玉は転がっていくのだから。

ビー玉は坂道を登ることはない。


その日は雲のない快晴だった。

暑かった。

昔ならば子供たちはラムネの一本でも片手に遊んでいそうなものだ。

そしてユウジのようにどこかで失くして、どこかに転がっていくのだろう。

ユウジはゆっくりとページを閉じた。

そして、ゆっくりと目を閉じた。

サエのも、ユウジのも、リツのも・・・

ビー玉は転がっていった。

ビー玉は思い出とともに転がっていくのだ。

ビー玉は二度と戻ってこない。

人生の幕を下ろそうとするユウジのビー玉もまた転がり始めていた。

二度と戻ってこない坂道を。

淡い記憶に乗せて。


失くすのは俺が一番だったはずなんだがな。


ユウジは小さく微笑んだ。



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