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ある日、満足した男④/情報収集




 俺は今、空を飛んでいる。

 もちろん魔法の成せる技である。

 魔力で身を軽くし風を操作して空中を流れるイメージだ。

 案外簡単に出来た。


 樹木の遙か上空に浮かび、全方位の景色を確認する。

 レベルと魔力で強化された視力と感まかせで当たりを付け、人通りが有りそうな方向へと進み出す。


 自由に飛べるってのは最高だ。

 高いところは苦手なのだが、強靱な肉体を手に入れた所為か、万能に近い魔法がある所為か、どれ程の高度を高速で移動しても怖さを感じない。

 魔力で調整出来るので寒さや息苦しさも感じないしな。

 ほんと、最高だ!


「あいきゃんふらーい!!」


 ハイになった俺は、叫びながら高らかに笑う。

 不思議仕様の別世界ならではの旅立ちといえるだろう。

 好き勝手に飛び回りながら目的地を目指す。


「森ばかりだなー」


 どうやら俺が乗った車は、森の奥深くに遭難していたようだ。

 少なくとも視界に建造物は無い。

 初めて見る景色に感動を覚えながら進み続ける。



 1時間ほど飛ぶと森が途切れ、草原が見えてきた。

 更に進むと点在する小規模な密集林と、簡易整備された道路らしき人工物が見つかる。

 今更ながらこの世界に、知恵を持つ生命体が居るのは間違いなさそうだ。


「この辺かな」


 道路を通る人影は無いが、道路沿いの密集林からは人の気配を感じる。

 今まで遭遇した魔物と比べ微々たる気配だが、10人程度が群れて居るので見つけ易かった。

 上空から様子を見ると、地球人と同じ外見が確認出来る。


 よかった。

 この世界にもヒト属が生息しているようだ。

 獣や火星人のような奇抜な外見ばかりだと困るからな。

 主に性的な面で。


 彼らは獲物を待ちつつ休憩中なのか、木の陰に隠れて座り込み雑談中である。

 下品な笑い声。ぼさぼさ髪に無精ひげな汚れた格好。一通り武装しているようだ。

 直上から見てるので、これ以上の情報は分からないが、とても堅気の人間ではないだろう。


「とりあえず鑑定してみるか」


 ふむふむ。

 皆似たようなステイタスである。

 最も高い者でこの程度だ。



名前:バングル

種族:人族

職業:盗賊(頭領)

年齢:42歳

レベル:24

体力:2800/2900

魔力:2000/2200

力:310

素早さ:200

運:280

スキル:『体術2』『剣術2』『演技1』

魔法:『身体強化2』『炎系統2』『風系統1』



「盗賊って職業があるのかよ」


 指名手配されてるのか、それとも自己申告制なのか。

 ともかく鑑定で素性まで判別出来るのは助かるな。

 スキルと魔法の『ランク』表示は省略されている。

 二度目の鑑定なので本人が分かり易い形で表示してくれるようだ。優秀優秀。


 レベルをはじめとした戦闘能力は、俺と比べ大きく劣っている。

 これが人族の標準的な強さなのかは不明だが、曲がりなりにも腕っ節が大事な盗賊業に就任している輩なのだ。

 一般人より弱いという事はないだろう。


「よかった。今のレベルで充分対応出来そうだな」


 対応可能どころか手加減しないと捻り潰してしまいそうなレベル差である。

 相手が格下と分かって安心した俺は、地上に降りて盗賊の皆さんとコンタクトを図る事にした。




「えーと、はじめまして。こんにちは。今日はいい天気ですね?」


 まずは礼儀正しく挨拶と鉄板の天気ネタを投げてみる。


「!? ※※※※※、※※※※※※!!」


 おっと、言葉を聞き取る事が出来ない。


「そうか、地球じゃないもんな。言葉が通じない可能性を忘れてたな」


 まあ、地球だとしても日本語以外は分からんがな。

 仕方ないので、両手を挙げて敵意が無いことを示してみる。

 今の格好は会社帰りの作業着のままなので、警戒されそうな外見ではないはずだ。


「落ち着いて下さい。まずは話し合いましょう。ラブ&ピースです」


 喧嘩上等のくせに、よく言うよな俺も。


「※※※!! ※※※!!」

「※※※※※!!」

「※※※!!」


 和平を気取った努力むなしく敵認定されたようだ。

 おっさん連中は得物を抜いて問答無用で襲いかかってくる。誰であれ攻撃する気満々だったのだろう。

 それでこその盗賊業だ。

 だが、おっさんがおっさんに襲いかかる絵づらって最悪だよな。


 ――――あー、よかった。

 下手に友好的な相手では、服従させるのに気が引けるもんな。

 これで正当防衛が成立しましたよ。

 あれ、先に一発殴られないと成立しなかったかな?

 などと考えつつ、剣や槍を振り回して突進してくる敵を前に適当に構える。


「それじゃあ、こちらも遠慮無く攻撃させてもらいましょうか!」




 結果。勝ちました。楽勝でした。

 最初は放出系の魔法を使わず身体強化だけで戦ってみたけど、余りにも手応えが無かったので強化魔法を解き、純粋な身体能力だけで対応してみた。

 これだけ手を抜いても楽勝でした。

 やはりレベルの差は絶対らしい。


 とりあえず喋れる程度に手足を折って動きを封じた後、持ち物を鑑定してたら『翻訳の指輪』なるアイテムを持ってる方がいらっしゃったので進呈してもらう事にする。

 言葉が通じるようになったので尋ねたところ、この世界には色々な種族が存在するため翻訳アイテムが必須であり、魔物から比較的容易に入手可能らしい。

 森で手に入れた鑑定アイテムといい、人類のためになるマジックアイテムが多いようだ。


 てか、都合良すぎだろう。

 …………やはり、ここは夢やゲームなどの仮想世界なのかもしれない。

 気を付けておくべきだろう。


 それはそれとして、盗賊の方々にはこの世界のルールを教えてもらおう。

 教えを乞うのだから相応の御礼は必要だろう。

 ここは奮発して、ずばり命。もちろん相手の。

 話すだけで自分の命がもらえるのだから破格であろう。

 お釣り代わりにアイテムの実験にも付き合ってもらおうかな。


 こうして把握したこの世界の基本ルールは、こんな感じである。




 一つに、この世界はレベル制である。


 ステータスをはじめスキル、魔法、アイテム、魔物など多くの事柄にレベルの概念がある。

 なお、自身の基本的な強さは『レベル』として無制限にカウント。

 その他は『ランク』として十段階にカウントされる。


 レベルは経験の累積で上昇。

 スキルや魔法のランクは練度で上昇。

 このルールはファミコン世代とはいえ、ゲームに慣れた俺には理解しやすい。


 注目すべきは、知識も経験値になること。

 ……なるほど、異邦人たる俺のレベルが異常に高いのも頷ける。

 俺は一般的な教養しか受けていないが、それでも日本の教育は高度で多彩。

 また、日々の読書やテレビ鑑賞などで得た膨大な雑学。

 それに社会勉強などの経年による中年男の体験こそが、この世界では膨大な知識としてカウントされ、勝手にレベルが上がったのだろう。

 

 基本となるレベルの程度は、街中で働く普通の大人が10、兵隊や魔物を倒し生計を立てる冒険者が20、隊長クラスや一流の冒険者が30、人類最高レベルの戦士が40。

 ……そして俺は180オーバー。

 どう見ても反則級です。本当にありがとうございます。

 俺つえーも夢じゃないな。


 他に留意すべきは、人類の基本レベルを10で割った数値が魔物のランクに釣り合うこと。

 個体の能力では、ランク10=レベル100まで実在する魔物が人類の強さを圧倒するため、冒険者はパーティを組むのが必須。

 そういえば今までランク5以上の魔物しか遭った事ないんですけど。

 ……俺が遭難してたのは、現地人最高レベルでも容易に死ねるほどの危険地帯だったのかよ。

 どうりで近くに人影が無かったはずだよ。

 まあ、とにかく、このレベル制ルールは、俺にとって有利に働くだろう。



 二つに、魔法は誰もが使える常識的な力である。


 この世界では人類の他にも、動物から植物まであらゆる生命体に魔力が宿っている。

 このルールで注意すべきは、誰もが魔力の使い方次第で強くなれること。

 言い方を変えれば、どんなにレベルが低い者でも殺傷力の高い魔法を使える可能性が有るのだ。

 つまりは、俺のレベルと魔力値の高さに基づく優位性が失われる、と言う訳だ。

 何でもありな魔法に対抗するためには、『運』や『感』などの危機回避能力を養う必要がありそうだ。

 喫緊の課題である。



 三つに、人類と敵対する魔族が存在する。


 魔物とは、世界征服のため魔王が創造した兵隊であり、人類の敵である。

 因みにこの世界には、ファンタジーな世界らしく人族以外にも多くの種族が存在しており、それら知的生命体の総称を『人類』と呼ぶ事にする。

 そして魔族は、魔王を頂点とし、高い知能と戦闘力を持つ幹部的な魔人と、獣並みの知能しか持たない先兵たる魔物の3種類で構成される。


 奇妙なことに数百年前には存在しなかったのだが、突如強大な魔力を用いて顕現し人類を襲い始めたのだ。

 人類を圧倒する戦闘民族こと魔族は、人類間の戦争中に漁夫の利を狙い攻撃を仕掛ける狡猾さも併せ持っていた。

 魔族が現れる迄は種族間の抗争に明け暮れていた人類も、共通の脅威から身を守るため協力せざるを得ない状態になったのだ。

 他動的な情けない話だが、それ以降和平協定が結ばれ大々的な戦争は起きていない。

 各種族が協力して魔族に立ち向かう事で理解が深まり、そこそこ友好的な関係を築いている。


 魔族が人類に仇なすのは、世界制覇という目的があるからだと理解出来る。

 だが、魔物を倒した相手にアイテムを献上するような敵に塩を送る行為は、明確な理由が分かっていない。

 今のところはアイテムを餌に人類を誘き寄せる罠説が有力。

 実際、各地にはダンジョンみたいな魔物スポットがあり、貴重なアイテムが入った宝箱も隠されているため危険を承知で挑む者も多い。


 魔族とは、まだまだ謎が多い存在のようだ。

 しかし、ドロップアイテムにダンジョンに宝箱とはね。

 案外魔王さんは遊んでいるのかもしれない。

 この辺の仕組みもゲームっぽい気がするしな。




 …………重要な情報はこんなものである。


 それと盗賊の方々には、アイテムの実験にもご協力頂いた。

 特に、これまで負傷しなかったため使う機会が無かった回復アイテムの実験だ。


 結果については、流石マジックアイテムと言わざるを得まい。

 手加減を違えて手足や内臓が潰れていた者も一瞬で全快したのだ。

 アイテムのランク次第だが、即死以外は回復出来そうである。


 残念なことに、回復魔法を会得出来る者は非常に少ないらしい。

 加えて医学レベルも低いようだ。

 そんなんでバトル上等な世界で大丈夫なのかなと心配したが、ここでもアイテムが活躍する。

 回復系アイテムはそこそこの確率で出現するのだ。


 ただ、需要が高く高騰するので庶民が手に入れるのは難しい。

 特に重病も治す6以上の上位ランクは貴族御用達の貴重品になっているらしい。

 命さえも金と権力が優遇されるとはな。

 こんなところは地球と似ている。ため息が出るよ。



 さて、――――俺は回復魔法を使えない。

 放出系の魔法は簡単に使えたのだが、回復、転移、付与などのサポート系が全滅だった。

 性質というか性格的なものが原因で、明確なイメージが出来ないのだろう。

 誰かの役立つ事をしたいなんて、考えもしないからな。


 魔法は何でも出来る可能性の塊だが、それを使う者の器に限られる。

 言うなれば適性が無いのだ。

 自前の回復手段が無いのは大きな問題なので、回復アイテムを常備する必要があるだろう。


 ……なお、蘇生については、魔法では不可能だと結論付けられている。

 蘇生アイテムも存在しないらしい。

 アイテムについて曖昧な言い方になったのは、入手した者は居ないが、誰も倒した事がない魔人が存在するので断言出来ない、と言う事らしい。

 つまりは、魔族の幹部で鬼強い魔人を倒せば、未知のアイテムを入手出来る可能性があるのだ。

 まあ、可能性とは言え、願望に近い気がするな。


 ファミコン世代の俺にも、魔法=科学では絶対不可能な蘇生さえも為し得る究極の力、と言うイメージがある。

 故にリアル魔法が存在するこの世界では、蘇生も容易だと思っていただけにショックである。

 この世界がゲームだとしたら、結構難易度が高いようだ。


 他にも付与や空間魔法などの特殊魔法を使える者も居るが、精錬されておらず戦いで使える類の魔法ではないそうだ。

 万能に近い魔法が存在する世界だが、だからこそ発想が貧困になり、魔法とアイテムに頼りっきりで科学的分野が発展せず、自然の原理を理解しないままお粗末な使い方をしているのが現状だろう。


 しかしこれは、逆に考えると、原理を理解すれば誰でも強力な魔法を使えるということ。

 ……とても危険だ。

 地球の科学的な知識の披露は控えるべきだろうか。

 要検討事項である。



 まあ、そんなこんなで、最低限の必要な情報は揃ったようだ。





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翻訳の指輪はお互いつけてないとだめなのかな?
[気になる点] 盗賊との会話まで端折らないでw 初めての現地人やのに結局説明調の独り言継続はw
[一言] 医学が進んでてイメージ前提なら回復が一番楽だと思うけど?
2021/12/24 17:46 退会済み
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