モンスター・フェスティバル 2/3
祭りは、夜通し続けられた。
魔王を演じる俺は、お触り有りの高級キャバクラ並に美女達からチヤホヤされ。
魔人を演じる本物の魔人娘は、男連中から献上品という名の料理を貢がれてご満悦。
なるほど、これが本当に魔王様の日常だとしたら、世界征服も悪くない。
能力だけは高いポンコツ魔人衆を適当に暴れさせ、人類の中から美少女を攫ってきてハーレムを作ればいいのだ。
これが正しい異世界の楽しみ方だったのか。
「…………」
しかし、楽しい時間は早く過ぎるもの。
祭りの後は、高揚していた時間と反するように、寂しさ込み上げてくる。
この落差は賢者タイムと似ているかもしれない。
「……やはり人類とは、脆弱な生き物なんだな」
徹夜で飲み騒いだ代償に、俺以外の祭りの参加者は地面に倒れ爆睡している。
飲み過ぎて寝ながら苦しんでいる者や寝ゲロしている者も多く、阿鼻叫喚な地獄絵図が形成されている。
まさに、凶悪な魔王と脆弱な人類を現した世界の縮図である。
「そろそろ帰るか……」
朝日を浴びながら寝転んでいる女性の胸をつついて暇潰ししていたが、それも飽きてきた。
彼女達が起き出してまた騒がれても面倒だ。
ちなみに、ポンコツトリオも地面に転がってぐーすか寝ていやがる。
人化薬で人並みに落ちた体力のまま騒ぎ続けていたので寝落ちしたのだろう。
俺を差し置いて幸せそうに眠る三馬鹿を見ていると腹が立ってくるので、叩き起こしてお暇しよう。
「失礼。少々よろしいでしょうか?」
サッカーボールのように地面に転がったポンコツトリオを蹴っ飛ばそうと大きく足を振り上げた瞬間、後方から誰かさんに声を掛けられた。
仕方なく足を元の位置に戻して振り返ると、妙に落ち着いた雰囲気を持つ年老いた白髪の男と目が合った。
俺の他に起きているヤツはいないと思っていたので、少し驚いてしまう。
「何かご用で?」
「はい、せっかくの機会ですので魔王様と世界制服の展望についてご相談できればと思いまして」
「祭りの時間は、もう終わったはずだが?」
「これは失礼。それでは、どのようにお呼びすれば?」
「……確かに今更名乗るのも無粋だし、ここではソレで通そうか」
「寛大な処置に感謝します、魔王様」
冷静に考えると、こんな頭のおかしな集団に名前を覚えられたくない。
本気で崇められて、変な宗教の教主にでも祭り上げられたら困る。
この場を去るまでは傲慢な魔王様プレイを継続しよう。
「それで、俺を魔王と呼ぶあんたは誰だ?」
「挨拶が遅れ失礼しました。私は魔族崇拝教の教主を任されている者です」
お前が教主なのかよっ!?
……いやいや、問題はそこじゃない。
「魔族崇拝教ってのはもしかして、数ある宗教業界の中で三指に入るほど悪名高い、あの魔族崇拝教なのか?」
「社会道徳を踏み外す行いはしていないのですが、世間ではそのように評されています」
なんてこったい!
つい先日、ソマリお嬢様から異世界の宗教事情を聞いて、お近づきにならないよう気をつけていたのに、よりにもよってそのトップとご対面かよ。
これはアレだな、注意喚起と見せかけて、実は駄目なフラグを立てていたパターンだな。
よくもまあ、毎回毎回余計な真似ばかりしてくれるお嬢様だぜ。
次に合ったら、挨拶している途中にほっぺた引っぱたいてやる!
「……ということは、この祭りは魔族崇拝教が主催する布教活動の一環だったのか?」
「はい、もちろんでございます。もしかして、ご存じなかったのですか?」
ご存じありません。初耳です。
ウケ狙いのブラックジョーク的な、ちょっと変わった祭りだと思っていたのに。
実際に元いた世界でも、悪魔に扮し悪を以て悪を制すみたいな祭りがあったしな。
まさか本当に、人類の天敵である魔族を崇めるヤベー奴らの集まりだと知っていたら絶対に参加しなかったぞ。
「これは傑作ですっ。つまり魔王様は、私どもがどのような相手を崇めているのか知らずに、偶然この地を訪れ、成り行きで祭りの主役として参加していた、ということですかっ」
「不本意ながら、そうなるな」
「そうなりますと、三人のご息女が魔人様によく似ているのも偶然で?」
「よく覚えておくといい。こいつらを俺の子供だと二度口にして生きている者はいない」
「これは失礼しました。ですがその物言いは、本物の魔王様のようですね」
「ははっ、光栄なこって」
確かに俺は、魔族とは関わりが多い方かもしれないが。
本物の魔王様とはご尊顔を拝するどころか、会話さえしたことないんだぞ。
「……やはりあなたは、来るべくしてここへいらっしゃったのでしょう」
「俺は運命論をそれなりに信じるロマンチストだが、今回に関しては断固否定するぞ」
本物の魔人を引き連れた俺が、意図せず魔族を崇める連中と出会っちまうなんて、運命の神の悪戯だとしてもタチが悪い。
これ以上、俺と魔族との関係を深めるのは止めてくれ。
そうでないと、何か、取り返しがつかなくなるような――――。
「魔王様、よろしければ私の家でゆっくりお話ししませんか。お茶程度しか出せませんが」
「宗教の勧誘はお断りだ」
「魔族崇拝教は勧誘を行っておりません。体面上は宗教団体としていますが、その実は相互扶助の集まりと同じなのです」
「それは逆に根が深い気がするが」
「それに、あなたには勧誘など必要ないでしょう」
「…………」
やたらと落ち着いている教主が、微笑みながら一人納得している。
どちらの意味でそう断言しているのだろうか。
「……俺はグルメだから、茶が不味かったらすぐ帰るぞ」
「ご安心ください、魔王様。私の最愛の妻が淹れる茶は最高ですから」
はいはい、ご馳走様。
そんな熱々を頂戴しては断れない。
結婚アンチの俺も、金婚式を迎えた夫婦を否定する気にはなれない。
むしろ、俺が選ばなかった道を歩き通した彼らには畏怖の念さえ抱く。
だからといって俺の結婚観は揺るがないが、人類の天敵である魔族については詳しく知っておいた方がいい。
この世界の誰もが知っている魔族だが、その生態を詳しく知る誰かとは出会ったことがない。
仮にも魔族を擁護する集団なら多少は詳しく知っているはず。
この機会に、世界を牛耳る危険指定生物について紐解くのも大事だろう。
そんなわけで俺は、まだ寝ている三馬鹿を起こさないよう担ぎ上げ、怪しい老人の後をついていくのであった。
◇ ◇ ◇
魔族崇拝教の教主の家は、お祭り会場から徒歩五分圏内にあった。
そこで案内された部屋は、華やかで格調高い美術館のようであった。
一見、は……。
「…………」
四方の壁には女性の肖像画が多く飾られており、壁の手前に配置された台座には高価な品が惜しみなく並べられている。
普通の美術館との違いは、その絵のモデルが魔人娘であること。その高級品が全部アイテムであること。
魔人娘は見た目だけはいいし、ドロップアイテムの外見も洒落ているから、それっぽい雰囲気だけはある。
「吐き気がしてきたから、帰っていいか?」
全方位から魔人娘に凝視されているようで恐ろしい。
俺にとっては、美術館ではなく、お化け屋敷である。
「それは大変です。最愛の妻が淹れたこのお茶を飲んでゆっくりされた方がよろしいでしょう」
俺の嫌みを軽く流しつつ、教主自らが茶と菓子を運んでくる。
さすがは組織のトップだけあって図太い。
「……いただこう」
女性が俺のために用意してくれた茶を飲まずに帰るほど落ちぶれてはいない。
ここまで来たら、毒を食らわば皿まで精神で頑張るしかなさそうだ。
周囲の飾り物に比べると質素なソファーに座りながら、熱い茶を喉の奥に流し込む。
ずずーっ。
うん、結構なお手前で。
「それにしても、よくこれだけ多くの魔人の肖像画を集めたものだ」
飾られている絵は、八枚。
魔人は十体以上いるそうだからコンプリートではないが、それでも十分多い。
自慢するつもりはさらさらないが、この俺でも四体としか面識がないのだから。
「魔人様の目撃情報がある各地を飛び回り、実際にお姿を拝見した方から話を聞いた成果です。王国や冒険者ギルドでもここまで詳しくは把握できていないでしょう」
白髪の教主が自慢げに説明する。
張り合ってないで共有すべき重要な情報だと思うのだが。
「魔人様の肖像画と、魔物が与えるアイテムは、私どもにとってご神体と同じなのです」
酷いご神体もあったものだ。
だが、数は良くても、質はあまりよろしくない。
なぜなら――――。
「こうして見比べると、言うほど似ているわけではないな」
俺の隣で阿呆面さらして寝ている三馬鹿を見ながら、率直な感想を述べる。
肖像画の中には木の魔人、炎の魔人、闇の魔人もちゃっかり描かれているが、背格好や髪型は似ているものの、顔はそれほど似ていない。
バラエティ番組でよく見るウケ狙いのそっくりさんレベルだ。
「やはり、似非魔王である俺が連れてきた阿呆面の小汚い子供では役者不足のようだな」
「ふふっ、魔人様の肖像画は多大な労力を投じてようやく描き上げた傑作ですが、その大半は伝聞によるものなので実物との差異はどうしても生じてしまうのです」
だから何で俺の方を本物みたいに言うんだよ。
もっと自分達が作り上げた偶像に自信を持とうぜ。
「……それで、話というのは?」
おっさんとじじいが二人向き合って茶を飲んでいても絵にならない。
無駄話はこれくらいにして、さっさと本題に入ろう。
魔族崇拝教の教主は、魔人の肖像画についてまだ語りたい感じだったが、俺が促すと姿勢を正し、厳かに口を開きはじめた。
「魔王様には、魔族崇拝教の成り立ちを知っておいてほしいのです」
「この俺がそんな話に興味を持っているように見えるのか?」
「いいえ、残念ながらそうは見えません。ですが、世間一般では忌避される私どもの考えをご理解していただけるような気がしましたので」
「一応断っておくが、魔人に似ているこいつらを世話しているからといって、俺が魔族に好意を持っていると判断するのは大間違いだぞ。なりゆきで仕方なく一緒にいるだけだからな。善良な一般市民の俺は、人類の滅亡なんて望んじゃいない。だから、魔族に味方するつもりは、ない」
まだ目を覚まさない三馬鹿の顔をつつきながら、断言する。
魔族に恨みは無いが、だからといって味方する理由も無い。
「ふふっ」
「……どこか笑える箇所があったか?」
「これは失礼、魔王様の物言いがあまりにも愉快でしたので」
「俺は普通に普通の感想を述べたつもりだが?」
「普通の者は、『魔族に味方する』などと恐れ多い発想はできません」
「…………」
「魔族は圧倒的な強者、人類は抵抗する術を持たぬ弱者なのです。そのようなか弱き存在が魔族に抱く感情は、『恐怖』や『怒り』が普通でしょう」
「……そうだとしたら、普通じゃないあんたらが魔族に抱く感情は、何だ?」
「恐怖はけっして消えません。怒りもまだ残っています。ですがそれ以上に、この胸の内を占める強い感情は『感謝』なのです」
「それは、もしかして、ドロップアイテムのことを言っているのか?」
「ご理解が早い。――――そう、私ども魔族崇拝教は、アイテムによって自身の命を、もしくは大切な人の命を救われた同志の集まりなのです」
白髪の老人は、嬉しそうに言った。
本当に、嬉しそうに。
「飢えに怯える者には、食料系のアイテムを。病魔に冒された家族を持つ者には、薬系のアイテムを。剣を振るうしか能がない者には、明確な敵と報酬を」
「…………」
「様々な理由で苦しむ者を救う様は、まさに神そのものではありませんか?」
「……何事も人によって見方は変わるものだが、あんたらのそれは極端に偏った少数意見だと思うぞ」
「むろん、偶然だったり、運が良かっただけであることは、重々承知しています。それでも、魔族の存在があったからこそ、私どもはこうして人生を享受できているのです」
「…………」
その言葉を否定する言葉を俺は持っていない。
人にとって、正しきモノが神になるわけではない。
自身を救ってくれたモノが神として祭り上げられるのだ。
「魔王様は、人類の天敵だと恐れられる魔物が、アイテムなる恵みを残す理由をご存じですか?」
魔族崇拝教の成り立ちを説明し終えた教主は、次にこちらが話すよう促してくる。
この流れに乗っかると深みに嵌まってしまうが、俺が知りたいのはまさにソコなので、話を合わせるしかない。
「確か、アイテムを餌にし、欲に目がくらんだ人類をおびき寄せて狩るため、だったか」
「世間一般では、その説が最も有力視されています」
「ああそうか、あくまで仮説だったな。……それで、他にはどんな説が?」
「魔物とは、野生動物と自然界に溢れる魔力が混ざり合った突然変異であり、討伐した者の強い想いが魔物を形成していた魔力と反応し、アイテムに形を変えるという説もありますね」
「ふむ、それっぽい理由を考えるものだな」
「仮説とは、そういうものですから」
教主は笑って、そう区切りをつけた。
ここまでは世間話の範疇なのだろう。
「それで、魔王様個人としては、どのようにお考えで?」
ほんの少しだけ真剣なトーンに切り替えて、教主が聞いてくる。
試されている気がするが、俺もまた真実を知らないので仮説を語るしかない。
「うーん、そうだなー」
魔人について考えるとウンザリするので避けてきたが、少しだけ真面目に考えてみるか。
俺が迷い込んだこの地は、今でも時折感じるように、ゲームの世界を彷彿させる。
レベル、魔法、スキル、アイテム、異種族といった要素は、ロールプレイングゲームそのものだろう。
もしも本当にゲームの世界だとしたら、人類に都合が良いアイテムをドロップする魔物、腕っ節は強いのにおつむが弱い魔人、そして世界征服に消極的な魔王様。
こんな矛盾に満ちた魔族に与えられた役割とは何であろうか?
「……ふむ、こういうのはどうだろう。
魔族のトップである魔王は、好戦的な性格で、三度の飯より戦闘を好むバトルジャンキー。
しかし、脆弱な人類では太刀打ちできない圧倒的な力を持つが故に、ガチンコで勝負できる相手がいないくて寂しい思いをしている。
そこで魔王は、一計を案じた。
強さを段階別に調整した魔物を生み出し、これを下から順番に倒していくことで実力を底上げし、加えてアイテムといった手厚いサポートまで施し、自分のレベルと拮抗する宿敵を育成しようとしている。
つまり、魔物やアイテムとは、魔王がライバルを作るために生み出したシステムである。
これなら一応、辻褄が合うと思うのだが」
ゲーム脳ここに極まれりって感じの新説だな。
実際、序盤の弱い敵がいなくて、いきなりボス戦だと詰んでしまう。
多くのゲームがそうであるように、この世界もまた、魔王と対をなす勇者の誕生を待ち望んでいるのかもしれない。
「…………驚きました。そのような仮説は初めて聞きました。人類にとって都合が良すぎる話なのに、どうしてだか不思議な説得力がある。私ども魔族崇拝教が提唱する説とも通じるものがありますし、もしかしたら、それこそが本当の理由なのかもしれません」
「まあ、いくらなんでも気が長すぎる仕掛けだと思うがな」
もし本当にそうだとしたら、俺が最も目をつけられている可能性が高い。
好き勝手やっている俺を魔王様が見逃してくれている理由がそれだとしたら笑えない。
本当にマジで洒落にならない。
ライバル候補から即刻除外してほしい。
冴えないおっさんが勇者になるゲームなんて売れるわけがない。
「――――それで、魔族崇拝教が考える理由とは?」
これでようやく目的を果たせる。
忘れかけていたが、俺は魔族崇拝教の成り立ちを知るためではなく、俺自身が語るためでもなく、魔族の秘密を聞くためにここに来ていたのだ。
前置きがないと会話が進まない大人社会は実に面倒である。
「私ども魔族崇拝教は、こう考えております。意志を持つが小さな力でしかない動物と、意志は無いが大きな力を持つ自然が混ざり合った存在。言うなれば魔族とは、『意志を持った自然現象』。自然であれば、人に害することも、恵みとなることもありましょう」
「……なるほど、ユニークな考え方だと思う。だがそれだと、先ほどの俺が言った理由とは似ていないようだが?」
「はい、この『意志を持った自然現象』説は、表向きの理由になります」
「表向き? だとしたら、裏向きの理由とは何だ?」
「失礼、表と裏に言い分けると語弊があるのですが、更に掘り下げた理由になるでしょう」
「反対側ではなく、延長上にある理由ということか」
「そうです。生命を生み出し育む大自然は神そのもの。ならば、自然が変容せし魔族もまた、この世界を支える神の一柱でありましょう」
「……だとしたら、この世界の神は受肉してまで何をしようとしているんだ?」
「試練です。人類を高みへと成長させるため、そのお姿を試練に変えたのです。人類の前に高い壁となって立ち塞がり、見事試練を乗り越えた者に与えられる褒美こそがアイテム。つまり魔族とは、『神の試練が具現化した姿』なのです」
そういえば、巨乳シスターが勤める自然崇拝教も自然現象を神だと捉えていた気がする。
そこに魔族という要素を加えた教えが魔族崇拝教になるのだろう。
「…………」
先ほどの彼の言葉を借りるならば、なるほど、不思議な説得力がある。
ポンコツ揃いの魔人娘を神の化身だと認めるのは嫌すぎるが、神話における神々も結構お馬鹿な失敗をしているし、魔人が人類とよく似た姿をしているのも受肉だとしたら理由が付く。
思わずそう納得しそうになるほど、この世界の魔族は曖昧な存在なのだ。
「……本物の魔王様に問い合わせでもしない限り確証を得るのは難しいだろうが、色々と辻褄が合う仮説だと思う。戦力に勝る魔族が一気に人類を滅ぼそうとしない理由も説明できるし、な」
「おおっ、やはりあなたは理解されると信じていましたっ」
いやいや、普通に感想を言っただけだから。
どれほどおだてても入信しないから。
「まあとにかく、世間で噂されているような危ない教義ではなく、むしろ現実を受け入れようとしている真っ当な教団であることは理解した」
「勿体ないお言葉です」
「それはいいとして、ひとつ疑問なのだが、何故ご神体であるはずの魔人をアイドルに見立ててお祭り騒ぎをしているんだ? 普通はもっと厳かに布教するものじゃないのか?」
「その方が覚えがめでたいからです。人は小難しい説教より、目の前の楽しさに惹かれるものですから」
「……悲しいが、揺るぎない真実だろうな」
本日一番の真理がこれかもしれない。
予想だにしない壮大な教義に感心していたのに、一気に俗物へと転がり落ちた気分だ。
狂信者を抱えるという点では、宗教もアイドル業もよく似ている。
そう考えると、宗教も案外身近に感じるから不思議なものである。
……うん、まんまと術中にはまっているな。
これ以上墓穴を掘る前に、退散するとしよう。