奴隷館の店主と最高の客 1/3
彼の趣味は、人生の観察である。
己の人生ではない。赤の他人の人生だ。
ただ一人の人生ではない。できるだけ多くの人生だ。
平凡な人生ではない。とびっきり幸福で残酷な人生だ。
特にそそられるのは、その転換期。
何十年に及ぶ長い人生の中でも、己の転換期を感じられる瞬間は少ない。
たとえば、成人した時、就職した時、大病を患った時。
たとえば、好きな人ができた時、結婚した時、子供が生まれた時。
たとえば、そう――――。
そんな彼が選んだ職業は、奴隷商人。
奴隷として身を落とす時と、見知らぬ相手に買われていく時に限るが、多くの者の転換期を間近で見ることができる。
彼は、そのためだけに、奴隷商人となり、奴隷館の店長にまで昇り詰めた。
世界で十指に入るほど大きな奴隷館のトップであるにもかかわらず、彼は購入と販売の全てに携わっている。
他人の人生の観察を何よりも好むのだから当然かもしれないが、その執着はもはや病気に等しい。
特に、不幸な人生が好きなわけではない。
特に、幸福な人生が好きなわけでもない。
誰かの所為で、もしくは自分の意志で、自身の価値が移りゆく様子をただただ眺め、満足気に笑みを浮かべる。
彼にとって、他人の人生こそが、己の人生そのものだったのだ。
一つのことに長く従事していると、得られる能力がある。
特定の人物のみが持ちうるスキルとは違い、誰にでも発現する経験の結晶。
農業を営む者が、一目見ただけで植物の生育具合を判別するように。
楽器を製造する者が、僅かな音の違いで良し悪しを判別するように。
彼もまた、熟練の目を持っている。
本来、奴隷商人に備わる慧眼とは、奴隷の価値を見抜く力であろう。
しかし、数奇な運命を好む彼に備わったのは、商品である奴隷ではなく、お客様の価値を推し量る目。
それは、他人の人生を好き勝手に弄ぶ素質の大きさを見抜く才能。
人の尊い価値を知っているから、その人生を変えてしまうわけではない。
むしろ逆で、人の価値を理解できないからこそ、その人生を容易に変えてしまうのだ。
彼の特殊な目を通して世界を覗いた時。
その中年男は、最高の人材であった。
彼とその男が出会ったのは、ある街中だった。
偶然視界に入っただけだが、男の価値を瞬時に感じ取り、すぐさま声をかけた。
人の本質を見抜く彼にとって、相手の外見なんて気にならない。
どれほど冴えない外見の中年男であったとしても。
奴隷を購入できるほどの大金を持つように見えなくても、だ。
彼の嗅覚は間違っておらず、中年男は誰もが高価値と判断する三人の少女を二束三文で売り払おうとした。
その時の男の言動に、ためらいは一切感じられなかった。
商談は不成立に終わったのだが、今度は買う方で異常性を発揮する。
彼が農村から買い付けた十人ほどの奴隷を、ろくに検品せず値切りもせず一括購入したのだ。
その後、こっそり覗いていた彼の目に映ったのは、買ったばかりの奴隷の解放。
長らく奴隷商人をやってきた彼にとっても、初めての珍事。
もはや狂気の沙汰と言っても差し支えない愚行。
つまり中年男は、奴隷を必要とせず、大して同情もせず、それなのに大金を使い、手放したのだ。
常人が理解可能な範疇を超えている。
それに彼は、理解しようとは思わない。
ただただ、常識外れの男に振り回され、人生を大きく変えられていく者達をほくそ笑んで眺める。
最高だ。
最高の人生だ。
故郷から連れ出され絶望していたのに、なんの努力も損失もなく帰郷できる僥倖。
農民から奴隷、そして奴隷から農民に戻った彼らは、濃厚な喜怒哀楽を味わっている。
これこそ、まさに、人生の分岐点。
最高の転換期。
これを最高と呼ばずして、なんと呼ぶ。
そんな最高にお人好しで人でなしの所業を為し得る中年男は、やはり最高。
……そう、本日は最高の日。
なぜなら、その中年男が、彼の店にやってくるのだから。
◇ ◇ ◇
「あんた、本当に奴隷館の店長だったんだな……」
初めて入った奴隷館で、そこの店長と目が合った俺は、これ見よがしに嘆息した。
スーツを着ているものの、猫背で胡散臭く、さらに人を見る目が無い男が店の代表だなんて間違っている。
しかも、誰よりも見る目が必要なはずの奴隷館の店長である。
ああ、やはりこの世界は狂っているのだろうか。
「へへっ、旦那と再びお会いできるこの日をずうっと待っていましたよっ」
歓迎されるのは喜ばしいが、時と場合による。
こんな怪しい男から、しかも心の底から歓迎されている様子が感じられ、気味が悪い。
もう帰りたくなってきた。
「すまんが、急用ができたので日を改めさせてもらいたいのだが」
「冗談は勘弁してくださいよ、旦那。わざわざ本日を指定したのは旦那の方じゃないですかい」
そうなんだよなぁ。
奴隷を買う気になったけど、未知の店に入るのが怖くて、顔見知りを頼ってここに来たのは他ならぬ俺自身なんだよなぁ。
せっかく気合いを入れてきたのに、面倒くさがりな俺が今帰ってしまったら、もう二度とやる気がでないだろう。
「……仕方ない。あんたのような胡散臭い奴でも、奴隷商人であることに違いはない。全身全霊を以て俺の要望に応えるがいいっ」
「へへっ、あっしも長いことこの商売をやってますが、旦那ほど無意味に偉そうな客は初めてですよ」
「そうかそうか、光栄に思うがいい」
「へいっ、まさに本日は最高の日でさぁっ」
冗談が通じないというか、冗談を丸呑みして本気で嬉しそうにしている店長が最高に気色悪い。
女性の知り合いは良い子ばかりなのに、なぜ男性の知り合いは変人ばかりなのだろうか。
……いや、よくよく考えてみると女性の方も大概だな。
つまり、俺の知り合いは変人ばかり。
プラスとマイナスが引き合うように、まともな俺と変人とは縁があるのかもしれない。
「挨拶はこれくらいにして、さっさと商談に移りたいのだが」
「旦那は案外せっかちですねぇ」
ビジネスの話ならともかく、今回はただの客と店員の関係。
これ以上、格式張る必要はない。
「店構えは随分と立派だが、肝心の商品の方は大丈夫なんだろうな?」
怪しい店長が仕切る奴隷館は、他のどの店よりも立派で大きかった。
風俗店みたいに一種異様な緊張感が漂う店だと思っていたのに、無駄に広くて綺麗で清潔で、逆に居心地が悪い。
あれかな、田舎のパチンコ屋みたいに怪しい商売だからこそ楽しげで入りやすい雰囲気にしているのかな。
だとしたら、やり手の店長なのかもしれない。
「任せてくださいよ、旦那。あっしの店は質より量。一つの完成品よりも、十の試作品の方が見る楽しみがあるってもんです。だから品数だけは、どこの店にも負けやせんよ」
さながら奴隷の百貨店というわけか。
量より質が重視される近代社会ならともかく、まだ命の価値が軽いこの世界では量重視の方が合っているのかもしれない。
それに、潜在スキルまでも見える最高ランクの鑑定アイテムを持つ俺にとっては、数が多い方が都合良い。
認めたくないが、胡散臭い店長の奴隷館は優良店で、俺との相性も悪くないらしい。
「それで、旦那はどんな商品をお求めなんですかい?」
「もちろん若くて可愛い女の子だっ!」
しまった、ついついただの欲望が口に出てしまった。
今回は崇高な目的があるのに。
――――今更ではあるが、本日、俺は、奴隷を買いにきていた。
先ほど口が滑ってしまったように、男が奴隷を買う一番の理由はエロ目的だろうが、今回は違う。
ピロートークを楽しみたいなら娼館巡りをすればいい話だし、それだけを目的に一生面倒見るのもナンセンス。
成金な俺にとって性奴隷は、さほど価値がない。
ならば、なぜ奴隷を購入したいのかというと、むろん道楽の一環に決まっている。
今のところ、俺にとっての道楽は、女、睡眠、料理。
人の三大欲求と同じなのが情けないが、この中で一番ままならないのは、料理。
そう、この世界の料理にほとほと愛想が尽きた俺は、ついに料理の開発に踏み切ることにしたのである。
これまで異世界特有のスペシャル料理の存在を信じ、主要な都市を全て探し回ったのに、まともな料理を出す店とは出逢えなかった。
成り行きでサポートしている料理人も居るが、期待はできるものの自主性に任せているので、いつ完成品にお目にかかれるか分からない。
複製魔法で日本の料理をいくらでも量産できるが、それも飽きてきた。
俺は、この地で作られた、本物の料理が食べたいのだ。
そこで考えついた秘策が、自分の手で料理人を育成してレシピを作るプロジェクト。
俺自身に料理の知識は無いのだが、無駄に完成された魔法や有り余る資金を使えばどうにかなるはず。
しかし、料理への興味が薄いこの世界では、料理人を募集しても集まらないのは目に見えている。
ならば、意思疎通が容易で、かつ料理のスキルを持つ者に頼めばいい。
試行錯誤の果てに辿り着いた秘策が、この「料理人が居ないのなら料理スキルを持っている奴隷を購入して自分好みの料理人にしてしまえばいいじゃないプロジェクト」なのだ。
だが、全ての事象に利点と欠点が内在しているように、奴隷の運用にも大きな課題がある。
それは、モチベーションの低さ。
主人の命令は絶対であり、奴隷は逆らえないが、それでも心の内までは強制できない。
どれほど才能があっても、嫌々でやっていてはクオリティが落ちてしまう。
真の料理とは、「お・も・て・な・し」 の心があってこそ。
心のない料理は、たとえどんなに温かくとも冷凍食品にも劣る。
この課題を解決するには、お得意のご褒美作戦で乗り切るしかない。
奴隷に褒美とは変な話かもしれないが、料理の完成度を上げるためには是非に及ばず。
奴隷の購入はあくまで手段であり、目的は完璧なレシピ作りなのだ。
このため、本日の奴隷購入は才能の選別だけでなく、いかに相手のモチベーションを上げるかが鍵となるだろう。
料理への情熱を伝え、相手にやる気を出してもらうため、今日の俺はテンションあげあげの熱血スカウトマンになるしかない。
――――この一大プロジェクト、必ず成功させてみせる!
「旦那、一言に若い女といっても幅が広すぎやすぜ。もう少し絞り込んでもらえると、こちらとしても用意しやすいですが?」
「うむ、それもそうだな……」
回想に入り込んでしまい、訂正する機会を失ってしまった。
若い女性という条件は言い間違いなのだが、男性に料理を教えても楽しくない、むしろ苦痛でしかない。
長い付き合いになるかもしれないので、やはり少女であることが望ましい。
若い子の方が学習能力もあるしな、うんうん。
他の必須条件は、もちろん料理スキル。
しかし、胡散臭い相手に料理スキルが目的だと知られ、弱みを握られるのは危険だ。
ならば、やはり条件は――――。
「いや、やはり若い女性が唯一にして最大の条件だ。十代の女性全員と面接できるよう準備してくれ」
「へえ、うちはお客様の要望には最大限に応える所存なんでそれでも構いやせんが、けっこうな数になりやすぜ?」
「問題ない。一目見れば済む話だ。長い廊下にでもずらっと並ばせてくれれば、それでいい」
鑑定アイテムを使って料理スキルの有無を確認するだけだから、それで十分。
「分かりやした。準備してくるので少々お待ちください、旦那っ」
◇ ◇ ◇
準備が終わるまで、待合室で時間を潰すことにした。
風俗店で風俗嬢の準備が終わるまで待たされている時のような居心地の悪さを感じる。
向かいの席にご同輩が居ないのが救いだ。
待合室で鉢合わせすると、低俗なもう一人の自分と合わせ鏡しているような気まずさがある。
それが醜男ならまだいいが、若くてお洒落なイケメンが多かったりするし。
お前ら風俗なんて来ないでナンパしろよっ、と思わずにはいられない。
イケメンが風俗なんかに満足して子作りしないから少子化が進んで年金が危うくなっているんだぞっ。
異世界に来てしまった俺にはもう関係ない話だが、それはそれで税金の払い損になってしまう。
だから最初から払いたくなかったのだ。
どうせ地球に残ったままでも、糖尿病予備軍の俺は長生きできなかったはずだから、年金なんて意味が無かったのだっ。
いかんいかん、段々と腹が立ってきた。
おい、早くしてくれ、お客様は気が短いんだぞっ。
……落ち着け落ち着け。
日本でサラリーマンしてた頃は考えもしなかったイベント――――奴隷の購入を直前にし緊張しているようだ。
こんな時は、幸せな未来を思い浮かべて心を静めよう。
今回の目的は料理のレシピ作りだが、異世界料理を堪能するためには、ただ作って食べるだけでは物足りない。
最高の食事には、雰囲気作りも不可欠。
美味しい料理を提供する「場」が必要なのだ。
夜間の場は、自作している「創作料理店ヨイガラス」でも一応満足できる。
不足しているのは、昼の場。
具体的には、「お洒落なカフェ」でランチを楽しみたい。
食への興味が薄く、ケーキやコーヒーさえろくに存在しないこの世界には、当然のようにカフェも無い。
カフェには若者や女性がお似合いだと承知しているが、こんなおっさんにも羨望がある。
昼下がりの静かなカフェで本を読みながら、大して味が分からないコーヒーを片手に、カロリーが高いカルボナーラやシロノワールをフォークでつついたりして、休日を優雅に過ごしたい。
俺が理想とするダンディなおっさん像が、そこにある。
うん、そうだ、レシピが集まったらカフェを作ろうっ。
一等地に建っているのに、メニューが高すぎて客が少ないカフェを作ろう!
◇ ◇ ◇
「――――お待たせしやした、旦那。さあさあ、こちらへどうぞ」
俺の祈りが通じたのか、さほど時間をかけずに店長は戻ってきた。
幸せな将来設計がちょうどまとまったところなのでタイミングがいい。
どうやら本当にデキる店長らしい。
だったら、その胡散臭さもどうにかしろよ。
「こちらです、旦那。どうぞ存分にお確かめくだせえ」
案内された場所は大広間だった。
大きな部屋の長い壁に沿って、うら若き少女達が立ち並んでいる。
椅子に座っている者も数人居るが、その総数、ざっと百人。
質より量の看板に偽りなし、といったところか。
選り取り見取りな量も、けっこう可愛い子が多い質も、見やすい配置も、申し分ない。
たった一つ、問題があるとすれば……。
「なんで全員、素っ裸なんだよぉぉぉーっ!?」
俺は、ありったけの声を上げた。
突然の大声に少女達がびっくりしているが、許してほしい。
俺の命令でこんなパラダイス……、もとい惨状になったのではないと知ってほしいから叫んでいるのだ。
「へっ? 裸のどこに問題があるんですかい、旦那?」
「問題ありありだろうがよぉぉぉーっ!?」
俺の品性が疑われるだろうがよぉぉぉ。
「でも、男が若い女を買う場合は、これが普通ですぜ、旦那」
「もしそうだとしても、俺は指示してないだろうがよぉぉぉーっ!?」
「お客様が口にせずとも、全ての要望に応えるのがあっしの仕事でごぜえやす」
「気が利きすぎても困るんだよぉぉぉーっ!!」
この店長、予想より遙かに優秀すぎる。
どうやら、俺の潜在的な願望を嗅ぎつけたらしい。
「…………」
はなはだ不本意ではあるが、こうなってしまっては仕方ない。
今更服を着てもらっても、一度全裸を晒した事実に変わりはない。
毎度の事らしいので少女達も慣れているかと思いきや、恥ずかしさを隠しきれていない。
ごめんな。
こんなつもりじゃなかったんだ。
恥辱を与えるつもりなんてなかったんだ。
だから、俺を恨まないでおくれ。
眼福眼福。
「旦那、あまり長引くと風邪を引いちまう奴も出てくるんで、手早くお願いしやす」
「「「――――」」」
俺は部屋の中央に立っているので、まさに四方八方から少女達の視線が突き刺さる。
ち、違うんだっ。
そんな目で見ないでくれ。
わざと長引かせているわけじゃないんだっ。
そんな変態を見る目で見ないでくれっ。
「……もういい。全員、自分の部屋に戻してくれ」
「へっ? そりゃあ先ほどは急かせましたが、間近で一人一人見る時間くらいは取れやすぜ?」
「不要だ。知りたい情報は、すべて把握した」
俺の視力なら、離れた状態でも部屋の中央でくるっと一回転するだけで十分。
レベルで向上した視力と記憶力は伊達ではない。
「条件に合った子は二人。個別に面談したいから、部屋を用意してくれ」
「――――へいっ、お任せくださいっ」
無駄に察しがいい店長は、俺が鑑定アイテムを使って判別したのだと気づいたようだ。
少女の容姿が目的ではないのだと、ようやく理解してくれたか。
まったく、こんなことになるのなら、初めからスキルが目的だと言っておけばよかったな。
「「「…………」」」
ゾロゾロと訝しげな表情で少女達が退室していく。
裸体をさらけ出したのに、ろくに見もせず引き下げさせるとは何様だ、といった怒りを浮かべる少女も少なくない。
先ほどは恥ずかしがっていたくせに、女心は複雑である。
君達の神々しい姿は俺の心の中で永遠に保存しておくから許しておくれ。
さてさて、申し訳ないが条件に合った少女は、百人のうちたった二人。
料理スキルを持つだけならもっと多かったのだが、俺が目指す究極で至高な異世界料理を完成させるためには、ランク6以上の高水準が必須。
もともと料理スキルの所持者は少ないから、二人とはいえ高ランク持ちと出会えたのは僥倖だろう。
悔しいことにあの店長、本当にいい仕事をしやがる。
◇ ◇ ◇
「部屋が準備できやしたぜ、旦那」
今度は前回以上に早く整ったようだ。
部屋を一つ空けるだけだから、当然だろう。
「旦那はどんな形の面談がお望みで?」
「俺と彼女の二人っきりで話がしたい。部屋の外から聞いたり覗いたりするのは禁止だ」
「そいつはまた……」
「彼女達の率直な意向を知りたい。その場に店の者が居ては、萎縮して会話にならない」
「そこまでして商品の気持ちを確かめたいだなんて、旦那はやっぱり変わってやすねぇ」
「俺は優しいご主人様をモットーとしているんだよ」
この場に居ないはずの三馬鹿から抗議の声が聞こえた気がする。
安心しろ、有能な奴隷少女が手に入ったら、お前らの出番は益々なくなるぞ。
「それで、最初は誰を連れてくればいいんですかい?」
「そうだな――――」
鑑定アイテムでチェックしていた名前を告げる。
彼女の潜在スキルが一番高かったので、優先度も一番だ。
「へえ、分かりやした。……旦那には愚問かと思いやすが、念のため確認させてください。本当に、あの娘をご指名なんですね?」
「ああ、間違いない」
プロフェッショナルな店長が聞き直すのも致し方ない。
俺が指名した少女は、他の子とは少し違っていて――――。
「……連れてきやしたぜ、旦那」
そう言って現れたのは、店長と従業員の男。
そして、その従業員にお姫様抱っこされた少女だった。