変則ない出会い
駄文ですが宜しくお願いします
岩で形成された人形、ゴーレムの前に透き通るような短い銀髪の少女は腰を抜かしていた。
ゴーレムの体の接続部分からシューシューと、水蒸気が溢れる音は、少女の姿を嘲笑うかのようだ。
いや、それだけではないかもしれない。少女の周りは一面の紅い水溜まり――いや、面積だけを考えると池ぐらいある。
少女手から伝わる紅い水は温かく、滑りがあるのだが、それすら、もう、感じることができず、ただ、目の前の死を受け入れるしかなかった。
少女は腰のホルダーに銅剣を吊るしている。本来ならそれを構えて、勇ましく突撃し、ゴーレムの核を撃たないといけない。
とはいえ、ゴーレムの核は厚い岩石に覆われているから、一度の攻撃では通らないし、何より――銅剣を失うのが嫌だった。
池を形成した人間たちは自分よりも優秀な武器でゴーレムを撃ちに走った。
僅に、動きを封じる両足、両手の切断へと。
見惚れるほどの華麗な連携に心を奪われた少女。
そして、無意味と攻撃を弾き返し、鉄や青銅を砕く体。
一瞬にして手段を無くしたギルドは心を虚にしたまま、落石を受けいれるしかなかった。
ギルドの残りが彼女だけになったのは、一分もかからなかった。
動かず、仲間の最後を見届けた少女は素人の自分が勝てるわけない、剣に選ばれたばかりで乗り気でもない愚か者が勝てるわけない。
自らに停止の念をかけて、死刑執行を待つしかなかった。ゴーレムの水蒸気を噴く音が距離を積めるたびに速くなってる気がした。殺すことに興奮を覚えたのかなと現実逃避。
裏腹にその距離を積める速度は酷く遅く感じられた。殺すのなら早くしろ、恐怖から早く解放されたい、死ぬのは嫌だ。少女の心は渦を巻き始める。
――――死ぬのが怖い?……馬鹿いってるなぁ、アタシ。『最初の審判』から絶対に進みたくない道へと、運ばれたのを嫌悪して、死にたくなったのに。いざ、死地に立つとこれか……。
目尻が痛くなって雨粒を我慢させるのを止めた。
顔を伝う豪雨となり、自分の洋服を濡らしていく。
自分は死にたいのか、死にたくないのかどちらなのか。泣くのだから死にたくないのだろう。
けれど………。自問自答をすることには少女に向けて岩石が降り下ろされた。
「ヤレヤレ、RPGのアルアル場面だな」
気だるい、やる気のない、嘲笑する声が聴こえた。
少女には、それが救いの英雄様が現れたと悟ることができてしまう。
目を開けると地面より生える氷の柱が、ゴーレムの腕を呑み込み封じている。
強固なものなのか、もがいても氷はヒシヒシ音を立ててるだけで、溢れることもヒビを入れることすらできない。
喉を鳴らして威嚇を始める。
少女とゴーレムの間に灰色の軽装備で槍を背負う少年が入った。
殺気を奮い立たせて氷を退けようと必死になり始める人形。バキバキ!と更に氷の面積が広がっていく。ゴーレムは体内から噴射する蒸気を使い氷を溶かすことにし、岩を限界まで赤くさせて蒸気を活発化する。
氷の侵略は止まるどころか、促進されて体の節に固まり蒸気すら逃がすのを拒む。
「底無し沼の原理と一緒なんだよ。もがけばもがくほど、氷は蝕み対象の生き物を溺死させる。最も、お前に溺死の概念は無いから封印って形になるな」
そんことにしないと続けて背中の槍を構えると、胸に向かって疾走し貫く。
空洞ができると、中から大量の水が壊れた下水管の如く溢れる。
ゴーレムだったものは一秒もかからないで崩れて水を濁していく。
少女は、唖然としていた。グループでかかった怪物を一人で倒した驚愕、或いは命が助かった安堵によるもの。両方だろうと決めて、少女は前に倒れた。
少年は完全な消滅を確認していたため、少女の一連をついでに見ていた。
近寄って額や頬に手の甲を当てる。
息はある、熱らしきものも出ていない。
結論付けると、興味を無くしたみたいに辺りの幹や雑草などを観察する。
飛び散った赤の塊、雑草をかけると肉片もある。
五体満足にない体もある。
柔らかい土山を掘り起こすと、二つに折れた杖や指輪のついた指がある。
「……ギルドを組んで探索、狩猟、鍛練をしていたところで遭遇。同種のモンスターと判断して交戦して、見習い剣士だけが残った……そんなところか?」
気絶を継続している少女を見下ろしながら呟いた。