39.
もそりと目を開けた。薄暗いのはカーテンが厚いせいで、だから日はもう高いはずだって体が教えてくれる。体内時計、普通に便利。
ふぁ、と欠伸してベッドから降りる。お昼寝から起きてすぐにご飯食べて、またすぐに寝るとかナニソレできねぇ。って思ってたのに。結局はあっという間にまた眠ってしまったようだった。なし崩しに自分の部屋で起きてるところを見ると、どうにもまたミハルの膝の上で寝ちゃったらしい。ありえねぇ。他人がたくさんいるところで、男の人しかいないようなところで落ちちゃうとか。
一昨日の私に言ったら鼻を鳴らして笑うレベル。
パジャマから部屋着に着替えて洗面所へ。パジャマはちゃんと畳んで脱衣所に戻すよ。風呂上りの問題があるから…………うん? こういう時って普通、みんなはどうしてるの? お風呂から上がって部屋着に着替えて、んで眠る前にパジャマなの? 一日、何回着替えるの? ちなみに私は、部屋着とパジャマを兼任させるタイプ。
誰に会うこともなく中庭を横目で見ながら自室へ戻る。居間を通らなくても身仕舞ができるのってうれしいよね。私の好み。みんなにおはようの挨拶もしたいけど、髪の跳ねを直すのが先だ。どうやったら乾いた髪で眠ってここまで天を向くのか、もうほんと、私の毛根はどこを目指して生えているのか問いただしたい。…………ああ、問いただしたいとも。
鼻息が荒くなったのは、部屋にさっきはいなかったミハルがいたせいでもある。ど、どこからいつからいたんですか姉さんや。あ、うわ、しかもベッドメイクとカーテンと空気の入れ替えまで!? どうしよう、この保護者、お母さんとしても優秀だよ工場長。
「お、おはようミハル」
「昼もとうに過ぎたがな。カナ。お前には疲れがたまってるだろうと、ケルンが」
「う、そ、そうなんだ。……寝坊しても怒られないのか。こりゃ前途多難だ」
「ん? 何がだ」
不思議そうに聞いてくるミハルが不思議ですよ。あのね、私は何回も言ってるように、成 人 女 性 ! なの。いい年してるの。ケツを拭けない子に育てられてないの。
「……カナ。言いたいことがあるなら、顔よりも先に言葉にしないと。言いたいことが表情だけでだだ漏れてるぞ」
「えっ、嘘っ! あ、ごめ、ごめんなさっ」
「私は嘘は言わんが、それは人間の女性の口癖でもあるんだろうな。良く聞いた。というか、謝るくらいなら考えなければ……いや、表に出さなければ……あ、いや」
「……止めてくれる? ミハル。遠まわしに単純すぎんだろボケって聞こえる気がするんだけど」
遠まわしですらありませんでしたよ。がつっと正面直球ど真ん中で来ましたよ。いいけど。
会話している間にミハルが私の後ろに回り頭を撫でた。するりと指通しされるけど、私が洗面所で同じことしたときは通らなかったから。どうして引っ掛かりもせずに……あぁ、うん。寝癖の件はそれで終了したようです。見える範囲で髪の毛が落ち着いてる。なんでだ。
…………今までの人生の重さや、手間を、真剣に考えさせられた一瞬でしたよ。神様。
ああほんと。神様。
ミハルにしてもらったことにはお礼しか言えない。だけどなんだかもやもやする。
リビングに移動する。おはよう、を飲みこんで、時間がわからないから、こんにちはの単語をさらに飲み込む。
ごめんね、寝坊して。の一言に収まったのは我ながら秀逸だったのに、保護者達にはご不満のようだ。
ありがとう、と言い換えると美しい笑みが人数分もらえた。あ、そう。……そう。
どこまでも甘い人たちだなぁ。溺愛ってレベルですらなくねぇ? だだ甘? よくないレベルの甘やかし? っつか、今何時? お腹が空いた。
「時計はどこかな」
「ふむ。……そういえば、無いな」
「カナ? お腹が空いてるんだろうけど、あとちょっと待てる? 今夜は少しだけ張り切ったんだよね」
ブックロゥの言葉に、目が輝くのがわかった。ごちそう?! 美味しいのいっぱいって言った? 今!!
「ブックロゥの腕前はすごいぞ、カナ? お前が鍵であると自覚できた祝いも兼ねることにするかって、午前中に買い出しに行ったんだ」
「私たちは料理の面ではお手伝いができませんので、その分は飾りつけで。見ますか? 玄関に置いてあるんですが」
トールの言葉にワクワクして玄関のドアを開けてもらう。…………うん? 今夜? 午前が終わってるのは知ってるけど、買い出しに行ってから飾り付けまでできる時間なの? わりと真面目に、今は何時? …………や、いや、それより。
「トール? これ、……これ」
「最初の施錠が食虫花のタイプでしたから。今夜のテーマは花です」
「や、花はうれしいけどね? なんでリアルにあの色で揃えちゃったの?! あんなに怖い思いしたのに追い打ち掛けられてる?!」
「カナ? トールのアレンジが大きすぎるっていう意味か? まあな、確かにデカいよな。食卓に載るかどうか」
「そこも違うから、ライ!! ……っていうかお兄さんは何を持ってるの。それ、もしかして……食器に使うの?」
「あぁ? カトラリーリボンに細工とかしないのか? カナのところでは」
「カトラリーリボン。……うん。箸置きみたいな感覚なんだね、たぶんね。や、それならあるよ。リボン止めの花の形も、まぁ私は理解した。だけど、だけどさぁ!」
ほんと、チートの人たちってどこかずれてるんだ。私なら当面、花もネギ坊主もあの色も見たくないけど。
「ナーナ? ほら、見てください。乾杯用のお酒があの花と同じ色なんです」
「トラウマ的確に抉りすぎだから! フラグの回収が早すぎるよ?!」
なんつったっけか。どんでん? ちがうな、てんどん? コントとかでお約束の展開を見せるのって、あれはなんて単語だっけ。
突っ込み疲れてソファへ戻ると、当たり前のようにぬいぐるみにされた。……わ、私じゃなかったらなぁ。微笑ましいとこなんだけどなぁ。……外見がなぁ!! もっとこう、絵面的にね!
ケルンが人型になって、ブックロゥが次々に仕上げる料理を食卓へと運ぶ。笑いながらライとトールがお花とかカトラリーをセッティングし始めた。お手伝いするよと立ち上がろうとして、「お」の一言で終わる羽目になる。ぬいぐるみって、そうだよね、普通は抱きついて持つよね。確かにね。
無言のまま、回され続けてるお腹のミハルの腕をタップして、無視された。…………はいはい。大人しくしてます。
「ナーナ? ああ、母上が邪魔ですね? 仕方がないのでナーナからはっきりとそう言ってあげてください。嫌いになるとでも言えば、効果はてきめんですよ?」
「……ユーリ。お前、つがいにそんなことを言われても大丈夫なのか? 我は忠告するが、ミハルに楯突くと痛い目に合わされるぞ?」
「バルト。私はカナに会えて幸せの絶頂なんだ。多少の舌禍は見逃すとも。多少なら、な」
うっとりしたようなミハルの言葉の抑揚が怖い。言いざまに私のこめかみにキスしてくる態度、絶対にユーリに向けての挑発だよコレ。にっこりしてる人外親子め。どうして人を抱っこしたままそんな会話しちゃうかな、アンタたち。
「よしよし、お腹が空いてるから刺々しいんだよね? 料理もできたし、乾杯しよう」
遠い目をした私を思いやってくれたのか、ブックロゥが『れっつぱーりぃ!』宣言をした。わーい、と無邪気な振りで便乗してミハルの膝から降りる。手を洗って、図々しくも一番乗りで席を取った。中庭を見られる位置。ここ好き。
「まずは乾杯だな。誰に仕切られても不愉快なのでカナ、頼む」
「バルト。龍のしきたりにも乾杯はあるの? 仕切りも?」
テンションが上がっていく。湯気を立ててるごはん。美味しそうなごはん。色がたくさんで、ちょっとずつ取り分けやすいようにしてる奴もあったりして、とにかく超上物、幸せなごはん。
「えっとー、私が鍵でしたー。頑張るー。ごはんー。かんぱーい!!」
きちんとした挨拶ができなくて、情けなくもそうやってごまかす。これからすごく迷惑をかけるから、とかは言い訳だ。年上を差し置いての正式な例を取ったことがないから恥ずかしいとかも二の次。ああもう私、こんな時の礼儀も学習しないと。
若かろうが年寄だろうが、照れちゃって、まともなこと出来ないのが一番恥ずかしいってお母さんがいつも言ってたし。こういうことか。
ふふ、と年長者の余裕でみんなが笑うのが情けないやらありがたいやら。手に持ったグラスを傾けて……思い直して正解でしたよ。舐めてわかった。なんだこのアルコール度数。乾杯用じゃねぇだろおい。
「……よかった。本当に、学習能力はあるようですね」
「渡されたものを、味見もせずに一気に煽りかけてたぞ?」
「まぁまぁ。異層の常識を疑ってくれるようになったんだから喜ばしいところでしょ。微笑ましいし」
兄さんたちの失礼発言はきっちりと心に叩き込んどく。この対応、間違ってないんだ。常識を疑うとか、辛いとこに来ちゃったなあ。
唇にアルコールのしずくを付けては舐めとる。おっそろしく行儀の悪い飲み方だってすぐに気が付いて止めたけど、仕方ないんでそのあとは口に含んでは飲み込む、ということを繰り返してみた。ご飯は保護者、というかユーリが実に熱心に取り分けてくれたので、私のお皿は常にちょうどいい状態を保ち続けてる。すげぇ。他人の取り分けが完璧にできる人間を見たことがありませんよ大統領。パーティー料理なのに熱いものが熱いままで食べられるとか。ブラボーブラボー。この酒うまいな!!
「カナ? 飲みすぎではないのか?」
「んー。ケルン、このお酒すごいんだよ。苦いわけでも変な味がするわけでもないのに、後を引くの。口から無くなると寂しくなるんだよ!」
「……カーナ? そこまでにしておいたほうがよくはないか? 酒がいいから悪酔いはしまいが……お前は酒に強い方か?」
「おさけ? つよい? ん。んーとね」
ぶっちゃけ、他人と飲むのが初めてなんだよね、アルコール。と言った直後に手の中のグラスが消えた。おぉう? どんなマジック?
「カナは甘いもの好き? ケーキとかは?」
「ぶっくろぅ。どうしてお酒がなくなっちゃったの? ケーキ?」
「……遅かったようですね。顔色が今になって真っ赤になってきましたが、ナーナ」
「ユーリ? 私の顔、赤くなっちゃってる? やだ恥ずかしい……よりも先にトール。私、トールの前にある赤と緑のなにかが食べたいです。美味しいは正義だよね。お酒って美味しいんだね」
「…………カナ。いいか。金輪際、俺たちのいないところで飲むなよ。いいか?」
「らーい? なに言ってるの? お兄さんたちはお役目が終わったらいなくなるでしょ? 金輪際とか、なーいよ?」
酔っぱらってるって、指摘された時から人は酔っ払いになるんだろうか。ふわふわした気分のままライに反論すると息を飲まれましたが。あり?
「では、ナーナ。僕となら約束できますか?」
「ゆーりと? んっんー。ずっと一緒にいるんだよね? ミハルと、だから、バルトと。私と」
「はい。ですから」
「そうだねぇ。そう言ってたもんねぇ。だからって約束はしないけどね!」
守れるかわからない約束はしない主義です。きりっ。
約束ってどういうものだか知ってる? 基本的にこの先ずっと守るものなんだよ。だから、簡単にはその単語は口にできないよ。
すぅっと冷えた目になっていくユーリに必死で、そう言い募る。
守りたくても守れないかもしれないじゃん。お酒じゃなくてジュースだって騙されて飲んじゃうことだって、無いとは言えないでしょう? 度数が低かったら、お祝いの席だったら。ifなんて無数にある。いつまで続くのかわかんないってのが『約束』なんだから、なおさら。
「……ふむ。これだけ約束を嫌がるということは、ひるがえって嘘も嫌うのか?」
「ケルン? あれ? そうなる? ……ね」
知らなかった。おっと。
お父さんの家系からずっと言い聞かされてきた言霊信仰は、思ってたよりずっと奥、私の根っこにきっちりと根付いていたようですよ神官長。
「ナーナ? それで? 僕たちとこの先も同じ時間を過ごしてくれることは約束してもらえるんですよね?」
「ん。うん。そこは納得してるよ」
こくりと躊躇いなく頷く。すりすりと後頭部をミハルに擦り付けると、ミハルの雰囲気は甘くなる。ユーリがほぅって息を吐いた。首筋を舐められる感覚。ミ……ミハルだろうな。どうなんだろう、この手のグルーミングっていうかスキンシップまで慣れてた方がいいんだろうか。
「では、今後はできるだけ酒精を口にしないか、僕たちだけ……ああ、いえ。そうですよね。ナーナをこれ以上の人目に触れさせなければ懸念も解決します。ごめんなさい、ナーナ。僕、少し焦ってたみたいで」
「すごすぎる結論に至っちゃってるよ、ユーリ! 極論すぎだよ?!」
「……ふぅん。でも、そんなに極端ってわけでもないんじゃない? カナ。カナったら危なっかしすぎて、時々いらっときちゃうし」
いらっと、の単語が聞こえたと同時、私の耳から突き刺さるように、きぃぃぃぃんって音がする。耳鳴りだ。精神的なもので、だから、だから。
「……あ、ごめ、あの、いらっとさせてごめんなさっ、えっとその」
大人の男の人を苛々させてしまった、と言われて初めて気が付いた私はおたおたと腕を振りまわす。一気にアルコールもほろ酔いも抜けた。まずい、と、面倒、と、どうやってできるだけ穏便に済ませるか、の単語が視界まで埋め尽くしそうだ。
意識するよりも早くに口から謝罪が飛び出す。
「ごめんなさいっ、あの、えっと、怒らせたって、私のどこが悪かったのか教えて……や、イヤなら教えてくれなくてもいいし、そんな、関わるのが不愉快なら、っ、ちがっ、あのっ、あの、ほんとにゴメンなさい」
ああしまった、私の焦り方が普通じゃなかったみたいだ。テンパって謝られてる当人、ブックロゥですらぽかんとしてる。バルトの驚いた顔ってレアかも。うん、ンなこと、どうでもいいよ。落ち着け、私。落ち着かないと。
「えっと、苛々させるなら、私がどこかに行く。いい? 消えていい?」
「…………ダメに決まってるだろうカーナ」
ミハルの優しい声と手が、私の耳と顔を覆う。その下で目を見開いてるうちにすぐに唇が落ちてきた。ゆっくりと強引にミハルに向けて私の顔の向きを修正される。何度も聞こえるリップ音が少しずつ私を脱力させていく。口の端にまで落とされたキスにびびったことも大きい。や、それはさすがに……っ。
「……ゴメンね、カナ。苛々するのは本当だけど、それはまったくカナの思ってる意味と違うよ?」
「カナ? こいつらの機嫌に、お前の責任は存在しえないだろうに。いい年した男の心持ちなんぞ、せせら笑うくらいでちょうどいいんだからな?」
「ええ。ライの言ってることはそれこそ極端ですけどね。カナ? 大丈夫ですよ? 誰もあなたに自分の情緒の落としどころなんて求めません」
「ナーナ」
「カナ」
ユーリとケルンにまで優しく名前を呼ばれてしまった。もう、どこまでこの人たちは私を甘やかすんだろう。これじゃダメになる。私が、ダメな子になる。
頭の中の警告音が鳴りやまない。どうやらブックロゥもみんなも、私が滑らせた舌には怒ってないようだけど、でも苛ってしたって言ってた。情緒の落としどころにしないって教えてくれたけど、『私が彼らの感情を逆なでした』ことは否定されてない。
なのに、それでも彼らは私を甘やかしてくる。
反省のしどころがわかんない。どこだ。どこで怒らせたの? わかんなくて私が苛々しそう。怖い。だって、ダメだから、そんなの。
同じ失敗を二度もするのは、すごく、ダメな子だ。
「ダメな子でも、私はお前が好きだ。カナ」
「ナーナがどれだけ自分を卑下されても、僕たちは僕たちの理屈でナーナを愛します。感情を揺らせるのは、とても得難い経験なんです。どうかナーナ、ナーナを僕から取り上げないでください」
ユーリはとうとう、ぎゅっとしてるままの私の手を持ち上げてそこに、……うえぇぇぇっっ?! なに、なにしてっっ!
「……首から上でなくとも唇は寄せられないのか。そうか」
「ライ? ケルンが一度、カナにやりましたよね? つまり獣になれば」
「あ、なるほどね。無害と無邪気を装えば少なくともカナからは否定されないのか」
「代わりに僕と母上から飛ばされる……痛いです、母上、ケルン。すいませんが脇と脛から力を外してください」
「っあー、……あー、その、カナ? 風呂、そう、風呂にでも入るか?」
ちゅ、チューされましたよ妙齢の男の子に!! 手、手といえどもくち、唇の感触がっっ、しましたよっっ!! しかもなんかこう、私が彼らの感情の邪魔になってもいいって、そんなことまで言われたっぽくない? なに? 私、そろそろ死ぬの? や、違う、そろそろ呼び出し返されるの?
「…………お、風呂」
風呂、なら、入る。と続くもんだよね。日本人なら。私はよろよろと立ち上がって、ミハルの肩に手を置いた。歩くよ、と宣言したつもりだ。抱き上げられる前に。
「カナ? 一緒に入ろう」
「…………僕、今ほど母上が妬ましかったことはありません」
「僕もだよ風龍。龍をねたむなんて分不相応なこと、できるもんなんだね」
いつの間にかテーブルの上に避難させられてたマグからお茶を飲む。飲み下すのには気合がいった。なるたけ自然にみんなに笑いかけつつミハルの手を引く。
お風呂、入ろう。ミハル。
ん。いいよね、大丈夫だよね。ミハルはきっと、高温のお風呂に長くは耐えきれないはず。すぐに逆上せちゃうから、一緒に入ってる間は泣くの、我慢できる。
男の人を苛々させたこと、なのに当人含めて誰からも怒られなかったこと。それから考え付くのは、たとえ何かを『やらかして』しまっててもたぶん、このメンバーなら私を躾もせずに許容してくれるだろうこと。
悪い意味でね。
そうして、それとは別に、そうだよ、召喚されたんなら、呼び出したときの私の情報はまだ向こうが持ってるもんなんじゃないの? こうやって逃げて隠れてたとしても、王様から強引に呼び返しとかも、されちゃう可能性があるっていうパターンはない?
ちゅーされた。男の子に、こんな距離、許してた。
頭の中はぐるぐると忙しい。ぶっちゃけ許容範囲は超えた気がする。ぶっつりショート。
何がショックなのかどれが引き金なのかわかんないけど、泣きたい。いっぱい大声を上げて、泣きわめきたい。
みんなの前でなんて、できもしないくせに。
すぅって真顔になったミハルもお兄さんたちにも、ユーリにも。私の考えてることは筒抜けらしい。でもいやだ、今は慰められたくない。
私は、意識して早足でミハルを引き、脱衣所へと急いだ。
※読み返すと、要ちゃんの混乱が強すぎて少しわかりづらいかも、です。
申し訳ないです。




