一話「緋色の中で」
赤桜と申します。
処女作です。
よろしくお願いします。(なにをだ・・・)
はあっはあっ
「やめてっ」
必死に走る。
「こっちにこないでっ」
赤い炎がユラユラ揺れて、少女を飲み込もうとする。
「いやああああああああああああああああああああああああああああああ!」
彼女の目には迫り狂う炎が、まるで怪物のようにうつった。
ただ、ただ怖かった。
それが彼女の記録。彼女に課せられた生きる使命。
プロローグ
「あるーぅ日っ!森の中っ!くまさんがっ!食べちゃったっ!」
少年は歌う、ただひたすら歌い続ける。
「何を食べちゃったのっ?って?たぶん魚だよ~ぉ!」
どうやら終わったらしい。
だが、まだ続きがあるよと言わんばかりに視線を送ってくる。
「聞きたくない」
すぐさま少年の隣にいた少女が否定する。
「しょぼーん・・・」
少年はそう呟き、目にあふれんばかりの涙を溜める。
「ふんっ」
愛想もなく少女はそっぽを向く。
「しょぼぼぼぼーん・・・」
少年はさらに落ち込んだらしい。
「ほら、着いたぞ」
一際狭い一本道を抜けると、見晴らしのよい小高い丘がある。
草原をなでるように吹く風は、草花を励ましているかのように感じられる。
少年は丘に駈け上がると絶叫した。
「うわああっ!見てよ、すっごく綺麗だよ!」
はしゃぐその様は本当に子供だ。
「知ってる」
反対に少女は対応が大人っぽい。
「はやくはやく!ほら、ミサ!」
少年が少女、いやミサに手をさし出す。
「仕方ないな・・・」
尖っていたミサも気を許したようだ。
「やっぱり綺麗だな・・・」
何度も見ているミサが感嘆をもらすほどの美しさらしい。
その証拠にかすか笑顔に笑っている。
丘の上から見える景色は、いろとりどりのお花畑。だけでなく賑わった町をも見渡せる。
売り買いする人々の姿や子供達の笑顔、人々だけでなくこの町も笑っているようだ。
そんなこの町の名前はゲルダノ町という。
「僕、この町を見ていると元気がもらえる気がするよ!」
満面な笑みを浮かべた少年が言う。
「あっそ」
吐き捨てるようにミサが返す。
「だいたいアンタは・・・」
ミサが文句を言おうとすると・・・
「アンタじゃないっ」
突然少年が叫んだ。さっきまでの笑顔は消えて、不気味な表情をしている。
「あ、ああ・・・。えっと、コナツ・・・」
訂正すると、
「うん!で何?」
今までのことがなかったように笑顔になった。
「い、いや・・・、なんでも・・・ない」
がばッ!
「はあはあ・・・」
息が荒い。
「な、んだ・・・。なんだ今のは・・・」
そう言ってあたりを見渡す。
「ゆ、夢か・・・」