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愛しの魔王様  作者: 紅虎
1/8

花嫁ですけど何か?1

少し年齢層高めの主人公となっております。ショタ・ショタコン要素あり。

苦手な方はお控え下さい。

 

 

 

 ――チッ――チチッ――

 

 

 

 

 軽やかな小鳥の囀りが朝の訪れを知らせる。

 朝霧も捌け、草木からは瑞々しい露の濃厚な香りが匂い立ち、清爽な空気がしっとりと肌を刺激する。

 しかし、朝の職務に向けて人々の動く気配が濃くなる中、ガラス一枚隔てた王宮の一室では淫靡な空気が蔓延していた。

 

 様々な意向を凝らして整えられた高級感漂わせる椅子に重なり合う二つの黒い影。

 大小大きさの違うそれらは向かい合うように身体を寄せ、クスクスと囁き合う。

 

 

「もぅ、ダメだよ。誰か来ちゃう・・・」

 

 

 子供御特有のソプラノボイスが身体に響き、淡い息遣いが捕らえていた捕食者の気分をより高揚させる。

 

 

「大丈夫よ。まだ来ないわ。それよりも・・・ね?」

 

「あっ、・・・折角服、着替えたのにぃ」

 

「乱れたならまた整えればいいわ」

 

「仕方ないなぁ。ちょっとだけ、だよ・・・?」

 

「ふふふ、ほら大きくお口あけて?」

 

 

 頬を染め潤んだ瞳で見上げる少年。

 恥ずかしがりながらも、言われた通りに小振りの口を大きく開け、唇から覗く真っ赤な舌がなんとも愛らしい。

 女は頬に添えていた手を下げ、そまま首筋を一撫でしまだまだ未発達の身体を伝いながらゆっくりと固く閉ざされた釦を外す。

 空いた手で小さな唇にそれを近づけ、



「はい、ルーあ~「失礼します。ルーファウス様、朝議のお時間が迫っております」ん」



 狙ってましたと言わんばかりに被さる第三者の声に思わず舌打ちをした。

 

 チッ今日も来たか。

 

 突然の訪問者によって、部屋に籠っていた甘ったるい空気が一気に拡散した。あーあ、私の憩いの一時が・・・

 ガックリと項垂れながら扉に目をやると其処には灰色の美女・・・じゃない。青鈍色のローブに身を包んだ、なんかもう色々神への冒涜としか思えない間違った容姿をした男が立っていた。

 

 出たな小姑!

 

 キッと目を吊り上げた私の威嚇もなんのその、男はワザとらしく溜息を吐き膝の上に乗っていた子供こと、愛しの旦那様を抱き下ろした。



「ちょっ、何すんのよ!」


 

 奪われた温もりに、手を伸ばし精一杯の不満をアピール。

 そんな私に苦笑しながらも、ルーは降ろされると手を引き寄せスプーンに乗っていたシリアルをパクリと咥え、モグモグと口を動かす姿はまさに小動物。

 ああ、幸せ!今日も一日ハッピーに過ごせるわ!


 

「いい加減朝食ぐらい普通にお取りになりませんか?」


「旦那様とイチャイチャして何が悪いんですかー」



 ブーブーとブー垂れる私。

 因みにこの旦那様って言うのは雇用関係上の呼び名ではない。

 れっきとした、夫・主人・ダーリン(ハァト)なのだ。

 10日前に式を挙げたばかりのラブラブ(死語?)な新婚生活を送っていると言うのに、何故か毎度毎度タイミング良く邪魔が入る。

 やれやれと灰色の侵入者改めゼノンは首を竦め、


 

「毎日飽きませんねぇ。」


「ええ、まだ結婚して日も浅いですから。(こっちとらまだ新婚なんだよ!蜜月の夫婦の邪魔すんな!)」


「それにしては随分と清い関係のようですが?」


「そんなことはございませんわ。夜は必ず共寝致してますから。(セクハラ反対!セクハラ反対!)」


「おや?もしかして御存知ないのですか?一緒に眠るだけでは御子は出来ませんよ?」


「勿論存じておりますわ。けれど今は陛下の負担になるような事は避けるべきかと思いまして(ノーマルからアブノーマル、男性向けから女性向けまで熟知してるっつーの!日本生まれのオタク舐めんなよ!)」


「そうですか。もし手解きを御求めでしたらいつでも私が御相手して差し上げますので、おっしゃって下さいね」


「まぁ・・・!(掘 ら れ ろ 受け顔!!)」



 OL時代に鍛えられた愛想笑いもいい加減疲れた。口の端がピクピクする。

 ってかゼノン相手に今更外面も何もないんだけどね。



「ゼノン、ナツに手出したらダメだよ。ナツは僕のなんだから」



 いつの間にか崩れた衣装を侍女のメアリーに整えてもらいながら、ルーは目線をこっちに向けて私とゼノンのやり取りを見て笑っている。

 あっ!それ私がやりたかったのに!!

 ゼノンは笑みを零しながら一礼して、言われるまま私から一歩下がり距離を置く。

 もうっルーに対してはイイ子ちゃんなんだから。



「ナツも、ゼノンに近づいちゃダメ」


「きゅん!」



 返事の代わりに口からトキメキが溢れてしまった。

 仕方ない、いつものことだ。

 ルーもそれを分かってか、楽しそうにクスクス笑っている。

 

 この笑顔がとってもキュートな麗しの少年こと、ルーファウス・ディラ・ヴァルネシア(通称ルー)は此処カルヴァルド国の王様だったりする。

 常に笑顔を絶やさない美少女かと思う面立ちに襟足の少し長い艶やかな黒髪、子供特有のクリッとした金色のお目めがなんとも愛らしいく、母性本能直撃。

 見た目は5歳児程度の姿なのに、これで私よりも年上とか驚きだ。

 そしてさっきから何度も言ってるが私の夫。

 これ重要。


 私の旦那様、なのだ。


 いやー自分でもこんな(見た目の)小さな子に手を出すとは思わなかった。

 世の中何が起こるか分からない。

 そして、可愛いものが大好きな私はこの可愛いがデフォの夫に暴走する事もしばしば。

 惚れた弱みと言うやつなのか、普段はそれなりに常識と節度を持って生きている私だが、ルーには滅法弱い。

 これぞ恋の魔力!


 で、そんな私のルーに対してのセックスアピールをことごとく潰してくれるのが、ゼノン・シェラ・ルナウド。

 この国の宰相で、20代半に見える容姿に灰白色の髪と海底を思わすような深い蒼瞳が特徴。

 何より顔の造りが大変整っていて、美形・・・と言うか美人。

 この国では綺麗な容姿をしている人がとてつもなく多いが、その中でも群を抜いてトップクラスに入るだろう美貌の持ち主である。


 そしてまたこの宰相様恐ろしい程の女顔で、傾国の美女って言葉はゼノンの為にあるような言葉に違いない。

 確かにとんでもなく綺麗な人だとは思うけど、私から見ればルーが一番なので、「ふ~ん」って感じ。

 それを本人に言うと、「貴女のような方は初めてです」って酷く喜ばれた。何で?

 180まではいかなくても170後半はありそうなスラリとした身長。

 身体もある程度鍛えているのか、ムキムキマッチョではないが細マッチョってやつだ。

 華奢な身体つきなのに脱いだら凄いんです系?

 無駄な脂肪の一切ない均等のとれた身体は私に対する当て付けか?

 男に見えないかと言われたら見えなくもないが、やっぱり女性と言われた方がしっくりくる。

 だってゼノンってばいつでもどこでも濃厚なフェロモンを身に纏てて、何をするにも何とも色っぽいのよね。

 きっとゼノンが微笑めば大概の男は前屈みになって悶絶すること間違いないだろう。

 ・・・ヤバい、少し見て見たいかも。


 雪のように白い肌に切れ長の瞳。

 緩く束ねられた髪は光りの当たり具合によってキラキラ輝いていて。

 ある意味歩く公害。大輪の薔薇さえもゼノンを目の前にすると霞んで見える。

 ホントこれで男って言う方が間違ってるわ。

 でも初対面で無理矢理股間触らせられたから否定の仕様がない。

 うら若き乙女になんてことすんの!

 出会った当初はその迫力に圧倒されて、例え男だとしてもこんな美人さんが本気になったら私なんて絶対勝ち目ないじゃないか。

 ルーを寝取られる、と夜な夜な涙で枕を濡らしていたがゼノン曰く、



「私が陛下と寝所を共にするなんて無理ですよ。格が違い過ぎます。・・・まぁ、声が掛かれば真っ先に行きますけどね」



 やっぱりアンタ男もイケる口じゃないのーー!!

 取りあえず私の中でのゼノンの立ち位置は、天敵・変態・姑・セクハラ魔 以上。


 着々と身嗜みを整えていくルーを見ながら、お行儀悪くデザートのフルーツをひょいっと手に取る。

 ラツと言う果実で、見た目がリンゴのように赤く、味はモモとオレンジの間でとってもフルーティー。

 食感がシャリシャリしてて美味しい。

 狙っていた作業を取られて悔しかったけど、さっきのセリフは良かった。



 僕のなんだから


 僕のなんだから


 僕のなん(ry



 脳内リフレイン。

 ルー!それは不意打ちよ!!


 身悶えている内にいつの間にかルーは仕上げの段階。

 胸元のリボンを綺麗に直してもらうと、くるりと振り向いてにっこりエンジェルスマイル。


 

「ナツ、夕食は一緒に食べよ?僕頑張ってお仕事終わらせてくるから」


 

 ね?っと小首を傾ける仕草は小動物さながら。


 はうっ!

 な、なんなの!!この可愛らしい生き物は!!

 本能のまま、サッと光よりも早くルーを抱き上げてその柔らかなほっぺに全力で頬刷りをする。


 ルールールー!!



「わっ!くすぐったいよー」



 きゃっきゃと笑う天使。

 ああ!もう大好き!大好きよ!ルー!!

 邪な私の手が悪戯してしまうのを許して!



「ルーファウス様、お時間です」


「あ!」



 再び私が服を乱してしまう前に、またもやルーを奪うと姑ゼノンはニッコリと笑みを残し颯爽と部屋から出て行った。

 クッソ!

 覚えてろよゼノン!

 ルーはそんな私に苦笑しながら扉の前でちょっぴり背伸びをし、



「じゃあ、行ってきます僕の奥さん」


「行ってらっしゃいませ旦那様」



 少し背を屈めて、ちゅっと行ってらっしゃいのキスをする。

 夫婦たる者、おはよう・行ってきます・お帰りなさい・頂きます(夜的な意味で)・ごちそう様(夜的な意味で)・おやすみなさいのキスは当たり前だ。

 むしろ舌を入れなかった私は賞賛に価するのではないだろうか。

 ちなみに夜的な意味でのキスは濃厚に絡ませます。常識でしょ。


 最愛の旦那様を送り出して、メアリーに食後の紅茶を入れて貰う。

 毎日のことだから手馴れたもので、さっきまでのやり取りに臆することなく淡々と彼女は仕事を熟す。





 

 この世界に来てもうすぐ一ヶ月、か・・・



 私、宮本夏樹は27歳にして異世界トリップってやつを体験した。

 物語だけの現象かと思っていたのに、まさか自分がしてしまうとは・・・

 しかもこの年で。

 トリップだなんてもっと若い子がするもんだと思っていたけど、意外とアラサーでも出来てしまうものなのね。

 いやはや驚いた。


 そして驚きついでに、異世界に迷い込んだものの私は本当に普通の一般人だ。

 やれ精霊に好かれているだとか、動物と会話が出来るだとかそういった特殊能力なんてものはこれっぽっちもなく、残念ながら人に自慢できる特技なんてものすら持ってない。

 本当に普通の・・・ちょっとオタクの入ったただの一般人なのだ。


 どうしてこうなったのかなー


 人より秀でてる事なんて、無類の可愛いモノ好きってことぐらいで・・・。

 あ、違った。これは引かれる事だった。

 パッと冴えない私の趣味と言えば可愛い物を収集&愛でる事と、あと読書ぐらい。

 アラサーだって、フリフリのロリロリのショタショタが好きだったりするんですー。

 良いじゃないか、誰にも迷惑掛けてないんだし。

 犯罪を犯すようなことはしてないもん。

 ただ見てるだけ。

 ただ飾るだけ。

 ただ心のお家で疑似家族築いてるだけだもん。

 誰にも文句は言わせない。


 それに“読書”って言うのもまぁ外向きの建前で、インターネットが普及しているこの時代、誰でも簡単に手を出せるネット小説をそれはもう貪欲に日頃のストレスを全てぶつけるかのごとく読みまくってきただけだし。

 BLだろうがGLだろうがNLだろうがお構いなし。

 来たれ!18禁!!

 気になったものは片っぱしから読み漁って、それこそ異世界トリップの話も沢山読んだ。

 異種族?執拗?年の差?大好物ですけど何か?

 何時間でも読み続けられる自信あるわ。


 お蔭でネト充な私は滅多に外出などすることはなく、お肌は真っ白。

 若干不健康がたかってか青白く見えなくもないが、まぁ今は美白の時代だからね!

 青白いなんて流行の最先端じゃないか!とか訳の分からない言い訳をし、完璧に引き籠り予備軍の要素は十分に備わっている。

 勿論恋人など居るはずもなく、独り身歴5年目に突入してしまいました。


 いやね、昔はそれなりに居たのよ?

 自分で言うのもなんだけど、身長は160cmジャストの標準体型。でも出るとこ出てるし、男友達からはエロ顔ってよく言われてたし。・・・あれ?これって褒め言葉か?

 黒目勝ちのくっきり二重の目に、ぽってりした唇。

 背中の半ばまである髪はちょっと前までミルクティー系の色を入れていたが今は黒に戻して、緩くパーマをあててある。

 そして両親が揃いも揃ってベビーフェイスなもんだから、100%その血を受け継いじゃって童顔を超える超童顔。

 27にもなってすっぴんっでR-18のゲームが買えないってどう言うことよ。

 友達にはいい年した大人がそんなもの買うな!って言われるけど、いい年した大人だから買うのよ!

 いいじゃない、好きなんだから。

 けど通販ならともかく、店で購入しようとするといつも証明書の提示求められるのが悔しくって、少しでも大人っぽくなれるよう必死になって化粧の勉強をした賜物か、今じゃヘアメイクアーティスト並みの腕を手に入れたわ!


 ・・・私ただの隠れオタのOLだったのに・・・


 そんな私も年々人との付き合いが面倒になって、お一人様を堪能していたらいつの間にか結婚適齢期ってヤツに自分も突入しちゃってて。

 周りが次々に結婚して子供を産んでいく中、未だ一人身でずっと家に引きこもっているもんだから、親や職場のお節介な先輩達からもっと積極的に外に出ろ出会いは家の中に転がっていないって突っ突かれるんだけど、どうにも気分が乗らない。

 けどそれを無視しようにも、何故か先輩方には「この引きこもりを外に連れ出すぞ」と言う使命感のような物が出来てしまったようで、正直有難迷惑な話だ。

 あまりにもとやかく言われるもんだから、渋々先輩がセッティングしたコンパに顔出したりするけど、なんか“違う”のよねー

 何が違うと聞かれたら困るけど、“違う”としか言いようがない。

 それを言うと、「恋愛には多少は妥協も必要だ」とバッサリ切り捨てられた。

 ちなみに結婚にはもっと妥協が必要なのだとか。

 ううう、そんな事言われたら結婚生活になんの光もないじゃないー。

 現実はどうであれ、もうちょっと夢を見せてくれてもいいとい思う。


 鬱々したものを抱えながら、その日も例に漏れず仕事から帰ってパソコン立ち上げてお気に入りの作家さんの小説読んでホクホクお風呂に入って、寝る前にちょこっとだけまた小説読んでそのまま寝落ちした。

 パソコンをベッドに置いて一緒に添い寝していたもんだから、落とさないか気がかりだったけど、疲れていたのか一気に深い眠りについた。

 で、次に目を覚ましたら見知らぬベッドの中。



「ここ、どこ・・・?」



 大の大人が優に五人は寝れるような広々としたベッド。

 掛けられたシーツは私が使っているものとは比べようのないぐらいサラリと大変手触りがよくって、これはもしかしたらシルクじゃなかろうか?

 ってかなんで私こんなとこにいんの?

 一瞬どこかのラブホか?とも思ったけど、残念ながら一緒に行く相手が居ない。

 酔っ払らって・・・との事も考えたが、ここ最近お酒飲んでないし、寝る前は確かに自分の部屋でパソコン抱いてゴロゴロしていたはずだ。

 いつものライフワーク間違える訳が無い。


 状況を知ろうと、パシパシ何度か瞬きを繰り返して、漸く暗さに目が慣れて来た所でふと自分の隣りに誰かがいる事に気付いた。


 誰・・・?


 大人にしたら小さすぎる膨らみ。

 相手を起こさないようにそーっと顔を覗き込んでみると、静かに眠る黒髪の子供の姿があった。

 見た感じ5、6歳といったところだろうか。

 小さな、まだまだ親の庇護が必要な年頃の子供。

 第一部屋人(?)発見ー



 それが私とルーの初めての出会いだった。





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