俺が、守るから。
「…しつこいな」
俺は、彼女の携帯電話の電源を切った。さきほどからずっと、着信が続いていたからだ。かけてきている相手のことは知ってる。彼女のことを狙ってる男だ。
俺の彼女は目が大きくて、鼻が高くて、スタイルも良くて…とにかく美人だった。そのせいか、変な男にもつけまわされてしまう。
彼女は不安そうに、俺の方を見てきた。
「大丈夫だよ。俺がついてる」
俺は彼女にそう言い聞かせたが、それでも彼女は不安そうだった。
彼女を俺の家に避難させてからも、そいつは毎日のように彼女の家にやって来た。俺はその様子を遠目から見ていた。本当にしつこい男だと思う。その男は、バットを手にしていることも多かった。彼女のことを襲うつもりなのかもしれない。
しっかりしろ。俺は自分に言い聞かせた。いざとなったら、彼女だけでも逃がさないと。
あれはきっとおかしい人間なんだ。だから、俺が君を守るから…。もう大丈夫だよ。
それでも彼女は、だんだんと衰弱していった。やがて、小さな声でうわごとを言うようになってしまった。
「まもる、まもる、…たすけて」
…どうして?俺は彼女の言葉を聞いて、がっくりした。
あの男の、どこがいいっていうんだ。
ちょっと野球がうまいってこと以外、まるで取り柄のない男じゃないか。
俺の方が絶対にいい。君とつりあってる。絶対に。
なあ。君は本当に俺のことを嫌いになっちゃったの?なんであんな奴と付き合ってるんだ?あんな男の、どこがいいっていうんだ。
「まもる、まもる…」
彼女はあいつの名前を呟き続ける。俺はため息をついた。…やっと、
俺が、彼女を、まもるから
「取り戻せたと思ったのに」