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堕天使編4
「お腹いっぱい」
翠は満足になったのか体を投げ出し、中年の親父のように翼で腹部を擦った。
「オッサンみたいだな」
俺が苦笑混じりに嘆息する。
それを見た翠はのそりのそりと起き上がってぷくりと頬を膨らませた。
「スイはまだ若いもん」
「いくつ?」
「忘れたけど……1000歳まではいってない……とおもう……」
突拍子もない桁数を口にするあたり、やはり彼が違う時間を生きているのだと再確認する。
食事も一段落したところなので、少しだけ真面目な話を振っても良いだろう。
俺は彼の正面に向き直った。
「お前はなんなんだ?ただの怪物では無いだろ?」
問い掛けると、スイはぽそりと小さな声で呟いた。
「天使」
「天使!?」
「……だった」
翠は聞こえるか聞こえないかのギリギリの音量で、「いまは悪魔」と付け加える。
苦しそうな表情を、俺から背けた。
翠は、悪魔で在ることに罪悪感を持っているらしく、瞳が悲しげに陰った。
「どうして、悪魔になったんだ?」
「気がついたら、じごくにいた」