堕天使編15
前の15話目をあろうことか消してしまいました……。文章が全く違いますが、勘弁してください。内容はだいたいあってると思います……。
~現世:公園のベンチ付近~
夜8時。待てど暮らせどアナフィエルとエノクのもとへ栗咲翔が現れることはなかった。
しかし二人は別段気分を損ねているわけでもなく、むしろ『やはり』という表情であった。
彼らは半分の確率で栗咲翔がこちらに訪れることはないと予測していたのだ。
「今のリエルの記憶では、私たちは敵と認識されている可能性が高いですからね」
アナフィエルはベンチに腰掛けながらため息をつく。
「ルエルの野郎、まどろっこしいことしやがって。リエルもリエルだ。俺達のこと忘れやがって」
「仕方ないですよ。実体を手に入れるにはこの方法しか無いのですから。天使……いや、妖精から天使になった彼らには……」
エノクはひらりと手を空中で躍らせると、何もないそこから一冊の本を取り出す。
緑の表紙が金で縁取られた、古ぼけた分厚いそれをアナフィエルに渡し、肩をすくめた。
「彼らの部屋にあった大量の魔術、法術書のなかの一冊なんですが、多分ルエルはこれの2028ページを参考にしたみたいですよ」
エノクの言ったページを捜し当ててスッとめくった瞬間、アナフィエルは眉をひそめた。
ページにはルエル、リエルの血液が付着し、魔方陣は黒く焼け焦げ、使用できなくなっている。
彼らは天使であるのにも関わらず、魔術を使ったのだ。
「栗咲翔のもとにリエルを送り届けるためだけに、やつは馬鹿なのか?馬鹿だろ。どうして俺に相談しなかったんだ」
頭を抱えるアナフィエルに、隣に座ったエノクは優しく声をかける。
「こうなったのは、あなたのせいではないですから。自己嫌悪しないで」
「……」
しばらく、二人の間に沈黙が流れる。
夜と言っても現世の夜は無音ではなく、遠くを走る自動車の音や、人間が作り出した音が満ち満ちていて、ここは天界のような荘厳さは微塵も無いのだとアナフィエルは実感した。
気持ちが落ち着いたところで、アナフィエルは沈黙を破った。
「栗咲翔は何も知らない。これからこちら側のことを知る必要もない。だがルエルの想いだけは、伝えなくちゃいけない気がする。でないとあいつが報われない」
エノクは深くうなずき、アナフィエルに同意した。