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堕天使編13
「ここからは長くなりますから、一度家に帰ってあげてください。翠がきっと、寂しがっていることでしょう」
エノクに言われて、携帯を開いて今何時かを急いで確かめる。
「うわっもう8時だ!帰ってご飯作ってやらないと!」
慌ててカバンを持ち上げて立ち上がると、アナフィエルがふっと微笑んだ。
「時間はまだある。明日もこの場所に来てくれ。学校終わりに寄ってくれればいい」
「分かった」
「じゃ栗咲翔くん、気をつけて帰れよ。まぁいざとなったら俺たちが助けに行くけどな」
言い終るか終らないかのうちに、二人はいきなり背中から神々しく光輝く翼と、頭上に目を眩ますほどの光輪を現すと空へ舞い上がった。
まるで光線、いや、流れ星のように弧を描きながら遠くの空へ、彼方へと消え去った。
「本当に、天使……」
激しい動揺と高揚感に包まれながら、俺は振り返り翠の待つ家へと駆け出した。