弍班の助太刀
部長に説得され、渋々向かったのは東京郊外。
〜対モドキ東京郊外仮本部〜
「こんにちは。応援命令を受けてきました。壱班です」
「ああ、壱班さん!すみません、応援に来ていただきありがとうございます」
この人は豊田さん。弍班には珍しい親壱班派の方。
この人は仮本部で負傷した人を手当する
「弍班救護部」の人であり、
作戦をなったり指示を出したりする
「弍班司令部」の人でもある、対倣社の中でも珍しい兼部をしている人だ。
「怪我人多いですね。何があったんですか?」
「突然モドキの数が増えちゃったみたいで」
「それってもしかしてオオプラナリアモドキですか?」
「古知丸ちゃんは鋭いね。その通り。私もオオプラナリアモドキってわかってはいたんだけどね。弍班の子達はオオプラナリアモドキの倒し方知らないみたい。しかも私がどれだけ指示しても話聞いてくれないし」
知らない人のために少しだけ説明を。
プラナリアとは扁形動物門有棒状体亜門三岐腸目に属する動物の総称で、再生能力が非常に高く、再生研究のモデル生物として用いられる。
そんなプラナリアを人間よりちょっと大きめにしたモドキがオオプラナリアモドキである。
修正もおそらくプラナリアと同じ。(あまり詳しいことはわかっていない)
こいつもプラナリアと同様、再生能力が著しく高いので、木っ端微塵か、ごちゃごちゃにしないと殺すことはできない厄介者だ。
ただ、慣れるとそうでもない。
「やっぱりそうだと思ったんすよ。増えるモドキなんてこいつくらいしかいないっすよ」
「それを説明したんだけどね。弍班の子は誰も聞いてくれなかったのよ。結局壊滅したわ。いつのまにか日の出ちゃったし」
豊田さんは肩を落とした。
「そう落ち込まなくて大丈夫ですよ。豊田さん。あなたは悪くないんですから。僕たちが倒してきますから、その指示をお願いします」
楡俣先輩が司令部の先輩を慰めている。
やっぱり同じ部の人だから、情があるんだろうなと感じた。
「よっしゃ!楡俣先輩!行きますか」
「おう!」
「あの〜。僕もいますよ」
私の視界にメガネのヒョロガリが顔を出してきた。
「あっ。新人君。お”と”はらくんだっけ?」
「お″つ″はらです」
「ごめんごめん。じゃあ、乙原くんは吉木さんのとこついてってもらおう。吉木さ〜ん。乙原くんのことお願いします」
「りょうか〜い」
メガネのヒョロガリは吉木さんの方へついて行った。
* * * * *
住宅地を1人で走っている。
東京郊外と言ってもやはり家が立ち並んでいる。
私の故郷とは違う景色だ。
「司令部の方々!モドキのリーダーは?」
無線機で司令部に聞いてみる。
「まだ特定できてない」
ダメみたいだ。
モドキはリーダーを殺るのが一番手っ取り早いのに。
おかしいな。いつもリーダーの居場所を聞けばすぐに、ここって指示してくれたのに。
おそらくこうなったのは弍班の影響だろう。
よくわからずにオオプラナリアモドキを撃ち続けたおかげで、数を増やしてしまったのだ。
増えてしまうと、同じ形をしたモドキの中から、ボスを探すのが大変になってしまう。まさにウォ◯リーを探せ状態である。
「めんどくせ!パッと出てこいよ!パッと!」
「古知丸。丸聞こえだぞ」
「あら。ごめんなさい。楡俣先輩」
しかし、一番おかしいのは手分けして探しているはずなのに、増えたはずのモドキが今だに1匹も見つかっていない。
「リーダーどころか、雑魚1匹も見当たらん。どういうことや」
豊田さんは頭を悩ます。
「あっ」
楡俣先輩が何かに気が付いたそぶりを見せた。
「豊田さん。今何時ですか?」
「なんだ。名案でも思いついたのかと思ったら、時間かいな。なんか予定でもあるの?」
「いや、なにもないですよ」
「そうかい。今はね。午前7時47分」
「出動した時間は?」
「大体4時30分くらいだったかな」
「やっぱり...。」
楡俣先輩は一つ間を置いて無線機をとった。
「壱班に告ぐ。今探すべき場所は日陰か湿った場所だ。そこにモドキがいる」
私は楡俣先輩の話を聞いて、ようやくモドキに出会わなかった理由を理解した。
「なんでですか?」
すかさず吉木さんが質問した。
「プラナリアってのは、暗い場所やジメジメした場所を好む習性がある。モドキは元々いる動物の劣化コピーをする。だから、オオプラナリアモドキもおそらく同じだ」
「なるほど。見つからない原因はそこだったんですね」
吉木さんは感慨深そうにしていた。
「じゃあそこを重点的に探s...」
「そんなの知ってたから」
私が発言しようとしたら、突然謎の男が声を被せてきた。
「え?」
「いや。そんなの知ってたから」
謎の男による強気な発言に、思わず論破された時の小学生を思い出した。
そんな男の声に壱班の全員が絶句というか、まあ、よくわからない感情になった。
よくわからない感情になったけど、みんな多分、同じ思いである。
「壱班の奴らはさも当たり前のことを、世紀の大発見のことのように大袈裟にいう。やっぱ低脳の集まりだわ」
声から察するに、突然壱班の無線にやってきたのは、捻橋 捩であった。
「何しにきたんだよ。捩」




