襲撃・後半
現在進行形で、サカナモドキモドキの対処に手こずっているため、対倣社のロビーはそれなりに破壊されていた。
「ダイブアバレマシタナァ」
「ソウデスナァ」
「キョウハ、カエッテ、メシイキマショウ!」
「イイネェ」
そんなロビーを見てサカナモドキモドキは満足そうに話す。そんな嬉しそうなモドキたちを許さない奴がいた。
「ヒトモドキよりも話すのが得意なんだね」
『ギョッ!?』
それは古知丸であった。
古知丸はサカナモドキモドキの目の前に現れた。ものすごい速さだ。
「まずはお前からだ」
古知丸はサカナモドキモドキの上を、くるりと宙返りした。
「ギョッ...ッテ、ナニモナッテナイジャナイカ」
サカナモドキモドキは身構えたが、ただ自分の上を飛んだ古知丸を見て、安堵した。
「油断してると、そのうち崩れるよ」
「ハ?ナニイッテンノ?コウゲキデキナカッタクセn...」
なんと、サカナモドキモドキは古知丸の言った通り、三枚おろしにされ、崩れ落ちた。
「ナッ...。ドウイウコトダ?」
「すごい...。あのサカナモドキモドキの上を宙返りした時に、とてつもない速さの剣さばきで捌いたんだ。なんという速さだ...。俺でなきゃ見逃しちゃうね」
「楡俣先輩。なんでそんなドヤ顔なんすか?」
「やかましいわ!新人!俺のことをつっこむなんて、5年早いわ!」
古知丸は遠くで、なんか茶番劇してるなぁと2人を見ていた。
「あっそういえば新人君。さっき聞きそびれたけど、名前何?」
「戦闘中にそんなこと聞いて、大丈夫なんですか?」
「余裕だぜ」
古知丸は新人君に向けて、Vサインをかます。とんでもない余裕っぷりである。
「僕の名前は乙原伊です!」
「乙原くんね」
一方その頃、サカナモドキモドキは怒りに燃えていた。戦闘中によそ見をし、さらに余裕などと侮辱してくる。サカナモドキモドキにとって、これはとんでもない侮辱行為であった。
「ヨソミスンジャネェヨ!クソニンゲンガ!」
そう言ってサカナモドキモドキは古知丸めがけて、おおきく振りかぶって、力一杯殴った。
しかしそんなパンチ、古知丸に当たるわけがありません。古知丸はひらりと蝶が舞うように攻撃を避けた。
サカナモドキモドキは地面にぶち当たった拳が痛かったのか、動けなくなった。その隙を見て先ほどまで蝶のようだった古知丸は、今度は蜂のように猛スピードで刃を向けて走る。
その速さに反応する前にサカナモドキモドキは、綺麗な三枚おろしになっていたのであった。
「ツ、ツヨシ...。コ...チ...マル...」
「私をみくびった罰だ」
古知丸は複数人で戦って手こずっていたサカナモドキモドキを、5分も経たないうちに1人で殲滅してしまった。
「見ました?私の剣さばきってあれ?どうして2人とも怯えてるんすか?」
「俺は何がとは言わないが怖い」
「僕もです」
「は?ちょっと意味わかんないっす。まじで何に怯えてるんすか?」
2人は古知丸に
「モドキよりも古知丸の方が怖い」
とは口が裂けても言えなかった。
* * * * *
「古知丸...か...。フッ。面白いやつだ」
人間界のはるか遠く。
玉座に偉そうに座っている何かは、古知丸を見て随分と嬉しそうだった。




