新人君
私は古知丸萌だ。ここで働いて、いつのまにか6年が経っていた。
今日は昨日入社したばかりの新人がやってくる。
この会社に新しい顔ぶれを迎えるのは、約3年ぶりになる。私の後輩は3人くらいしかいない。
うちの会社に人が来ないのには、いくつか理由がある。
うちの会社、『対倣社』はとんでもブラック企業として有名だからである。
うちの会社はモドキ討伐専門の会社なので、戦闘がつきもの。課によっては死ぬ可能性が高い。まあ早死にしたい奴はそういないので、よっぽどのやつしか入社してこない。
さらにここは休みが1日もない。モドキのボスが死ぬまで働き続けなければならないのだ。だから最年長の人は、モドキのボスが先に討伐されるか、最年長が寿命が先か、いい勝負である。
極め付けには時給が200円。年収が約175万円。手取りは約145万円。正社員なのに。
休日がないから飯代と生活必需品以外使うとこがないので、なんとかやっていけるけど、やっていけることが悔しい。
こんな労働条件なら、人が来ないのも納得だと思う。だからここの社員はドMか、しょうがなくここで働いてるかの2パターンだ。私からしたらみんなドMだけどな。
「古知丸。この前のヒトモドキ倒した時、なんの銃使った?」
司令室の先輩(名は楡俣という)に謎に話しかけられた。
「ちょっと自分、銃に詳しくないんで、型名?みたいなやつわかんないっす」
先輩にはこのくらいドライがちょうどいい。
* * * * *
うちの課の業務は討伐のみなので、会社にいるとき以外は働かない。自分の部屋が用意されており、そこで任務命令が出るまでゆっくりと過ごすことができる。まあ、死ぬ確率が一番高い課だから、多少の配慮があると思う。
コンコンコン
私の部屋を誰かがノックした。
「お〜い。古知丸。新人来たぞ」
「了解で〜す」
正体は楡俣先輩であった。
先輩に呼ばれ、私は新人の待つ、二階の会議室に向かった。
* * * * *
コンコンコン
私が会議室の扉をノックすると、中から若そうな男性の声が聞こえた。
「こんちわぁ」
部屋に入ると20代前半くらいのメガネが、椅子に座っていた。
「よろしくお願いします」
「君が例の新人だね」
「はい!」
なかなか威勢のいいやつだ。
「私は6年目の古知丸萌。好きなように呼んだらいいよ。君は?」
「僕はおっ...」
ドギャァァン...
「襲撃。襲撃。一階ロビーにてモドキの侵入を確認。討伐課は直ちに排除してください」
とてつもない轟音の後に続けて、サイレンが鳴り響いた。
「な、なんですか?これ」
「ああ、襲撃だよ」
「襲撃だよ。じゃないんですよ!なんでそんな冷静なんですか!?」
「いや、もうこれ何回目って感じだから。もう慣れちゃってんのよねみんな」
まあ、初めての経験だろうから、狼狽えるのも無理はないよな。
「私討伐課だから行かなきゃいけないんだよ。ちょっとついてきて。銃とか扱えるでしょ?」
「まじっすか...?」
新人の顔が引き攣っていた。




