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朝の討伐依頼

未明。

薄暗く肺が凍りつきそうな空気を思い切り吸い込む。

今日は朝から面倒な討伐依頼が来た。


人気のない田舎の雑木林で、身を隠して指示を待った。


通信機からノイズ混じりに音が聞こえてくる。司令室にいる先輩からだ。


「標的を確認。...しに500m。赤い屋根の家の中だ。中には人質もいる」


ノイズのせいで、方角が西か東かわからない。


「西?東?」


私は位置がバレないように、小声で聞き返す。


「...しだ」

「もっかい言って」

「...しだ!」

「わからん!西セイトウで言って」

西セイだ!まだこの場にいるのはお前だけだ。援軍が来るまでそこで待機していろ」


朝から雑木林で指示を待ち続けて1時間弱。

眠気を我慢して、やっと指示が出されたかと思ったら、まさかの待機命令。もう色々と限界。


「おけ、ありがとう。もう待てないから突っ込むね」

「まて!だめだ!1人じゃ...」


私は司令室からの通信をブツッと切った。

そして切った手でハンドガンを握りしめ西へ走った。

また通信機から音が聞こえてくる。


「今度はなんだよ」

「標的まで残り100m。赤い屋根の家の中だ。一人で行くなと言っただろ。まあいいや。存分に暴れてこい」


司令官は呆れた感じだった。


「りょーかい」


私はブレーキを踏まず、標的の家まで走った。


草が生え散らかした田舎道を進むと、先輩の言う通り、赤い屋根の家があった。

標的は家の中。

私は走ってきたそのままの勢いでドアをぶち破った。中には標的がいた。その数ざっと五十程度。人質は奥で座っている。目を瞑って動かない。ただ見た感じ、死んではいない。


「ドァ、けとばすな。なんの、よォだ」


私が周りを見渡していると、標的が話し出した。

動きが人間とは思えない。人のように滑らかに動くことができず、動くたびにギチギチ...と聞こえてきそうだ。


「相変わらず気持ち悪りぃな。人の真似するんだったらもっと似せてよ」


こいつらはヒトに擬態するモドキ。通称ヒトモドキ。ぱっと見、人間に見えなくもないが、動きが人間離れしているため、すぐにモドキだとわかる。

ヒトモドキはモドキの中では一番多い種族で、他の種族と比べると能力は中の下。討伐課新人の実践練習のために存在してるみたいなもんだ。


「われらわ、ひとだ。マネなんか、じゃなぃ」

「そんなんに騙されるわけねぇだろ。私はオメェらを片付ける討伐屋だからなァ」

「おんな、ひとりに、なにが、できる」

「舐めてもらっちゃぁ困るぜ。痛い目見るぞ」


ヒトモドキは一人をリーダーにして、そいつを軸に集団で動く。なので、リーダーを先にやって仕舞えば、指揮が取れず弱体化する。私は右手に握ったハンドガンで、リーダーと思わしきヒトモドキを撃ち抜いた。


「あ」


と言って撃ち抜かれたヒトモドキは、白目を剥いてドロドロと溶け出した。


「りーだーお、ころした、ォまェ、ころす」


どうやら本当にリーダーだったっぽい。


「全員まとめてェ、かかってこいやァ」


ヒトモドキはリーダーを失ったことに腹を立てた。ヒトモドキは腹を立てると、形を変えて襲うという習性がある。案の定、ヒトモドキは形を変えて私に襲いかかってきた。自分の腕を鎌のようにするやつや二人でくっついて大きくなるやつなど、バリエーションに富んでいる。

しかし私はこいつらの相手をしていくなかである感情が芽生えた。


「つまんねぇし、めんどくせぇなァ」


こいつらは形が自由自在でに変えられて、人数有利なので、強そうに感じるが、リーダーを失うと、元々下手な戦闘がさらに下手になるため、数が多いくせに弱すぎるのだ。

リーダーを撃って弱体化を図ったのは良かったけど、弱体化しすぎて刺激がなくなってしまった。


「ねぇ。お前たちつまんないんだけど?もっと強くなってくれない?」

「ォまェ、われらのことを、なめすぎだ」

「もうめんどくさいし、パッと片付けるわ」


私は早く終わらせるために、腰に巻きつけたベルトから、マシンガンを取り出した。


「全員まとめて回収してやるよ」

「オ、おィ、まシンがんは、はんそくダろゥ」


焦るヒトモドキにすぐに楽にしてあげるからと言って、私はマシンガンをぶっ放した。


* * * * *


「あのさぁ...。俺いつもやりすぎだって言ってるよね?ここは普通の民家なんだから、お前が破壊したところ直さなきゃいけなくなるの。お金がかかるの。ほんとに勘弁してくれる?」


結局、ヒトモドキは液体となって、全て回収課に回収され、人質も怪我をさせることなく保護できたので一件落着。しかし、私が破壊の限りを尽くしたせいで、家がほぼ半壊してしまった。そのせいで先輩に説教を喰らうハメになった。


「いつもこうなるからお金がかかってんだよ」

「でも先輩がGOサイン出したじゃないですか?」

「確かに出したよ。それについては何とも言えんけど、ここまでやらんだろ、普通」


容赦なく正論で殴ってくる先輩。ぐうの音も出ない。


「限度ってもんがあるだろ。俺、何回も言ってるよな?しかも今回はマシンガンぶっ放したんだろ?人質に当たってたらどう責任取るんだ?」

「いや〜本当にすいません。でも当たってても致命傷は避けてたんでぇ〜」

「そんでも当たったらダメだ。死ななければいいってもんじゃないんだぞ?」

「はい。すいません」


その後、私は会社の偉い人に、こっぴどく注意を食らった。

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