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私、あなたの見下し方がキライです

「え、レジ打ちって逆にすごいっすね〜。オレ絶対ムリだわ〜、つらくないっすか?」


 午後四時。ピーク前の静かな時間。

 その大学生の男は、缶チューハイとスナック菓子を片手に、レジに来るなり私を“観察対象”みたいな目で見てきた。


「え、てか将来とかどうするんすか? このままずっとコンビニっすか? 人生詰みそうじゃないっすか?」


 その口調は軽く、笑い混じりで、悪気はないように見える。

 だからこそ、余計にタチが悪い。


 彼にとって、コンビニバイトは“底辺”で、“失敗した大人”がやることらしい。

 そういう価値観で育ってきたのかもしれない。でも、私には関係ない。


 レジを打ちながら、私は静かに答えた。


「お客様、コンビニバイトが“詰んだ人生”に見えるなら、あなたはまだ社会を知らなすぎます」


「え、なに? マジギレっすか?」


「いえ、事実を申し上げているだけです。誰かの仕事を見下す人間に、真っ当な未来は来ません。あなたが“すごい”って笑うレジ打ちは、社会の誰かの生活を支えています」


 彼は言葉を失ったように黙った。私は袋詰めを終え、商品を手渡した。


「986円になります。 ……ごゆっくりどうぞ、“社会勉強”」


 彼は受け取ると、バツの悪そうな顔で店を出て行った。


 私のレジは、時々“勉強机”にもなる。教科書は不要。必要なのは、少しの礼儀と、まっすぐな目だけ。


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