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〈7〉救出

ユウマの死刑が決まった。

それを留置所で判決を受けたユウマは何も感じなかった。

ユウマは泣きはらした顔をしていた。もう自分には失うものは何もない、と思っていた。

〈僕は聖なるリンゴを盗んだ罪で罰せられるのではない。母殺しの罪で罰せられるんだ。死刑で充分だ〉

ユウマの死刑はナパ国から四キロ沖にあるドラグラード島のドラグラード刑務所で執行されることが決まった。さすがにナパの都で子供を処刑するわけにはいかなかった。

ドラグラード島には犯罪者や政治犯が収容されるドラグラード刑務所がある。ドラグラード島は金銀の鉱物資源が採取され、囚人はそこで強制労働を強いられていた。


男は看守が持ってきた粗末な夕食を食べながらユウマに話しかけた。

「刑務所島に連れていけば気兼ねなく処刑できるってことか。おい、少年」

ユウマは男の言葉になんの反応も示さない。男は気にせずしゃべった。

「食べておいた方がいいぞ。いざとういうとき動きたくても動けない」

ユウマの牢の前にも粗末な夕食があるがユウマは何も手を付けていなかった。男の言葉を聞いても食べる気は当然起きなかった。

「別に食べなくてもいいんじゃないのか。ドラグラードに行けば死ぬんだからな」

看守が地下留置所に降りてきて言った。

看守はユウマを一瞥してから男を見た。

「お前は食べた方がいいな。あっちに行ったら強制労働が待ってるんだからな」

「そうだな」男はそういうと素早く看守のベルトを掴み引っ張った。

「何をする!」

看守は牢に張り付けられた状態になり身動きが取れなくなった。

すると看守は背後から首を締めあげられ、藻掻くことが出来ず、暫くするとその場で気絶した。

留置されている男は看守を締め上げた男に声をかけた。

「随分、遅かったな。危うく刑務所島に連れてかれるところだった」

「じゃ、明日にすれば良かったかな」男は笑いながら看守から錠をとり、牢を開けた。

「これは仮にしておくからな、ジュリス」

そう、牢に留置されていた男はジュリスといい、執政十家からナパ国を解放しようとする政治犯。ジュリスを助けた男はマトイ、ジュリスの友人にして同志。

ジュリスはマトイから鍵を受け取りユウマの牢に近づき鍵を開けた。

「ジュリス、その子は?」

「リンゴ泥棒で死刑になった少年だ」

「この子が……。どうするつもりだ?」

「一緒に連れて行く」

「いや、その少年は私たちが連れていく」

マトイとジュリスは地下留置場に降りてくる階段を見た。

少年と大男とその腕に少女が人質にされ、今にも首を締め上げられそうになっていた。

大男の腕で締め上げられそうになっている少女を見てジュリスが叫んだ。

「レジスタ!」

降りてきた少年は気絶している看守を一瞥した。

「なるほど、脱走の手助けか。ボス、いいよ」

ボスと呼ばれた大男はレジスタを解放した。レジスタはジュリスに駆け寄った。

「兄さん、ゴメン」

レジスタはジュリスに抱き着いた。

「お前にはまだ早い」ジュリスはレジスタを抱きしめた。

「兎に角、脱走するなら脱走しろ。その代わりその少年はこちらへよこせ」

「まさか十家に突き出すんじゃないだろうな」ジュリスが言った。

「突き出すんなら、お前ら、みんな捕まえる。おそらく政治犯だろう? 図星か」

「お前たちは何者なんだ?」マトイが言った。

「私たちか……。そうだな、遠いところからはるばるやってきた者。そんなところかな」少年はボスを見た。ボスはニコッと微笑んだ。


地下留置場から地上に上がると二人の警官は猿ぐつわを噛まされ手錠で二人を繋いでいた。

ジュリスとレジスタとマタイが外に出て、それに続くように少年とボスとボスに背負われてユウマが出てきた。ユウマは泣き疲れたのかぐったりしていた。

少年はジュリスたちに向かって言った。

「また捕まるなよ」

「大きなお世話だ」マトイが言った。

「じゃぁな」少年は三人に別れをいって、ボスとユウマを連れて、馬が隠してある場所まで行った。

「ボスはこいつを連れて先に戻ってください」

「お前は?」

「僕はもう少し都にいます」

「わかった」

ボスは先にユウマを馬に乗せてユウマの後ろに乗り手綱をもち、少年に目で合図してから馬を走らせて去って行った。

少年は馬に乗ってボスとは反対の方向に去って行った。


少年の名はルノア。ボスと呼ばれている大男の名はオウガ。二人はユウマを助け出すという密命を帯びてナパの都にやってきたのだった。



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