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〈12〉野心

その年、ハイメの予言は的中した。

御神木から聖なるリンゴが一つも実らなかったのだ。

聖なるリンゴは権力の証し。そのリンゴが実らなかった。権力の証しが存在しない空白の年を迎えたのだ。

人々の間に疑問が過った。

「誰がこのナパの執政者になるんだ?」

「聖なるリンゴがあろうとなかろうと何も変わらんさ」

「そうそう、俺たち下級身分には関係のないことだ」

「今までと同じように執政十家が俺たちを支配するだけ」

人々は分かっていた。聖なるリンゴは権力の証しだが形骸化していることを。自分たち下級身分や奴隷には関係のないことと。だから人々は何も変わらない政治に関心がなかった。

そんな中、関心がある者もいた。

「聖なるリンゴを持たぬ執政十家は執政者にあらず」と権力という果実を欲しがる上級身分や政治犯。グレコもまたその一人。グレコは上級身分で執政十家に逆らうことはなかったが内心、権力を求めていた。

〈これはまさに天啓。権力を握る絶好の好機。だが、どうやって権力を握るか?〉

グレコは考えた。どうすれば執政十家に変わって権力を握れるか。

〈聖なるリンゴが権力の証しなら聖なるリンゴをもって権力を奪取するのが上策だろう。聖なるリンゴをもって正当な方法で権力を手にする。それこそが大義名分だ〉

グレコの考えはそこに行き着いたがそこで問題になるのは、聖なるリンゴが実らなかった御神木に、どうやって聖なるリンゴを実らせるか……。

御神木を管理する専門家たちは、「御神木は命数尽きた」と言っている。

〈枯れ木に花を咲かせて、実を実らせる。そんなことが出来るのか?〉

グレコはこの考えは現実的ではないと思った。

しかし、命数尽きた御神木を復活させて聖なるリンゴを実らせることが出来れば権力を手にすることも夢ではない。グレコは現実的ではないと思いながらも権力を手に入れるにはそれしかないと思えてならなかった。

〈そう、これは命数尽きた御神木を復活させ、聖なるリンゴを実らせた者が正当なナパの支配者になれる。しかし、そんな都合よく、御神木を復活させることが出来る奴がいるか?〉

結局、グレコは頭を悩ませた。


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