『 いろがみ 』 二十首
みんなのこと大好きだよって君が言うみんなに僕は入ってますか
くちびるとくちびる手と手あとひとつ触れ合う許可をもらえませんか
己が火にいずれ灼かれて死ぬ蛍 きっと来世も星になれない
その色に毒を含むは彼岸花 さぞや前世は名のある悪女
もし君が先に死んだらいちばんのきれいをください左の鎖骨
もし僕が先に死んだら泣かないで忘れて生きて嘘です死んで
爪痕を刻むだけでは物足りぬ 太い背骨を遺せ恐竜
雨音を拾い集めて讃美歌の調べに変えよ 明日は晴レルヤ
寝床とはしても住処としてくれぬ猫よ今夜は誰と寝ている
気の向いた時だけ寝床を借りに来る猫よさっさとうちの子になれ
張りのあるうちに揉めやと迫り寄る与謝野晶子のちからある乳
寒い夜ももう怖くない この手には肉まんがある しかも二つだ
第一問 あなたはわたしが好きである はいかイエスかキスでこたえよ
ただしさはいつもだれかに決められる正常位ってだれが名づけた
今日までの君ぐちゃぐちゃに塗り潰す清いとこなど残らぬように
かさ増しじゃ薄められてくカルピスも紙幣の価値も愛の言葉も
――インフレーション
包装紙、材料、人員、あと何を削るのですかしあわせですか
――デフレーション
けものにもとりにもなれず夕闇をずたずたにして飛ぶよ蝙蝠
幻肢痛みたいに疼くのは君に持っていかれた心のはんぶん
だとしてもあなたのくれたこの歌は僕にやさしい御守りでした
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公式企画「俳人・歌人になろう!2023」参加作品です。
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