異世界人
異世界生活も3日目になり3人共にお腹が空き始めていた。
「珠姫ーーー1食菓子パン1個じゃきついよー。」
「そうそうこんなに歩いているんだし。」
「予定通り、森から出られなかったらどうすんだよ?しかも、もう菓子パンあと1食分しかないぞ。」
「もっと持ってくればよかった。」
「いや、消費期限もある。お腹なんて壊したほうが最悪だ。」
もう日が真上に上がった頃、3日目にして川に到着した。
「川、到着!!」
「まあ、珠姫にしてはやるじゃない。」
「ありがと。空になったペットボトルに川の水を入れて持っていこう。」
俺は念のため川の水のキレイ度と危険がないか見る。
川の水は透き通るほどきれいで川の中に見たことないが美味しそうな魚もいる。
川に危険はないようだ。川に住む魔獣なんかがいるかと思ったが杞憂だったようだ。
「よし2人とも川の水、ペットボトルの中に入れたな?」
「うん。でも別に川の水、ペットボトルに入れていかなくても川に沿って歩いていくんだしその都度飲めばいいんじゃない?」
沙穂が疑問そうに言ってくる。
「川の近くになるとどうしても魔獣が増える。あまりに多いようだったら川から離れるかもしれない。」
川の河口に向かって歩いていくと俺が言ったとおりに
「ガサガサ、」
草の中から黒と黄色のでっかい50センチほどの蜘蛛が出てきた。
蜘蛛は日本と一緒なのか俺に向け糸を吐いてくる。
俺はしゃがんで避けバックの中から包丁を取り出し蜘蛛の糸を斬ろうとする。
だが何故か斬れない。糸をよく見ると鉄のように見える。糸はもちろん粘着性もあり包丁を取られる。
まさか鉄の糸を吐く蜘蛛がいるのか!!??
この世界は普通じゃない。
鉄を体の中でこんなに細く柔らかくしているということだ。どんな体の構造をしていたら出来るんだ?
蜘蛛は手当り次第全員に鉄の糸を吐いてくる。
それを3人とも上手く避けるが
沙穂が1番、避けるのがギリギリだったからか蜘蛛が沙穂をターゲットにして何度も糸で捉えようとする。
4度目で完全に捕捉され体を鉄の糸でぐるぐる巻きにされる。
「沙穂!!」「沙穂!!」
「動けないけど大丈夫そう!!それより蜘蛛を倒して!!」
俺は目の前に飛んできた糸をしゃがんで躱し一気に走って蜘蛛に近づく。
楓も同じように糸を躱し、蜘蛛をあと1メートルで仕留められると思ったところで楓が止まる。
「どうした!!??楓!!」
「足元にも蜘蛛の糸がある!!」
そうか接近されると弱いことが自分でもわかっていて糸で俺達の気を引いて足元をおろそかにさせて動けないようにして巻き取る気だ。
俺は更に走るスピードを上げ、足元に落ちている枝を2本拾い、蜘蛛が吐いた糸を1本目枝に巻きつけて蜘蛛に投げ返す。
蜘蛛が自分の糸にくっついて気がそれているうちに一気に踏み込んで俺は飛んで蜘蛛の頭を真上から木の枝で突き刺す。
俺が蜘蛛の体を踏みつけたからか蜘蛛は息絶えたようでさっきまでの蜘蛛の柔らかさがなくなり溶け出している。
「危なかったーー!!」
「助けるのが遅いけど、まあ、良くやった。」
「珠姫、さっきのかっこよかったね!!」
俺は蜘蛛の体内を見るため、蜘蛛のお腹を切ると溶けた鉄がかなりの量できた。
鉄の糸は蜘蛛が死んだら溶ける仕組なのか。
そうすると剣にしたりするのは無理そうだな。
蜘蛛自体をずっと生き続けるようにするのも手だがあまりいい方法とは言えない。
俺達はまた川を下っていき少しずつ生えている木の種類が変わってくる。
周りを見ながら歩いていると人間の頭蓋骨のようなものがある。
「あ、あれ。ヤバいんじゃない??」
「人間が本当にいるとは!!我が疾風の楓と呼ばれる日も遠くないな!!」
「ん?なんだこれ?」
頭蓋骨は地面に落ちているが体は木によりかかるようになっており横腹に手を当てていて恐らく血を止めようとしていたのだろう。
服はよれよれではあるが鎧のようなものを着ていて胸からお腹にかけ鎧が壊れている。
地面には剣と盾が落ちていて剣は根本でポッキリ折れ、盾は半分がなくなっている。
驚愕すべきはこれをこうした魔物がこの森の何処かに居るということだ。
急に遠くから「うわーーーーーー!!!」と男の悲鳴が聞こえる。
俺達3人は急いで声のした方に走っていく。
すると真っ赤な髪をした青年と真っ赤な髪の女性が俺が地球で車で轢き殺した、角の生えたクマ相手に睨み合っている。
「愚弟!!こんなクマ一匹倒せんで何が次期当主だ!!笑わせるな!!」
「姉様、無理ですよ!!僕のスキルはそんなに強くないんですから!」
「言い訳はいらん!!男が喚くな!!スキルが弱いなら剣でもいいから勝ってみせろ!!」
どうやら色んな意味でやばい状況で異世界人に会ってしまったようだ。