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異世界 侵攻  作者: 社不帝
3/12

忘れていた記憶

「この狼やろうがー!!」


拓海はお腹に噛み付いた狼の首を残った片手で絞める。


「くうう!!!っっくう!!、、、、」


狼は苦しそうに叫んでいたが20秒ほど首を絞められると一切の鳴き声のようなものはなくなり静かになる。


「はあ、はあ、はあ、」拓海の荒い息遣いがかすかに聞こえる。


「「拓海ーーーー!!」」楓と沙穂が叫びながら拓海に近づいていく。


俺の足はまだ棒のようになったままで拓海に近寄ることさえできない。


「だ、大丈夫、私がこんな傷治してあげるから。アニメだったらここで治癒の能力に目覚めるはずだから!大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫。」


「大丈夫、拓海。この私が一緒に居てあげてるんだから大丈夫、大丈夫、大丈夫だからね。」


「はあ、はあ、2人とももう大丈夫だ。もう俺は助からねえ。」


拓海がそう話していると遠くのほうで


「キャーーー!!」

「助けてくれーーー!!」

「誰かーーー!!」


そう悲鳴が聞こえてくる。


俺は瞬時にまさかと思うような状況を考える。


この島で一日に異世界から侵攻してくる生物たちの数はおおよそ10体ほど。

だから島に駐在している連合軍の兵士は多くて15人ほど。機械の発達で島に出現した異世界の生物が瞬時にわかるようになったとは言え、もし、もしだ。


最大駐在人数の15人が一体ずつ対応しても足りない16体以上の異世界の生物が来たらどうなるんだ?


昨日まで10体ほどだったからって今日10体ほどだとは限らない。もしかしたら、ついにこの島のキャパシティを超えたのかもしれない。


「た、珠姫、、な、何が起きてるかわかるか?はあ、はあ、」

拓海が痛みを我慢しながら聞いてくる。


「な、なんで?」

もう、俺はなにかに責任を持ちたくない。ここで間違ったことを言って後で後悔したくない。


「あ?なんでって、そりゃ、、はあ、はあ、お前が一番状況判断が、はえーし、こういうときのお前の頭は、はあ、はあ、すげー動くんだろ?」


「な、何言ってんの?こんなとこでまだ足が棒になって動かないような俺に、、。」


「楓、はあ、沙穂。珠姫んとこまで、はあ、運んでくれ俺のこと。」


楓と沙穂は拓海の頭と足を持って俺の方に連れてくる。


「珠姫、はあ、ちょっと頭下げろ。」


俺はそう言われて棒になっている足を屈見込み拓海と目を合わせる。


拓海は、はあ、と深く息をついて俺の頭の後ろに残った片手をおいて拓海自身の頭にぶつけた。


「おい、、、いつまでヘタレでいる気だ?昔のお前はそんなんじゃあなかったろ。はあ、はあ、お前が小学校の頃の記憶を、はあ、はあ、なくしてんのはみんな気づいてる。はあ、はあ、でもいつまで無くしてんだ?鬼龍院珠姫。」



思い出した。



自分が無敵だと信じてた小学生の頃の俺を。


あの頃の俺は怖いもの知らずだった。


だからこそ、いつもの5人で遊んでいたときに絡んできた高校生相手にもひるまず殴りかかりに行った。


でもあのときの俺は全く動けなかった。



あれは夏のことだ。


夏休みで父さんと母さんと妹と姉と一緒に家で皆で雑談していた。

皆楽しく話していた。でも、急に窓ガラスが割られ泥棒が入ってきた。

いつもならこの時間は誰もいない。

本当にたまたま俺達家族は泥棒に会ってしまった。

通報されるとすぐに怖くなった泥棒は包丁を出して俺達家族に向かってきた。

怖くて足が棒のようになって動けなかった俺をかばうために父さんが代わりに刺された。

自暴自棄になったのか泥棒は母さんも刺しテコンドーを習っていた姉に泥棒は気絶させられた。


あの時だ。


何かを選択したり責任を持つのが怖くなったのは。


俺があの日の朝、家族皆に学校の話でも家でしようよと言わなければ、、、、今でも思う。


だがもう変えられない。


だったらまだ残っているものを守らなければならない。


「拓海、悪かったな。もう大丈夫だ。俺に任せろ。なんてったって天才だからな。」

「ふっ、、、、まるで小学生の時のお前を見てるみたい、、だ、、、」


拓海はピクリとも動かない。


「拓海、拓海?拓海!!??」

「拓海ーー、拓海!!」


「楓、沙穂。すぐに動くぞ。もうこの島は危ない。」


「なんで、なんで、そんなに冷静でいられるの?」


「拓海に任されたからだ。」


「、、、分かった。沙穂。行こう?」

「うん。」



ここからどう動く?

この島全体に異世界の生物が侵攻してきているなら逃げ場はない。

この島はある意味一つの砦だ。出口はない。


本州からの援軍もまだ来ないだろう。

来るにはあと最低でも3時間。

逃げ回るにも今島では多くの悲鳴が聞こえる。

そんないっぱいの数相手に逃げ続けるなんて無理だ。


俺は情報をさらに集めるため電柱に登ることに決める。


「楓、沙穂。俺が電柱の上の方に行くの手伝ってくれ。」


「「うん」」


俺は2人に手伝ってもらい電柱を6メートルほど登る。


少し山の方に作られたこの高校からならある程度の島の様子が見える。


腕時計で今の時間を見ると9時6分。


まだ異世界の生物がこっちに来ていてもおかしくない。


ピカッって少し光るとそこに異世界の生物が来ている。

これはもう分かっていること。


腕時計でピカッっと島の何処かが光る場所と時間を経っていると今は一分ごとに一回ピカッっと光っている。


9時を過ぎても未だに来続けているということだ。


島の全体を見る。


すると一箇所だけずっと光り続けている場所がある。


どうしてずっと光っているんだ?

まさかずっと異世界の生物が来続けているということか?

いや、違う。異世界の生物は基本的により人間の多い場所に集まってくる。

そしたら一番人が今いるところは公民館。

あのずっと光っているところから公民館に行くにはあの空き地を必ず通らなければならない。


でも、もう2分も経っているのに一匹も通っていかない。


もしかするとあれはこちらの世界から異世界に渡る方法なんじゃないのか?

こちらに来ることが出来るならあちらにも行けるはず。


この島で逃げ回っても命はない。


なら掛けるしかない。


あちらの世界でも人間が生きていけると。

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