最終話 あの日の好きを今ここで
オズを含めた皆が命に別状はなく、オズも無事に自分の足で帰宅してきた。
神父とシスター見習いはそのまま王国の牢獄へと連れていかれて、正式な裁きの時を待つことになった。
フィーネはオズの傷の手当てをしながら、今気持ちを言うべきか少し悩んでいた。
こんなときにする話じゃない、と思って口をつぐんだのだが、なんだか今だからこそ言わなければならない気がした。
そうして意を決して彼女はオズへの気持ちを伝え始める。
「オズ」
「ん、なに?」
「あの、あなたと会ってだいぶ経ちますよね」
「そうだね、婚約者のときからするとかなり」
フィーネは包帯を巻き終えると、オズの目を見つめて思いきって言う。
「好きっ!!! ……みたいなんです」
最後の言葉に少し不安を覚えたが、なんとなく言わんとすることは伝わり、逆にそのたどたどしさや初々しい感じがしてかわいく思えた。
顔を赤くしながら、それでも一生懸命に気持ちを伝えた彼女。
オズはソファから立ち上がってゆっくりと語り出した。
「僕はね、非情な人間というか、嫉妬深いんだ」
「え?」
「君を傷つける者は絶対に許さない。君を捨てた伯爵家はね、税金で不正をしていてね、それを暴いて彼らは牢獄にいる」
フィーネにとって初耳だった。
彼らに虐げられた過去は消えることのない傷として残っていて、そして彼らによってオズとの婚約生活も終わりを迎えた。
「それに、君のお母さんは今僕の親戚の家で無事にいるから安心してほしい」
「本当ですか?!」
本当の母親のことは常に心配しており、気にかけていたフィーネからすると、とても嬉しい情報だった。
フィーネは思わず口元を覆って涙を流して、よかった、と小声で話す。
「今度、一緒に会いに行かない?」
「いいのですか?」
「もちろん、僕の奥さんとして紹介したいんだ」
「奥さん……」
その言葉に再び赤みを帯びた彼女の頬をそっとオズは優しい手つきで撫でる。
「フィーネ、君のその胸の赤い跡は何か知っているかい?」
「え?」
そう言えば、昔から赤い跡があり、これが原因でいじめを受けたり、身請けに失敗した。
気味悪がられる原因であったのだが、フィーネにしてみてもどうしてこんな跡があるのか不思議だった。
すると、オズはもう一度フィーネの横に座ると、その跡をそっと触りながら言う。
「それはね、吸血鬼の花嫁の証だよ」
「吸血鬼の花嫁?」
「ああ、花嫁になる者の証としてある。そしてその対になるものとして、僕の胸には青い跡がある」
そう言って自分の胸にある跡を見せると、ふっと優しい微笑みを向ける。
「こうしてみると、薔薇みたいじゃない?」
確かに、よく見ると二つの跡は薔薇のような模様に見えており、綺麗なものに思える。
フィーネはそっと自分の胸の跡を撫でると、今度はその腕をオズに掴まれて瞳を見つめられる。
「僕の花嫁、フィーネ。僕のお嫁さんになってくれますか?」
その目は赤く光った目をしていて、彼が人間でないことを如実に表している。
彼の艶めかしい唇と、そして色気の溢れる瞳を見て、彼女は覚悟を決めて告げた。
「はい、私をオズの花嫁にしてください」
「もう逃がさないからね?」
そう言って二人の影は重なった──
吸血鬼と人間が恋をして惹かれ合い、そして共に過ごすことを決めた。
決して同じ刻の流れではない二人は、いつか決断する時が来るのかもしれない。
彼女はその時にどんな選択をするのか。
彼と永い刻を生きる選択をするのか、人間のままでいるのか。
でもそれはまだ先の話。
今はただ、彼女はようやく自分の恋に気づき、幸せを手に入れたところ──
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『悪役令嬢は最強術師です!~ハイカラで華麗に街を救ってたら、なんか溺愛されまくりです?!~』
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