第16話 教会への裁き(2)
オズの見送りをした後、フィーネは自室で考え事をしていた。
(オズに抱きしめられた時、ドキドキした……それに、お茶をしているときも、ご飯を食べているときも、オズが一緒にいるとそわそわする)
そんな感覚に陥ったことがなかった彼女は何か悪い病気なのではないかと思った。
未知の病気だったとしたら……、そんな風に不安を覚えたフィーネは、横で彼女のドレスを整理していたリンに問いかける。
「ねえ、リン」
「なんでしょうか」
「オズと一緒にいるとなんだかこう落ち着かないの。そわそわするというか、なんというか、鼓動が速くなってしまって……」
リンは手を止めて主人であるフィーネのほうに向きなおると、彼女に対して話し始めた。
「わたくしは、少なくともオズ様に対して鼓動が速くなる、といったことはおこりません」
「やっぱり病気なのかしら」
「少なくともわたくしはそのような経験をしたことはございませんが、どんな名医でも治せないと思います」
そう聞いてフィーネは急に不安感が増し、俯いてしまう。
ああ、これは何か勘違いさせてしまったのだなとリンは反省すると、直球に今度は言い直した。
「オズとフィーネ様は婚約者であって、それでもう夫婦ですから。恐らく、愛し合っているのでは」
「あ、あ、愛し合ってるっ?!」
あ、今度は直球過ぎたか、と言った感じで反省をした、ようなしてないようなリンが目を逸らす。
リンが再びフィーネに目を遣った時には、顔は真っ赤になり、そしてどうしようと言いながらあたふたとしている。
「あ、私は食事の支度がありますので、これで失礼します」
ほぼ一方的に彼女を一人すると、廊下を出た時に少し立ち止まって空を見る。
ふっと笑って、なんだか可愛い人だな、とフィーネのことを思いながら立ち去った。
食事を終えた後も、フィーネはリンに言われたことで頭がいっぱいだった。
(私が鈍感だったのね……きっとたぶんこれは……)
ようやくオズのことが異性として好きだと認識した彼女は部屋の中を落ち着かない様子で歩きながら、オズの帰りを待っていた。
幼馴染であり、婚約者であった彼は幼い頃はお兄さんのように思っていた。
実際にそう言われたし、まだ小さかったから純粋によく遊んでくれるお兄さん的存在だと。
だが、再会した時には立派な男性になっていて、それでいて優しくて見目麗しくて、そして自分に愛情を向けてくれる。
パーティーでもフィーネを守り、そして改めて愛を誓ってくれた。
そんな彼を意識しないわけがない。
(この気持ち、伝えていいのかな……)
そんな風に思っていた矢先、ドアが大きな音を立てて開き、リンが珍しく焦った様子で入って来る。
「フィーネ様……オズ様が……教会で火事に巻き込まれたと……」
「え……?」
リンが王国の衛兵から語られた事実を彼女が動転しないように少しずつ話す。
教会で神父たちを咎めていた際に火炎瓶で自殺しようとして、一時的に火事が起こったこと。
そして──
「オズは……?! オズは無事なの?!」
「無事です。一部やけどを負った程度で、死者は神父ら含めて一人もいないと」
「よかった……」
あらかじめ何かあった時のためにオズが教会に先に手を回して、神父とシスター見習い以外を事前に避難させていたことが功を奏した。
すると、玄関のほうで馬車が戻った音がしてフィーネは急いで玄関のほうへと向かった。
(お願い、お願い、無事な顔を見たい……! オズ……!)
いつもであれば廊下を走ると叱られるのだが、オズに会いたい想いでひた走る。
ようやく見えた玄関の入り口では、無事に帰ってきたオズの姿があった。
「オズっ!!」
フィーネは叫んで涙を流しながらオズの胸へと飛び込んだ。
それをよしよしといった様子で頭をなでながら、オズはその気持ちを受け止めて言った。
「ただいま、フィーネ」
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