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第15話 教会への裁き(1)

 フィーネは仕事へと出向くオズを見送るために玄関へと向かっていた。

 馬車に彼が乗り込んだのを見届けていつものように手を振ると、なぜか今日は馬車から降りてきた。


「オズ?」


 オズは不思議そうに首をかしげるフィーネを勢いよく抱きしめる。

 突然の出来事へと驚きと、まわりの使用人たちに見られているという恥ずかしさで慌てふためく。


「ど、どうしたのですか?!」

「今日は大切な仕事なんだ、だからフィーネで充電してから行こうと思ってね」

「そうでしたか……では……」

「──っ!!」


 フィーネはオズの背中に腕を回して自分がうけている以上に強い力で抱きしめて、目を閉じながら自分の気持ちを込める。

 しばらくぎゅうっと抱きしめると、顔をあげてオズに微笑みかけた。


「私でお役に立てるかわかりませんが、精いっぱい頑張れってこめてみました。いかがでしょう……?」

「──っ! もうっ! この子はっ!!!」


 思わずオズは自分の中の愛情が爆発して彼女をもう一度抱きしめ返す。

 ああ、なんだかもう、彼女に一生勝てない気がする。

 そんな風に思いながらオズは名残惜しそうに身体を離すと、馬車に乗り込んで仕事へと向かった。




 オズが向かったの教会の前であり、そこには一緒に来た側近のロルフ、そして合流した衛兵がいた。

 皆、気を引き締めて戦場に向かうようなそんな面持ちでいる。

 無理もなかった。

 これまでしっぽを掴めなかったここの教会の神父の様々な不正、主に税の取り立てと人身売買の罪の証拠をつかめ、いよいよ罪を裁くときがやってきたのだ。


(フィーネを苦しめたこの教会を、そして神父を裁く……)


 覚悟を決めたオズはロルフと衛兵に合図をして突入をする。


 この時間は礼拝堂にいるという情報を掴んでいるため、その情報を頼りに一気に突入すると、情報通り祈りを捧げる神父と傍らにはシスター見習いの女性がいた。


「なんですか、突然っ! ……っ!! エルツェ卿……!!」

「お久しぶりですね、お元気にしていたでしょうか?」

「なぜ、こちらに……」

「それは自分の胸に手を当ててよく考えたらいかがですか?」


 そんな風に会話する神父の横で気の強そうなシスター見習いが、何かに感づいたのかそっと忍び足で逃げようとするが、それを衛兵を止める。


「ふふ、逃がしませんよ。あなたも同罪ですし、何より昔フィーネに罪をかぶせたのはどこの誰でもない、あなたですからね」

「──っ!!」

「わからないと思いましたか? 実はあの夜にも目撃者がいたんですよ。火事があった時に水汲みにいっていたフィーネと話していた人がいて、証言してくれましたよ。あなたは口封じに彼女の弱みをバラすとちらつかせて脅していたようですが」


 それを聞いたシスター見習いは舌打ちをして、悔しそうな表情をする。

 その顔には反省の欠片も見えずに、そのことにオズは冷たい視線を向けながらも、彼女にも裁きをすることを心に決めた。


「神父も神父なれば、見習いも見習いですか。神父、あなたはこの子を利用して人身売買や金品の盗みをしていましたね?」

「そんなことはしていない」

「いいえ、調べはついています。ここにいた子供たちを貴族に売ったり、そしてこの子には貴族の家に身請けされるように仕向けてそのまま金品をかすめとった。それも、きちんと不正で得た汚い金を持っている貴族のもとに身請けされるようにして、王国へ報告できないようにした」

「神にその身を捧げた私が、そんなことするはずありませんよ」


 余裕の表情を浮かべる神父、そしてその様子を見て安心したような素振りを見せる見習いに、オズはさらに追及を続ける。


「私がここまで来て、こうして裁きを下しているのです。証拠を掴んでいないわけないでしょう?」

「……」

「複数貴族からの証言、そして人身売買先の船の持ち主の特定、さらに金の流動を含めた教会の不正帳簿の数々。ここにいる私の側近のロルフが全て書類を洗い直して矛盾を見つけましたよ」

「んぐ……」

「それから、人身売買は船の持ち主が細かく日記をつけてましてね、照合できましたよ。名前もここにいた子と同じ。いろいろ雑な仕事ですね、粗が目立ってましたよ」


 そう言うと、書類をロルフから受け取ってかざしながら神父と見習いのシスターに見せる。

 二人は悔しそうに歯を食いしばって身体を震わせると、その場に倒れ込む。


「神父、あなたは牢獄で一生罪を償いなさい」


 神父に低い声色でそう言った後、横にいて悔しそうに床を見つめる彼女に声をかける。


「あなたの一言がフィーネの運命を、人生を変えてしまった。あなたのついた嘘で誰かを不幸にさせた、その罪をきちんと償いなさい」

「……ふん」


 納得のいかなそうな表情を浮かべる彼女に、思わずオズは声を荒らげる。


「フィーネがどれだけ苦しい思いで地下牢で過ごしたか、わかるか?! 心からの反省をしない君に救いはいらないだろう」


 そう言って、衛兵から槍を取り上げると、そのまま彼女に向ける。


「ま、待ちなさいよっ!! あなた人を殺す気なの?! やめてっ!! なんでもするから!! お願い!!!」


 涙ながらに懇願する彼女の様子を見たオズは、槍を彼女の横に思い切り指すと、そのまま出口に向かって歩き出す。


「安心しなさい、君も一生牢の中だよ」


 そう言うと礼拝堂を出ようとした。

 衛兵たちが神父たちを取り押さえようと動いたが、一歩遅かった。


 神父の放った火炎瓶によって、礼拝堂は火で覆われた──

いつも読んでいただきありがとうございます!!

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