第92話 ラッキースケベ(極)
レオナねえの部屋の前に立ち、ドアをノックする。
トントン
・・・・・・返事がない。
トントントントントントン
ダメだなこりゃ。ぐっすり眠ってるのだろう。
でもライガーさんを待たせておくわけにもいかんから叩き起こさなきゃだ。
ガチャッ
「レオナねえ、ライガーさんが来、うぇええええええええ!?」
―――ベッドの上に裸の女体がいっぱい転がっていた。
・・・もしかしてこの三人ってそういう関係だったの!?
いや、うん、まあそういうこともあるだろう。否定はせんよ。
これがもしおっさん三人とかだったら『鋼扇屋』の銘が刻まれた伝説の包丁を召喚して大暴れするだろうけど、女性三人ならむしろご褒美です。尊いです。
しかし困ったぞ。ボクはレオナねえを起こさなきゃいけないのですよ・・・。
バタン
とりあえずライガーさんには見せられない現場なのでドアを閉めた。
ここは見なかったことにしてボクも立ち去りたいのですが、ライガーさんを待たせているのでそうもいかない。
えーい、もう知らん!!
「レオナねえ!お客さんが来てるから起きて!!」
・・・・・・起きないな。
現場に突入してレオナねえを揺すってみる。
「レオナねえ、お客さんが来てるんだってば!ライガーさんが来てるの!」
ゆさゆさ
「う~ん・・・」
レオナねえではなく、手前にいたアイリスお姉ちゃんが目覚めたようだ。
「あれ?クーヤちゃんがいる・・・」
ガバッ
「にょあっ!?」
「うっひょ~~~~~~~~~~~~~~!」
アイリスお姉ちゃんに捕獲され、思いっきり抱きしめられた。
「うぷっ!ちょ、ちょっと待って!レオナねえを起こさなきゃいけないの!」
「あ~~~、可愛いな~もう!」
おっぱいに埋もれて、えらいことになっております!
ラッキースケベは嬉しいのですが、今はそんな場合では・・・。
「ん~・・・、あるぇ?クーヤちゃん?」
ナナお姉ちゃんもお目覚めの様子。
「のっひょ~~~~~~~~~~~~~~!!」
今度は後ろからもナナお姉ちゃんに抱きしめられ、完全に絡めとられた。
「朝からクーヤちゃん補給ができるなんて最高の家ね~!」
「わぷっ!お、お姉さま方!今はそれどころじゃないのですうううううう!!」
結局10分近くこの世の天国をいうモノを体験した所で、やっとレオナねえが目覚めてくれた。
そして三人共服を着てリビングへと移動する。
とにかくワケが分からないまま、着替えまで全部見学させていただきました!
◇
ゴトンゴトン
そして今はライガーさんの馬車に揺られながら、ベイダーさんの工房へ移動中。
「えーと、サスペンションだっけか?」
「うん!とうとう完成したみたいだから確認に行くの。今乗ってる馬車にはまだ取り付けてないんだけど、工房に置いてある馬車にはもう取り付けたんだって!」
「えーと、それを付ければ馬車が快適になるの?」
「私達が知らない間に随分と面白いことしてたのね~」
呼ばれたのはボクとレオナねえだけだったんだけど、一緒にいたアイリスお姉ちゃんとナナお姉ちゃんもついて来ることになったのだ。
「しかし到着まで暇だな~。本でも読んで時間を潰すか」
レオナねえが持って来たバッグから取り出したのは、行方不明のエロ本だった。
「ぶはッ!!なんでエロ本なんか持って来てんのさ!?」
「あ、そうだクーヤ!これもストックってのをすれば、痛んだり破れたりしても元に戻せるようになるんだよな?」
「・・・え?あ~、うん、まあそうだけど・・・」
「じゃあ頼むぜ!こんな貴重な本が破れでもしたら大変だからな!」
いや、それはいいんだけどさ・・・、エロ本を持ち歩く女ってどうなのよ!?
とりあえずエロ本をストックして、再召喚したモノをすぐ手渡した。
―――エロ娘三人衆が、ケラケラ笑いながらエロ本を読んでいる。
うん。まあいいんだけどさ、この世界の女性って赤裸々スケベ過ぎません?
あのお淑やかそうなお母さんですら、みんなと一緒になってエロ本に夢中になってたような気がするし・・・。
まあ子供がいっぱいいるのだから、そういうことに興味津々なのはわかりますが、『エロい人って思われるのが恥ずかしい』みたいな照れが無いのかも。
その辺の考え方が、元いた世界とは違うのかもしれない。
なるほど、ラッキースケベ発生率が高いわけだ。
マジで脱童貞のチャンスですぞ!本気で5歳児なのが悔やまれる・・・。。
でもレオナねえ達って、女性しか愛せないとかそういうのでは無いのかな?
あのエロ本は普通に男女の絡みがあるヤツだし。・・・ようわからんな。
馬車が止まった。
ガチャッ
「着いたぞー。さあ降りてくれ!」
みんなと一緒に馬車を降りると、目の前に大きなレンガの建物があった。
前回と同様、鍛冶屋の中から何かを叩く音が聞こえる。
ボク達もライガーさんについて鍛冶屋の中に入って行く。
「おーーーーーい!!ベイダーのおっちゃーん!連れてきたぞーーーーー!!」
少し待つと、髭もじゃのマッチョが登場した。
「「ちゃーーーーーっス!!」」
「ん?なんか女性が増えてないか?」
「レオナの冒険者仲間だ。仕事柄営業に役立ってくれるだろうから巻き込んだ」
「初めまして!レオナの仲間のアイリスです」
「同じくナナです!」
「ああ、よろしくな!・・・ふむ。問題は無かろう」
やっぱ規模のデカい一大プロジェクトになってんなこれ・・・。
「ここまで従来の馬車に乗って来た所だから、あの馬車に乗ればサスペンションの効果がすぐ体感出来るハズだ」
「儂ももう一度乗り比べてみたい。頼めるか?」
「いいだろう。じゃあ外に出よう」
よーし、サスペンションのデビュー戦だ。
いや、試乗だからデビューとは言わないか。
とにかく、今乗って来た馬車とどれほどの違いがあるのか楽しみだな!