第65話 ペットを飼いたいと駄駄を捏ねる
びしょ濡れのまま家に帰ったら、すでにティアナ姉ちゃんが学校から帰って来ていて、『一体どうしたの!?』と聞かれたので、タマねえと遊んでたら水溜まりに落ちたって説明した。
かなり端折ってるけど、嘘はついてません!
で結局叱られながらもお風呂に入れてもらい、無事復活することが出来ました。
叱られてる時、びしょ濡れのタマねえも横にいたので一緒にお風呂に入ったのですが、いかにも小学生って感じの膨らみかけおっぱいが素晴らしかったです!
でもタマねえは10歳くらいのハズだから、少し身体の成長が早い感じなのかな?これは将来に期待が持てますね!
そして今日は、タマねえもウチで食べてくことになりました。
そのタマねえと目を合わせると、彼女は神妙な顔つきで一つ頷く。
作戦遂行の合図だ。
「ねえ、クリスお姉ちゃん!家で動物を飼ってる人とかっているの?」
食事中のクリスお姉ちゃんがショタと目を合わせた。
「動物?そうねえ・・・、フィ&=クを飼ってる人は結構多いわよ?でも、それがどうかしたのかしら?」
ペットって単語は『フィ&=ク』ね?よし覚えた。
「すごく可愛い動物を拾ったから、ウチで飼いたいの!・・・だめ?」
目をウルウルさせ、家族一人一人に視線を送る。
「ペットを飼うのは大変なのよ~?ちゃんとお世話出来るのかしら~?」
「可愛い動物って『テミテミ』かな?それなら私も前に飼いたいって思ったことはあるけど、ペットって絶対いつか死んじゃうんだよ?その時すごく悲しいんだよ?」
「わああああ!テミテミーーー!リリカもかいたーーーい!!」
「ペットか~。いたら面白いけど、トイレとか教えるの大変だぞ~」
「私はあまり賛成出来ないわねえ。抜け毛とかで家の中が汚れちゃうでしょう?」
くっ、なんかみんなの反応が悪いな。これは大ピンチだ・・・。
でもタマねえは力強い眼差しで『押し切れ』と言っている。
「ちゃんと世話するからーーー!!抜け毛とかも絶対大丈夫だからーーー!」
「絶対大丈夫ってのは言い過ぎじゃ?毛なんて毎日抜けるよ?」
「ホントに大丈夫なの!話を聞けばわかるからーーー!」
「そのペットって、どれくらいの大きさなのかしら~?」
「テミテミって、こんなもんじゃない?」
ティアナ姉ちゃんが両手を40㎝くらい広げた。
その『テミテミ』ってのは猫みたいな動物なのかな?やべえな、パンダちゃんめっちゃデカいんだけど!
「えーとねえ、もうちょっと大きい動物なんだけど・・・」
「テミテミじゃないのか?それより大きいとなると何だ?」
そういや、レオナねえなら味方になってくれそうじゃね?
魔物と友達みたいなもんだろうし!こうなったらもう実際に見せてみようか。
「じゃあさ!呼び出すから実際に見て判断して!ダメだったら諦めるから」
「呼び出す?近くに連れて来てるんか?」
「えーと、えーと・・・、ちょっと待ってて!」
椅子から降りて、リビングの広い場所に移動した。
「じゃあ呼び出すね!パンダちゃん召喚!」
シュッ
クーヤちゃんの目の前に、白黒模様のパンダちゃんが出現した。
「「ぶはッッッッッッッッッッッッ!!」」
それを見たタマねえ以外の全員が、食べている物を噴き出した。
「な、なにコレ!?」
「完全にナメてた。クーヤが普通のペットなんか連れて来るわけ無かった!!」
「ちょ、ちょっと!!え!?こんなの見たことないんですけど!!」
「これはお母さんも驚いたわ~!ちょっと大き過ぎないかしら~?」
「わわわ、はわわわわわわ・・・・」
まあ、さすがに驚きますよね。可愛いけどめっちゃデッカイもん。
「えーとね、ボクの召喚獣だから絶対に悪いことしないの!だからトイレもしないし、毛が抜けたら消すだけでいいの」
「召喚獣だって!?ってことは魔物なのか?いやいや!こんなの知らないぞ!!」
「『ポレフィータ』って名前の魔物だよ」
「ポレフィータ!?いや、アイツってもっと汚くて真っ黒だし、肉だって臭くて不味いから、冒険者にすっげー不人気な魔物なんだけど!!」
あー、パンダちゃんって泥んこ大好きだもんな。
おそらく日々の泥んこ遊びで汚れが蓄積され、冒険者と出会う頃には、もう泥が体に染み渡ったギットギトの酷い状態なんじゃなかろうか?
「召喚獣にすると、汚れが全部落ちて一番綺麗な時に戻るの!ねえねえ、触ってみて!すっごいふわふわだから!」
「確かにふわふわに見えるけど・・・。でも魔物だし、噛みついたりしないか?」
「パンダちゃん、人に怪我させるようなことしちゃダメだからね?」
『ブモ』
「ほら、絶対しないって言ってる!」
「『ブモ』って言っただけにしか聞こえなかったんだけど!!まあでも召喚獣なら召喚士の言うことには絶対服従だよな・・・」
ガタン
レオナねえが椅子から立ち上がり、パンダちゃんの側まで歩いて来た。
「しかし本当にポレフィータなのか!?全然面影が無いんだが・・・」
レオナねえが、恐る恐るパンダちゃんに触れる。
「・・・・・・・・・」
モフモフ モフモフ モフモフ
―――その毛並みの柔らかさに、レオナねえの顔が蕩けていく。
モフモフ モフモフ モフモフ
ガバッ!
そしてとうとう、パンダちゃんに顔をうずめてぐりぐりし始めた。
「なんだこりゃーーー!?めっちゃ柔らかいし、暖かいし、すごく良い匂いなんだけど!!うっひょーーーーー!!絶対飼おう!こいつぁやべーぜ!!」
―――――まずは一人。
「ねえ、クーヤくん」
来た。最大の難敵である、理論派ティアナ姉ちゃんが。
「確か、一人で魔物を倒さなきゃ召喚獣には出来ないハズなんだけど?」
「えーとね、あの屋敷の近くでタマねえと遊んでたらパンダちゃんが出て来たの!それでね、鉄板を出したらそれにぶつかって勝手に死んじゃったの!」
ごめんなさい、嘘です。もっと派手に戦ってます!
「テッパン?」
「屋敷に行った時に、ボクが出してみせた硬いヤツだよ!」
「ああ!アレかあ~。でも、もうあのお屋敷には行かないって約束したよね?」
「絶対屋敷には入ってないよ!ねえタマねえ!」
「うん。本当に入ってない」
面倒だ。ここは一気に畳み掛けよう!
食卓まで歩いて行き、ティアナ姉ちゃんの手を引いて、パンダちゃんの近くまで一緒に歩いて行く。
そしてパンダちゃんに顔をうずめているレオナねえの横にポイッと投げた、
モフモフ モフモフ モフモフ
モフモフ モフモフ モフモフ
3分もすると、ティアナ姉ちゃんの顔は『にへら』っと蕩けていた。
―――――これで二人目。
もう言葉は必要無い。
お母さんとリリカちゃんの手を引き、レオナねえ達の反対側に連れて行ってポイッと投げた。
モフモフ モフモフ モフモフ
モフモフ モフモフ モフモフ
―――残るは、抜け毛反対運動をしていたクリスお姉ちゃんただ一人。
「クーヤくん。私は他の人達みたいに、そう簡単には堕ちないわよ!?」
クリスお姉ちゃんの手を引き、大サービスでパンダちゃんのお腹にポイッと放り投げた。
モフモフ モフモフ モフモフ
モフモフ モフモフ モフモフ
「無理~~~~~~~~~~~~~!!何なのこの柔らかさは!こんなの飼う選択肢以外無いじゃない!!」
一仕事終え、額の汗をぬぐいながら、食卓にいるタマねえと固い握手を交わした。
我々は厳しい戦いに勝利したのだ!