第61話 連夜の大当たり!
遠征帰りの森の中。
カブトくん達は樹液を舐め、メルドアは狩った魔物で晩餐会をしていた。
今日はよく頑張ってくれたので、そのご褒美です!
「召喚獣ってお腹空くの?」
「メルドアはよく分からないって言ってたけど、食べると満足するみたい」
おそらく魔力だけで空腹は満たされるんだと思う。
でも『それはそれ、これはこれ』ってヤツでしょう。
「今日仲間にした召喚獣は出さないの?」
「1体調べると全部調べたくなるでしょ?数が多すぎるから明日にする」
「そっかー。でも明日は学校・・・」
「お昼まではリリカちゃんと遊んでるから、その後一緒にこの森に来て呼び出してみようよ。クエクエはお休み」
タマねえの顔がパッと笑顔になった。(当社比)
「あ、食べ終わったみたい。メルドアが伸びしてる」
「ホントだ。猫みたい」
「ねこ?」
「ああ、ボクの世界にいた動物なんだ。大きさはこれくらい」
大体これくらいだろうって、適当に手を広げた。
「小っちゃいね」
「うん。でも可愛いんだよ」
この世界にも魔物じゃない普通の動物がいるみたいだし、似たようなのはいるかもしれないね。
「よし、じゃあ帰ろっか!カブトくん達、そろそろおしまいだよ~」
カブトくん達はみんな素直に帰って来て、あひるポンチョにしがみついた。
『オン!』
―――そして無事遠征を終えたショタ一行は、愛する我が家へと帰還した。
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夕食後、恒例のアイテム召喚をするため、全員が所定の位置に着いた。
なんか最近は皆がこれを楽しみにするようになったので、『お風呂はアイテム召喚の後』って流れになっているのだ。
そしてなぜかメンバーの中にはタマねえもいる。
今日は自分の家で夕食だったんだけど、アイテム召喚を見るためにわざわざやって来たのだ。
これは変な物を出せませんね!
まあ恒例行事ですので、毎日がプレッシャーなんですが。
「昨日の偉業を思い出せ!アイテム召喚!!」
ヴォン!
眩しい光が雲散し、そこには縦横30㎝くらいの綺麗な箱が出現していた。
「箱だ!これは期待できるかも!!」
とりあえず持ち上げてみる。
よし!そこそこ重いから、少なくとも空っぽの箱じゃないぞ!
見た感じ、お歳暮とかそういう感じの何かだと思うんだよなーこれ。
食い物だったら大当たり!油なんかだと小当たりってとこかな?
いや、無限シリーズなんだから油でも中当たりだな!
そして皆が見守る中、意を決して箱を開けた。
「きっつぁああああああああああああ!コーヒーセットやーーーーー!!」
ショタの喜びようとは裏腹に、ギャラリー達には見た目じゃさっぱり理解出来ない一品だった。
「これはなあに?」
「綺麗な器が入ってるわね。相変わらず文字が読めないわ」
「なんか凄いね!意味は分かんないけど高級そう!」
ちなみに箱の中に入っていた物は、『インスタントコーヒー』『クリーミングパウダー』『グラニュー糖』の3点セットだ!
コーヒーはともかく、このグラニュー糖って、どう考えても超大当たりだろ!!
普通ならスティックの砂糖とかだと思うんだけど、なぜかこれは瓶の中にドサッと入ってる。まだストック前だけど、砂糖が無限に使えるのですよ!?ヤバすぎる!!
あ、そうだ。ストックする前にしっかり準備しないとな。
・・・いや、これは新品状態が良いような気がする。
どうせ開封してからも、しばらくの間使える量だからな。
呼び出した時、完全に新品の方が気分が高揚するんだよね。
よし、このままの状態でストックだ!
「ストック!」
召喚獣リストの文字化けを、コーヒーセットに書き変える。
「コーヒーセット召喚!」
無限化されたコーヒーセットが目の前に出現した。
「よし、早速飲んでみよう!!あ、お湯が必要だ・・・」
「飲む?飲み物なの?これ」
「まだクーヤにしかわからん状態だからな~、まあ見てようぜ?」
「なぜか分からないけど、これは私にとって大きな出会いの予感がするわ」
クリスお姉ちゃん、おそらく貴女の読みは正解です!
コーヒーに嵌ると、完全に抜け出せなくなりますぞ~!
「あ、お母さんちょっとお願いがあるの!」
「なにかしら~?」
「電気ポット召喚!」
ショタの目の前に電気ポットが出現した。
「うわ、また新しいのが出たよ!!」
「これは初めて見たな。クーヤの奴どんだけ隠し持ってるんだ!?」
「しかも増え続けてる」
こらタマねえ!入手した召喚獣のことは秘密ですよ!
「この中に水をいっぱい入れて来て欲しいの、魔法の水じゃない普通の水ね!」
「はいは~い!ちょっと待っててね~」
えーと後は・・・。
「お姉ちゃん達は、お湯を入れても平気なカップを人数分用意して下さい!」
「カップね?わかった」
「家からカップ持って来た方がいい?持つとこ付いたやつだよね?」
「タマちゃんの分もあるから大丈夫よ」
「リリカねー、あかいやつ!」
「あいよ!いつものヤツだな」
そうこうしてる間に電気ポットくんがお湯を沸騰させ、ランプが保温モードに切り替わった。
「コーヒーってのは苦みのある大人の飲み物なんだけど、とりあえず最初だから甘く作るね!」
カップの大きさが統一されていなかったので全部上手くいったかわかんないけど、とりあえず全員分の用意が出来たので、カップにそれぞれお湯を入れてもらった。
初回サービスで、ショタが小っちゃいスプーンを使って、全員分かき混ぜる。
「完成でーーーーーーーーーーーーす!」
わーーーー パチパチパチパチ
「じゃあ飲んでみて下さい!リリカちゃん、熱いから注意してね!」
ズズズ・・・
「苦いけど甘い!!」
「複雑でよく分からない飲み物だな?でも嫌いじゃないぞ!」
「あつーーーーい!」
「甘いけど苦い。なにこれ?」
「あらあら~!お母さん、これ結構好きかも~♪」
コーヒーを飲んだ人の評価はマチマチだった。
しかしその中に一人だけ、感動で指先を震わせてる女性がいた。
「コレよ・・・、コレだわ!私が長年求め続けていた飲み物は!!」
そう、クリスお姉ちゃんである。
彼女はとうとう、運命の出会いを果たしたのだ!
「今回はボクが適当に作ったけど、粉の量で好みの味に出来るから、自分で色々試してみてね!!この飲み物の名前は『コーヒー』だよ」
「『コーヒー』ね?覚えたわ!!本当にクーヤくんは最高ね!」
「にょわあああ~~~~~~~~~~~!!」
コーヒーに感動したクリスお姉ちゃんに、過去最大のキスの雨をくらいました!