第520話 ピコねえ親子に女神の湯の秘密を明かす
ティアナ姉ちゃんが湯治で視力が良くなったという情報を得て、眼鏡と共に人生を歩んできたモコねえ親子が大慌てでやって来てしまったので、今日はモコねえ親子もボク達と一緒に夕食をいただくことになりました。
ただ迷惑かけるのは嫌だからと、モコねえのお母さんがランゴランドンを捌くのを手伝ってくれているとこなのですが、ボクとロコ姉ちゃんとタマねえで、チョックルを塩茹で以外の方法で美味しく出来ないか考えていた。
「やっぱり、ホワイトソースをぶっかけると美味しいと思うのですよ」
「クリームシチュー?」
「あ~、クリームシチューに入れても美味しそうですね!でも今日は別の料理で攻めてみたい気分かも!」
「何か良い作戦があるの?」
「ボクは『グラタン』が食べたいのです!」
「「グラタン?」」
「でもマカロニが無いので、グラタンっぽいナニカを作るってことで!」
「美味しいなら何でもいい」
「でも料理を創作してる時間なんて無いよ?」
「ぐぬぬぬ・・・。しょうがないので、ほぼクリームシチューでいきます。最後にチーズを乗せて火で炙れば、大体何でも美味しくなるのです!」
というわけで、三人で相談して具材を決め、肉の代わりにチョックルを入れた濃いめのクリームシチューを作りました。
そしてロコ姉ちゃんが、あの食器屋さんで手に入れたちょうどいい大きさの器に、モコねえ親子を含めた人数分振りわける。
アイテム召喚で手に入れた、最初からパラパラになって袋に入っているぶっかけ用のチーズを最後に上からぶち撒けて、ハムちゃんの火魔法でゴゴゴっと炙って焦げ目をつけてもらって完成!
昔は全力攻撃しか出来なかったのですが、よく使うハムちゃんだけですけど、魔法の威力を調節出来るほど成長したのだ。
ほぼ同時にランゴランドンの切り身も焼き上がり、いざ実食です!
「美味そうな匂いだな!」
「クリームシチューっぽいけど、上が少し焦げてるね~」
「クーヤがハムちゃんに頼んで、火魔法で炙ってもらってた」
「料理教室で登場しなかった料理よね?」
「こんなの美味しいに決まってるじゃない!」
「ボクとロコ姉ちゃんとタマねえで作った『チョックルグラタン』です!冷めないうちにいただきましょう!」
「「いただきまーーーーーーーーーーす!」」
パクッ 熱っ!
むしゃむしゃ
おお!マカロニが入ってないからボクの知ってるグラタンとは違うけど、チョックルだけじゃなく貝まで入れた海鮮グラタン、メッチャ美味しいじゃないですか!
「「うまっ!!」」
「クーヤ、これ最強かもしれない!」
「貝はどうかなーと思ったけど入れて正解だよ!」
「チョックルがメチャうまじゃないですか!」
「上に乗ってるドロドロしたのはバターかしら?」
「いえ、バターじゃなくてチーズなのです。でもミミリア王国にもリナルナにもハイドリムドにも売ってなかったから、他の国を攻めないと手に入らないかも」
「チーズを探す旅か・・・。でもこんなの見つかるのか?」
「どこかへ旅行した時に、あればいいなーくらいの感覚で探してみる感じでいいのではないでしょうか?」
「とりあえずクーヤちゃんの近くにいれば食べられるからね~♪」
「本当に美味しいですねこれ!」
「うまうま」
もちろんランゴランドンもメチャうまで、今日も大満足の夕食でした!
自分達で食材をゲットしてるから、パンと野菜以外無料ってのがヤバすぎです。
そして夕食の後は大浴場なのですが、案の定マダムの半数がやって来ました。
今日来られなかった人も、近いうちにまた来るでしょうね。
カポーーーーーン
ボク的にはちょっと予想外だったのですが、ピコねえのお母さんが今日も大浴場に来たので、もうハム水のことを教えてあげることにしました。
なぜかというと、『聖なる水』の存在を知らない人が混ざってると、眼鏡勢が視力の話をできないですし、ピコねえのお母さんって眼鏡美人なんですよ!
この世から眼鏡美人が一人いなくなってしまうのは人類の損失と言えますし、少し寂しいですが、視力が良くなるのは全眼鏡民の夢ですからね~。
「ピコねえとピコねえのお母さんに、この大浴場、『女神の湯』のすごい秘密を教えてあげるのです!」
「大浴場の秘密?王の秘宝が隠されているとでも言うのかね!?」
「いえ、そういう冗談じゃなく、ガチなヤツです」
「やっぱり肌がスベスベになることかしら!?」
「ママ、私達の読みが当たってた予感!!」
おお!昨日家に帰ってから美肌に気が付いて、二人で話し合ってたのかも。
「でも今から話すことは国家機密なのです。もしこの秘密が外部に漏れたら、街中のマダム達が大奥に突撃してきて最悪なことになるし、アホ貴族に絡まれたり、他国との戦争になったりしますので、絶対しゃべらないと誓ってください!」
「「ブホッ!」」
「いやボウズ、さすがにそれはちょっと大袈裟すぎないかい?」
「怖くて聞けなくなったんですけど!」
「大袈裟でもなんでもなくガチです。そしてピコねえ親子以外の人達はみんなある程度知っていて、秘密を守ってくれてます」
ピコねえ親子が周囲を見渡すと、話を聞いていたみんながウンウン頷いた。
「ママ、これガチなやつ!!」
「ヒエーーーーー!正直聞くのが怖いけど、もう私達もこうして大浴場に来てしまっているわけだし、秘密を守ると誓うしかないんじゃないかしら?というわけで、秘密は絶対漏らさないと誓うわ!ほら、ピコルータも!」
「もし秘密を漏らしたら、その場で自害すると誓うでござる!」
「「いや、死なれても困るから!!」」
自害するとか言ってるけど、それくらい覚悟があるなら問題ないですね!
「それほどの覚悟があるなら合格です!それでは、女神の湯に使用されている『聖なる水』の効能を教えましょう」
ピコねえ親子だけじゃなく、全員が息を飲んだ。
「まずは、ピコねえとママさんが言っていたように『美肌効果』です。これだけでも女性なら誰もが手に入れようとするでしょうから、情報が漏れた瞬間マダムの大群が大奥に押し寄せてきます。もちろん貴族も黙っちゃいないでしょうね」
マダム達がウンウン頷いた。
「そして次に『癒し効果』です。女神の湯に浸かってるだけで、身体の悪い所がどんどん良くなっていきますし、時間を掛ければ大怪我すら癒します。そして病気知らずの健康体になります!」
「「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!」」
あの地獄の不味さに耐えながら聖なる水を飲むことで健康になれるって情報は、お姉ちゃん経由で家族に伝えられていましたが、女神の湯に浸かってるだけでいいと聞いて、歓声が巻き起こりました。
「ボクが知ってる効能はこの二つですね。しかしここで新情報です!女神の湯に入ってるうちにティアナ姉ちゃんの視力まで良くなりました。見てください!あの永世眼鏡っ娘が眼鏡をかけていないのです!」
バッ!
その場にいた全員がティアナ姉ちゃんを見た。
「視力が良くなるですって!?」
「私も夕方ティアナちゃんから聞いたばかりで、モコと一緒につい駆けつけてしまったわ!」
「そんなの聞いたら私だって駆けつけたかも!眼鏡をかけるほどじゃないけど、実は老眼がきてたりするのよね・・・」
「もう毎日大浴場に通うって決めたですよ!」
「視力が良くなるのなら私だって毎日通うわ!」
視力の低下は年齢を重ねれば誰しもが経験することですから、これには眼鏡をかけてないマダム達も大興奮です!
「うーん・・・、私達は大浴場に通えばいいけど、ウチの旦那の目も何とかしてあげたいわね」
「あ、そっか!ここって男子禁制だものね」
「毎日あの水で目を洗うとか?」
「それしかないかも」
そういえば、お父さんの視力だって回復させてあげたいですよね。
みんなの家にハム水の樽が置いてあるわけだし、何とでもなるとは思うけど。
「ん~、目薬でも作ろうか?」
「めぐすりって何だ?」
「あ、えーと、携帯できる小さな入れ物に聖なる水を入れておいて、両目にチョンって一滴ずつ垂らして使うの」
「それすごくいいじゃん!一滴だけ垂らすのは難しそうだが」
「目薬の入れ物をどんな感じで作ればいいかは何となくわかるのです。でも忙しいレミお姉ちゃんにこれ以上頼るのもな~」
「私なら別に構わないけど?」
「物作りが得意なクラフターなら誰でも構わんだろ。露店でアクセサリーとか変な物を売ってるヤツがいたらたぶんクラフターだぞ?」
「それだ!明日ロコ姉ちゃんと一緒に露天商を探してみるのです!」
「・・・え?わたしも!?なんか突然クーヤちゃんに巻き込まれたよ!!」
「「あーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」」
目薬を作るため、明日はロコ姉ちゃんと一緒にクラフターを探すぞー!
ちなみになぜロコ姉ちゃんを巻き込んだかというと、ボクとロコ姉ちゃんだけ何もやることがなかったからです。
良いクラフターが見つかるといいな~♪




