第502話 お風呂上がりのコーヒー牛乳は最高なのです
ガラガラガラガラ
大浴場のドアは引き戸なのですが、ガラガラとうるさい音が出るようにした犯人はもちろんボクです。
しかも豪快に開けるのを想像しながらこうしようって決めたから、大した意味もなく真ん中から左右にガラガラ開けるタイプなのだ。
というわけで豪快に大浴場のドアを開けたわけですが、中で4体のハムちゃんがお風呂掃除を頑張っていました。
「うむ、ご苦労!」
「わあああ~~~~~!ハムちゃんがお風呂掃除していますよ!!」
「大浴場のお掃除はハムちゃんのお仕事なのです。それだけじゃなくて、脱衣所、玄関、通路、くつろぎ空間のお掃除もですし、1階オーナーズルームもハムちゃんがやってくれるから、大奥はつねにピカピカなのです!」
「なるほど・・・、でもこき使いすぎなのでは?」
「違うのです。ハムちゃん達が必死にお掃除してるのは、無理矢理やらされているのではなく、頑張ってお金を稼いでいるのです」
「給料が出るのですか!?」
「ピリン紙幣じゃないですよ?」
プリンお姉ちゃんに、お金として使うポーカーのチップを全種類手渡した。
「これがハムちゃんのお金なのです。青いチップ1枚で大浴場に入れます。緑のチップと赤いチップを払えば食材を買うことができますし、この豪華なチップ1枚でボク達と同じ料理を食べることができるのです!牛乳とお風呂もセットです!」
「凄いじゃないですか!」
「ただハムちゃん達の分の食材も仕入れておかなきゃならないから、結構お金が掛かりますね。料理も多く作らなきゃなのです」
「自分達で掃除をするか、お金で解決するかって話ですね。また剣が売れたし、それくらいの出費なら問題無いと思いますよ」
「お仕事ハムちゃんは1日8体って上限を設けたので、毎日ハムちゃん8体分の食費が掛かる計算になりますが、ボクの魔力で生きられる生物ですから、夕食分だけで十分です。常に満腹だからそんなに食べませんし」
「なるほど。娯楽としての食事って感じですか?」
「そうそう、そんな感じなのです!」
他にも食器洗いや洗濯なんかもやってもらおうと思ってますが、服を干すのは身長的に無理そうですね。まあそれくらいはお姉ちゃん達に頑張ってもらおう!
ブォーーーーーーン
廊下で掃除機をかけているハムちゃんを発見し、『ご苦労!』と労ってから、1階の脱衣所に行き、ガラスの冷蔵庫を設置した。
これで1階大浴場のデビュー戦に間に合いました!中身は空っぽですが、牛乳とコーヒー牛乳はペカチョウに持たせてあるから大丈夫です。急いで入れても腐るのが早くなるだけだから、ギリギリでいいのですよ。
とまあ、色々やってるうちに小型のガラス冷蔵庫が完成しました!
「ベレッタお姉ちゃん、チャムねえ、本当にありがとうなのです!」
「どういたしまして♪」
「もう一つ作れるくらいガラスが余ってるっスけど、作らなくていいんスか?」
「えーと、一応買っといたってだけで、今すぐ必要ってわけじゃないのですよ。まだ大奥初心者ですから、どこかに置きたくなったらその時お願いするのです」
「ん~、でももうついでじゃない?」
「そうっスね。仕事を少しだけ残す方が気持ち悪いから全部終わらせとくっス!」
「エエーーーーー!?働かせすぎてすごく悪い気がしてるのですが・・・」
「クーヤちゃん、むしろ逆だよ!私達をもっと頼って欲しいの。毎日食事を用意してもらって死の病まで治してもらった大きな借りを少しでも返したいの!」
「そうっス!あれだけ良くしてもらったのに、恩を返せない方が辛いっス。ウチらの感謝の気持ちはこんなもんじゃないっスからね!」
言われてみると、二人の気持ちを全然考えてなかったかもしれない。
借りが大き過ぎて、ずっと申し訳ない気持ちだったんだろな~。むしろガンガンお願いするくらいしないと、心のモヤモヤが晴れないかもですね。
こうなったら二人に色々作ってもらおう!
よく考えたら、家に魔道具職人がいるってすごいよね。
大奥を快適にする魔道具か・・・。
そうだ!クーラーとか作れないかな?冷蔵庫が作れるんだから、なんか余裕で作れそうな気がしますね。ただアパートが広すぎるから燃費が悪そう。
こうなったら、レオナねえ達を出動させて魔石集めしてもらうしかあるまい。
クーラーの快適さを知ったら、魔石集めしなきゃってなるハズだし。
フムフム、次の予定が見えましたぞーーーーー!
というわけで、玄関に行って小型のガラス冷蔵庫を設置し、中に牛乳を3本入れておきました。この世界の牛乳は、紙でもプラスチックでもない謎の容器に入ってるのですが、容量は一つ1.5リットルくらいです。
こんなにいらないだろ!って気もしますが、一瞬でシェイクが大流行してみんな作ると思うから、たぶんこれくらいすぐ無くなります。
ちなみに、ボクが適当に牛乳と呼んでるだけで、全然牛じゃない謎の動物のお乳みたいです。オルガライドの南の方に大きな牧場があるみたいなので、いつか見に行きたいですね~。
◇
『『チュウ!!』』
一日頑張って働いたハムちゃん達が、早速チップを使いました。
労働時間によってチップの色が[青]→[緑]→[赤]→[黄色+赤の豪華なヤツ]と変化していく設定なのですが、今日は全員フル稼働だったから豪華なチップをゲット。
食材を買って自分で料理すればチップを節約できるのですが、全員そんな気はないみたいで、ボク達と一緒の夕食です。
豪華なチップを使用すると、[ボク達と同じ料理]+[牛乳飲み放題]+[大浴場]という最強コンボがセットになってるので、これを選択するに決まってるんですけどね。
でも冷静に考えたら、全員これを選択するとなると、他のチップの存在意義が無くなってしまうのです!
よし!大奥の基本的なお仕事以外でハムちゃんに頼み事をする時に、仕事内容によって[青][緑][赤]のチップを渡してもらうことにしよう。お仕事ハムちゃん以外にも使っていいことにすれば、結構出回るんじゃないかな?
というわけで、今日はハムちゃんまみれの楽しい夕食でした♪
そして夕食の後は、お待ちかねの大浴場なのです!
「なんかモコねえもついてきたーーーーー!」
「ティアナに自慢されまくったから、そりゃ来ますよ!」
「一度来てしまったらもう抜け出せなくなるよ?こんな楽しいとこ他にないもん」
「しかしすごい建物ですなあ!白い壁の中がこうなっていたとは・・・」
「スタジオ・モコティーもだよ!完成が待ち遠しいね♪」
「ハムちゃんオブジェが可愛すぎますぞーーーーー!」
そういえばそんな名前だった。
映画制作会社って呼んでたから、自分で名付けたのに忘れてました!
そして当然のようにレミお姉ちゃんとママさんもやって来て、今日も大勢の人達が一斉に大浴場に入ることになりました。
結局、夕食後に家族が来るのをくつろいで待ってたから、もうずっとこのパターンになるかも。大勢で入るお風呂の方が楽しいし、困ることといったら洗面台が渋滞するくらいだから、むしろバラバラに入るよりいいのかな?
初めての大奥に驚きまくるモコねえにほっこりしながら、脱衣所に入った。
「あっ!ガラスの冷蔵庫だ!」
「すごく可愛い!!」
「何かいっぱい入ってるけど?」
「牛乳とコーヒー牛乳なのです。お風呂上がりに飲んでください!」
「コーヒー牛乳ですって!?楽しみね♪」
コーヒーという単語に真っ先に反応したクリスお姉ちゃんですが、クーヤちゃん特製激甘コーヒー牛乳を飲んだ時にどんな顔をするかだな~。
全員パパッと服を脱ぎ、タオルを手に大浴場に突入しました。
今日はモコねえも参加したから40個のおっぱいですよ!
あっ!リズお姉ちゃんも初参戦だから42個でした。新記録達成なのです!
やっぱりハムちゃん風呂が大人気で、モコねえがリリカちゃんと一緒に大騒ぎしています。そのうちハムちゃんに乗ってお風呂を泳ぎ始めたのですが、まさかハムちゃんが泳げるとは予想外でした!
ボクもハムちゃんボートに乗りたかったのですが、レミお姉ちゃんとナナお姉ちゃんに捕まって解放されなかったので断念しました。明日こそ乗るのです!
というわけで今日のお風呂もメチャメチャ楽しかったのですが、むしろ本番はここからなのです!
腰にバスタオルを巻いたままガラス冷蔵庫の扉を開け、心の声と相談し、悩みながらもコーヒー牛乳を取り出しました。
「さあ、みなさん!牛乳とコーヒー牛乳、好きな方をお取りください!」
ボクの声を聞き、みんなバスタオル姿のままガラス冷蔵庫の前に集まりました。
「アタシは牛乳気分だな」
「私も牛乳かな?」
「せっかくだからコーヒー牛乳にしてみるっス!」
「リリカもコーヒーぎゅーにゅー!」
「もちろん私もコーヒー牛乳にするわ!」
「ん~、どっちにしようかな~?」
「じゃあ私もコーヒー牛乳を飲んでみましょう」
蓋を開け、全員が牛乳&コーヒー牛乳をゴクゴクと飲み始めた。
「「あっま!!」」
ボクとしては『あ、いい感じかも?』って思ったのですが、やはりクリスお姉ちゃんを含む何人かのお姉ちゃんには甘すぎたようで、『甘くて美味しい派』と『ちょっと甘すぎでしょ派』に分かれた。
「プハーーーーー!牛乳うめーーーーーーーーーー!」
「甘くてすごく美味しい!」
「ウチもこれ大好きっスね~♪」
「おいしーーーーーーーーーーーーーーー!」
「コーヒーの味がして美味しいんだけど、私には甘過ぎるわね」
「そうですね。もう少し甘さ控えめの方がいいかもしれません」
「確かにクーヤが作った飲み物ってメチャクチャ甘そうだな!」
「オレも次はその甘いの飲んでみっかな。おかわり自由なんだろ?」
「全員飲み物を手に取った後なら飲みまくってもいいですよ!」
「空気を読めって感じか」
「でも1人2本飲めるほど入ってますね」
「50本入ってるのです!」
そんな会話をしてると、クリスお姉ちゃんのバスタオルがはらりと床に落ちた。
「そうか!自分好みのコーヒー牛乳を作ればいいんだわ!」
「確かにそれが一番いいだろな」
「お母さんもミルクティーを作ろうかしら?」
「あ、私もミルクティー飲みたいかも!!」
「じゃあ一緒に作りましょうか~♪」
「はいっ!」
なるほど。こういう流れになってしまいましたか・・・。
どうやら、ガラス冷蔵庫の中に何種類もの飲み物が並ぶようになりそうですね。
それならボクも新商品を開発しようかな?
色んな飲み物が入ったガラス冷蔵庫。・・・うん、悪くないかも!