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第50話 災害の悪魔

 

 ―――――初めての別視点は、まさかの、悪そうなお兄さん視点―――――




 建物の中に入ると、怪我人まみれどころか無人だった。



「その怪我人はどこだよ!?」



 物陰に人が倒れているわけでもなく、本当に無人だ。

 どこか一ヶ所に集まっているのか?


 まず2階を調べてみたが、ここにも人影は無かった。


 ・・・となると、残るは地下室か?そんな場所に全員が集まって何を?

 まあ、行ってみればわかるか・・・。



 そして地下への階段を探しながら1階を歩いている時だった。



『ううう・・・』



「ん?今、人の呻き声が聞こえたな?ああ、そっちか!」



 階段を見つけ、少し緊張しながら下へ降りて見たモノは・・・。



「こりゃヒデェ。急がねーと死んじまうな」


 あのガキが言ったように、現場はとんでもない事になっていた。

 怪我をしてない者など一人もいない。全員が瀕死の重傷だ。


「ん?」


 なんか・・・、不可解な傷を負っている奴がいねえか?


 メルドアジェンダにやられたのだとしたら、噛まれたり爪で引き裂かれたりといった大きな傷になるハズなのに、足を槍で突かれて貫通したような傷を負った者が何人もいる。・・・魔法の傷か?あの森の主は魔法も使うのか?



 ―――ふと通路の奥を見ると、鉄の棒が大量に散らばっているのが見えた。



「なんだありゃ?」



 急いで治療師を連れて来なければマズいのはわかっているが、どうしても気になったので近寄ってみた。



「ああ、此処は牢獄なのか!」



 牢獄の側で戦闘があったという事は、牢獄の中にいた者が脱走をしたからだ。

 そしてそれは、間違いなくあの二人のガキだ。


 この鉄の棒はたぶん鉄格子なのだろう。

 鉄の棒を3本拾って並べてみると、長さは均一で恐ろしく綺麗に切断されていた。


 あのガキ共、何をやりやがった?風魔法か?


 ・・・いや、この太さの鉄格子を切断するには、中からの風魔法じゃ距離が足りない。メルドアジェンダが何かをやったとしても、こう綺麗に切断はできまい。


 それに、倒れていた奴らの、何かが貫通したかのようなあの傷・・・。

 黒髪の女の仕業か?・・・・・・わからない。


 とにかくあの二人のガキは非常に危険だ。


 貧民街(スラム)にあるクソヤバイ組織の本拠地を、ガキ二人が無傷で制圧だぞ?

 しかも『殺さずに手加減して』だ。クレイジーすぎるだろ・・・。


 テイマーなのかサモナーなのかは知らんが、メルドアジェンダを従えている時点で、とんでもねえ化け物だ。見た目に惑わされるな!アレは悪魔の子か何かだ。


 アイツらとはもう二度と関わっちゃならねえ。敵対したら簡単に殺されるだろう。



「クソが!!マジでヤバイのに関わっちまったな~。今日はツイてねえ・・・」



 ―――しかし彼はまだ知らない。災害はしつこく何度でもやって来るのだ。






 ************************************************************




 ―――――激戦の後なのに、今日もかわいいクーヤちゃん視点―――――




「家にとうちゃーーーく!!」

「疲れた」



 貧民街(スラム)を抜けた所でメルドアをモフモフと労ってから消して、その後はタマねえに道案内してもらいながら、ようやく我が家まで帰って来ましたよ!


 足が痛いのに泣き言一つ言わないタマねえ。

 もちろん放っておけるハズもなく、手当てしてもらおうと家の中まで連れて来た。



「ただいまーーー!!」



 ショタの声を聞き、お母さんがパタパタとリビングから出て来た。


「クーヤちゃん、おかえりなさ~い。あら?タマちゃんも一緒なのね~」

「タマねえが足を怪我しちゃったんで、手当てしてほしいの!」

「あらあら~!ここじゃ落ち着かないから、向こうのお部屋に行きましょうか~」

「手当てなら自分の家でできる」

「まあまあ、せっかくここまで来たんだし!」


 遠慮するタマねえの靴を強引にそっと脱がし、リビングへと移動。

 部屋を見渡すと、リリカちゃんがまだモンキーコングをやって遊んでいた。


 ゲームのやりすぎは目が悪くなるって警告したのに・・・。

 これからはちゃんと見張っとかないとダメですね!


「ソファーがいいかしらね?」


 ソファーに座ってゲームをしているリリカちゃんの隣に、タマねえを座らせる。


「なにこれ?」


 タマねえがテレビを指差した。


「もんきーこんぐ!!」


 当然ながら、リリカちゃんの意味不明な回答にタマねえは頭を捻らせる。


「あらあら~、足首が腫れてるわね~。じゃあ始めるわよ~」


 お母さんがタマねえの左足首に右手を(かざ)して、魔法の呪文を唱えた。


 ホワ~~~ン


「おおーーーーー!お母さんってウィッチだったんだね!」

「ウィッチじゃないのよ~。お母さんはクレリックなのよ~」


 あ~、そっか!!

 治癒は白魔法とかじゃなくて、聖職者っぽい職業じゃないと使えないのか。

 クエクエだと勇者が回復する魔法を使えりするから、ごっちゃになってたな。


「みんなすごい魔法が使えていいな~~~!」

「お母さんね~、クーヤちゃんの召喚魔法が一番すごいと思うのよ~」


 ぬぬ!言われてみると、確かにショタの召喚魔法はすごいかもしれない。

 一人だけ斜め上の方向に行ってますけどね!!



 タマねえの怪我は重傷ってほどでもなかったので、治療は簡単に終わった。



「はい治った~!」


 しかし治療を受けていたタマねえは、リリカちゃんが遊ぶ『モンキーコング』に目が釘付けになっている。


「タマねえ、足の治療が終わったってさ!」


 少し大きな声で呼びかけると、タマねえがゲームの世界から帰って来た。


「・・・ん?あっ!治癒魔法ありがとう!」

「どういたしまして~!」


 タマねえが立ち上がって足の具合を確かめているが、目線はテレビに向いており、やはりゲームが気になってしょうがないようだ。


「そのゲームは二人で交互に遊べるから、タマねえもやってみるといいよ!」

「ゲーム?」

「リリカちゃんがやってる遊びのことだよ」

「モンキーコングじゃ?」

「ああ、えーと・・・、ゲームってのは他にも色々あってね、今遊んでるやつは『モンキーコング』って名前のゲームなの」

「??」


 うーむ・・・、なんて言えば伝わるのだ?

 まあ遊んでるうちに意味がわかってくるだろうし、今はいっか。


「とにかくやってみなよ!リリカちゃん、二人用にしてもらえる?」

「いいよーーーーーーー!」



 そんなわけで、タマねえもゲームの世界に参戦だ!

 

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