第498話 遠隔操作の訓練を見にいく
ボクが左のカードを触ると、リリカちゃんが『ぐぬぬぬ』って顔をしたので、あえて右のカードを引いた。
「やったーーーーー!ざんねん!そっちはババでしたーーーーー!」
「しまったーーーーーーーーーーーーーー!」
「じゃあつぎはあたしのばん!」
カードを引いたままの状態だったから、今引いてきたババじゃない方のカードをリリカちゃんに奪われ、その瞬間ボクの敗北が決まった。
「はい、あがり!!あたしのかちーーーーー!」
「あああっ!カードを混ぜる前にそっちを持ってくなんてずるいのです!」
「ぷーーーーー!クスクス!」
「「あーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」
こうして大人数で開催した初めてのババ抜きは、クーヤちゃんが最下位だった。
とにかく盛り上がればそれでいいので、勝ち負けなんかどうでもいいのだ。
そう。実は最近アイテム召喚で、念願のトランプをゲットしたのですよ!
ポーカーのチップだけ持ってる状態だったから、『トランプが無いのにチップだけあってどうしろと?』って憤慨してたんだけど、これでようやくみんなで遊べるようになりました。
ホントはもっと早くから遊べる状態ではあったんだけど、大奥が完成したらこうやってみんなで遊ぼうと思ってたから、今日初めてのお披露目なのです!
ただ、数字がこっちの世界のモノと違うから、意味不明でも遊べるババ抜きを選択したわけですよ。
まあ数字を覚えるくらいそんな難しくもないから、みんな遊んでるうちに勝手に覚えるんじゃないかと思ってるけど、レミお姉ちゃんに頼んで、こっちの世界の数字で書かれたトランプを作ってもらった方がいいかもですね~。
みんなまだまだ遊び足りない雰囲気だったので、ボクはルールの説明係に徹し、メンバーを交代しながら大盛り上がりしてるお姉ちゃん達を見てほっこりした。
でも1ゲーム終わってメンバー交代するたびに、ソフトクリームを作りに何人も玄関に向かってくから、中身を補充するための再召喚が地味に大変なのです!
やはりクーヤちゃんは玄関に住むべきなのだろうか・・・。
まあこうして、大奥での『第一回くつろぎタイム』が無事終了し、ウチの家族とレミお姉ちゃん親子が帰宅しました。
大勢で入る大浴場もメッチャ楽しかったし、ソフトクリームやジャーキーを食べながらのババ抜きも超盛り上がったから、最高の思い出になったことでしょう!
完全無料でこれだけ楽しめるのだから、これから毎日大奥に通って盛り上がるパターンが続くんじゃないかな?こんな楽しいとこ、ボクなら毎日来ますよ!
しかも恐ろしいことに、楽しいだけじゃなく、大浴場に通うだけで美肌になり、しかも病気知らずになる女神の湯なのだ。
大奥ヤバすぎですよね!ここは天国か何かですか!?
もう、ラン姉ちゃんやぺち子姉ちゃんも入り浸りになるんじゃないかな~?
部屋に変なのが住み着いていることに、ピコねえがキレなければの話ですが。
ボクも家族のみんなと一緒に帰ろうか迷ったんだけど、レオナねえ達が麻雀をするとか言っているので、少しだけ様子を見てから帰ることにした。
とはいっても、ホントにちょっと様子を見るだけです。
明日も普通に朝から仕事があるアホ三人衆は【201号室】に帰ったから、参加するのは、レオナねえ、アイリスお姉ちゃん、ナナお姉ちゃん、プリンお姉ちゃん、ロコ姉ちゃん、シーラお姉ちゃん、ミルクお姉ちゃん、ベレッタお姉ちゃん、チャムねえの9人ですね。
ボクとタマねえはそろそろ実家に帰ってオネムだから不参加です。
ホニャ毛と古代人コンビは初めての麻雀だから、レオナねえ、アイリスお姉ちゃん、ナナお姉ちゃん、プリンお姉ちゃんの4人で麻雀卓を囲み、素人は後ろに置いた椅子に座って、経験者の打ち方を見て覚える作戦のようです。
前に作ってあった『麻雀ルールブック』をレオナねえが全員に渡したから、素人組はそこに書いてある役と照らし合わせながら勉強できるのです。
これならきっと近いうちに参加できますね!
っていうか、一度素人4人で打たせれば、わからないなりに麻雀を楽しめるでしょうから、そこでようやく本気でルールを覚えるようになるんじゃないかな?
「明日もパンダ工房に行かなきゃならんから、熱くならずに遊び方を教える程度にしとこう。じゃあ始めるぞー!」
「「オーーーーーーーーーーーーーーー!」」
そんな感じで麻雀講座が始まったわけですが、この後の流れは大体読めたので、タマねえと一緒に実家に帰りました。
明日は遠隔操作の訓練日だけど、その前にセシルお姉ちゃんがカロリーゼロと二回目の勝負する予定だから、遅れないようにしないとね!
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ドガッッ!
セシルお姉ちゃん渾身の一撃で、とうとうカロリーゼロが動かなくなった。
「よしッ!」
「「勝ったーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
今回も問題無くストックに成功し、セシルお姉ちゃんはカロリーゼロ2体持ちになりました!
「二回目だったから安心して見ていられたな!おめでとう!」
「「おめでとーーーーーーーーーー!」」
「ありがとう!前回の反省点を修正して戦いに臨むことができた。これでようやく次の段階に進めるぞ!」
「すぐにでも2体目の確認をしたいだろうけど、この後遠隔操作の訓練があるから、今は我慢しれくれ」
「わかっている」
こうして、セシルお姉ちゃんが危なげなく2体目のカロリーゼロを手に入れることが出来たので、予定通り遠隔操作の訓練をしにパンダ工房に帰還しました。
ちなみにベレッタお姉ちゃんとチャムねえは、ボクがお願いしたガラス張りの冷蔵庫を作ってるからココには来てません。もう今から楽しみすぎます!
あと悪そうなお兄さんも、瓦礫集めしてるから来ていませんね。
それ以外はみんな来ました。遠隔操作の訓練までがワンセットですので。
次回からはもうこんなにゾロゾロと集まらないでしょうけど、プロジェクトの中心メンバーですから、最初くらいはすべて見届けたかったわけです。
◇
ソファーに腰掛けた召喚士三人に向かって、ライガーさんが手順を説明する。
「まず最初にやるのは視覚の共有だ。だが視覚の共有は召喚士の意志で出来るわけではなく、召喚獣に意識を引っ張ってもらう形となる」
「へーーーー!よくわからないけど面白そうだね!」
「パンダ工房の前に馬を置いてきた理由は、馬に意識を引っ張ってもらうためだ。ただ召喚獣に意識を引っ張られた召喚士本体は抜け殻のようになり、気を失ってしまうんだ。だからソファーに座ってもらった」
「なるほど、そういうことだったのか」
「というわけで、気絶した時にソファーから転げ落ちないよう、ふんぞり返った体勢で始めてくれ」
「わはははは!なんか偉そうだな!」
というわけで、三人の弟子がソファーでふんぞり返った。
「じゃあ始めるぞ。ここから馬に話し掛けて、『主、あの建物を見てくれ!』と、意識を引っ張ってもらうんだ。十分だと思ったら、『もう帰っていい』って馬に考えてもらえば、自分の身体に帰ってくることが出来る」
「なるほど、そんなの一度も試したこと無かった」
「召喚獣に主導権を握らせるとは逆転の発想だな」
「工房の入り口に連れていかれるのか?まあやってみっか!」
三人の動きが止まった。パンダ工房の前にいる馬と会話しているのでしょう。
けどみんな馬を持っていて良かったですね。
カロリーゼロしかいなかったら、もうこの時点で苦労するだろうし。
そして次の瞬間、ぐてっと力が抜けて三人がソファーに沈み込んだ。
「アホ面キターーーーーーーーーーーーーーー!!」
「視覚の共有に成功したようだな」
「何でこれをやるとアホ面になるんだろね~?」
「いや、よく見て!アンリネッタさんとガストンさんは見るも無残なアホ面だけど、セシルさんはアホ面になっていないわ!」
「すごく幸せそうな顔してるね~」
「純真無垢な子供のような笑顔って感じ?」
「意味が分からん。この違いは何なのだ!?」
「さあ?」
また一つ謎が増えたのです!
でもセシルお姉ちゃんだけズルくない!?
避けては通れないハズのアホ面すら回避するとは、これが貴族の力なのか!!