第491話 アパートの白い壁が撤去されていました
カロリーゼロを手に入れた三人の召喚士ですが、当然ながら人生で一番ってくらい喜びを爆発させています。
地面にメガトンパンチしてみたり、肩に乗ってみたりしている姿を見て、ボクとタマねえと悪そうなお兄さんで大はしゃぎしてた時のことを思い出しました。
少し落ち着いたところで、ライガーさんが質問した。
「魔力の消費量はどうだ?」
それを聞いて、三人が少し考える。
「召喚した時点で半分以上持っていかれたかな?」
「俺もそんな感じだ。維持する為の魔力を考えると、他の召喚獣との併用は厳しいだろなあ」
「私はまだ余裕そうだ。カロリーゼロを2体召喚して丸一日維持することも可能な気がする」
「「おおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!」」
「流石は伯爵家の一族ですな。魔力量が我等の倍あるのか・・・」
「凄いね!だったらもう1体手に入れた方がいいんじゃない?」
「もう1体・・・だと!?」
「とりあえず今日は休んで明日また戦うとか」
「ムムム・・・」
そういえば貴族って魔力が多いんだっけか!
ウチの王様ハムちゃんもとんでもない魔法を使うもんな~。
世襲しただけのボンクラが威張り散らかしてるようなのとは違って、この世界の貴族は、ちゃんと高い身分に相応しい『血脈』という器があるのだ。
もっとも、受け継がれた魔力を生かしもしないで威張ってるだけの貴族はただのボンクラですが。職業の問題もありますけどね。
「そうだな。せっかく訓練したのだから、戦い方を忘れる前にカロリーゼロをもう1体手に入れておいた方がいいかもしれない。ライガーさん、明日の朝もう一度やらせてもらえないだろうか?もちろん追加の料金は払う」
それを聞いてライガーさんが慌てた。
「だから『さん付け』はヤメて下さい!私はただの庶民ですから!」
「じゃあ聞こう。師匠を呼び捨てにする弟子がどこにいる?私はその様な破廉恥な真似などせん!」
「ぐぬぬぬ・・・」
「で、2体目のカロリーゼロを狙ってもいいのか?」
「ああ、それはもちろん構わな、いや、護衛がいなければダメか。リズ、明日も護衛を頼めるか?今日ほど時間は掛からない」
「いいぞ!」
「ありがとう。えーと、明日は遠隔操作の訓練があるから、2体目のカロリーゼロを手に入れたらそのまま訓練に入るってことでいいか?」
「わかった。よろしく頼む」
貴族であるセシルお姉ちゃんが倍の魔力を持っていたせいで、いきなり2体目に挑戦するというイレギュラーが発生してしまいましたね。
カロリーゼロ2体は、使い方次第でメッチャ強力ですぞ!
「はい!ライガーさん」
「ん?」
ライガーさんに、さっきのミルラ宝石を手渡した。
映写機はライガーさんが持ったままなので、これだけ渡せばオッケーなのです。
「セシルお姉ちゃん、アンリネッタさん、ガストンさんの、カロリーゼロバトル映像です。また従業員達を招集して上映会を開いてください。筋肉神ガストンの魂の大勝負なのですから、みんな報告を楽しみにしてるに決まってますよね!」
それを聞き、ライガーさんがニヤリと笑った。
「また仕事をサボらせるのは少し問題だが、ウチの従業員であるガストンの大勝負だからな!緊急招集するしかあるまい」
「ちょっと待った!もしかしてライガーさんの戦闘を見た時のように、俺の戦いを見ることができるのか!?」
「大正解!ちゃんと三人分撮ってあるよ」
「「おお!!」」
「うわははははははは!絶対盛り上がるぜ!」
「くっ!アタシも見たいけど、これから家具を買いに行かなきゃならねえんだよ。まあ実戦を目の前で見たわけだし、今回は買い物が優先だな~」
「だね!」
「私もアパートが気になってました!」
「ピコねえも連れていかなきゃなので、ジャーキー工房で彼女を回収してアパートに向かうってことでいい?必要な物をメモらなきゃなのです」
「だな。んじゃとっととパンダ工房に帰ろうぜ!」
「「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」
というわけで、カロリーゼロを消してパンダ工房に戻ってきた。
他人の家にあまり興味が無いリズお姉ちゃんは、パンダ工房の従業員達と一緒にカロリーゼロバトルを見るためにライガーさん達と一緒に食堂へ向かいましたが、それ以外の人はみんなボク達に同行するみたいです。
「ハンバーガー屋を建てるための瓦礫を回収しなければならないから、俺は貧民街に戻る。クーヤ、ハムちゃん貸りていいか?」
と思ったら、悪そうなお兄さんにはそれがありました。
「ほいさ!」
お店1件分の瓦礫の量ってどれくらいだろ?
3体いれば十分すぎる気もするけど、容量が【3】の子を5体召喚した。
「こんなにいらない気もするけど、念のため連れてってください」
「恩に着る!」
ついでだから建築も依頼しておこう。
「ベレッタお姉ちゃんにお願いがあるのです」
「・・・ん?」
「悪そうなお兄さんが瓦礫をいっぱい集めてくるから、明後日くらいにそれを使ってちょっとした建物を造ってほしいのです」
明日は大奥を満喫したいし、遠隔操作の訓練を見なきゃですからね!
「えーと、ハンバーガー屋さんってことはお店だよね?ちゃんとした建物を造らなきゃだから、1日じゃちょっと厳しいかな~」
「1年か2年でぶっ壊す予定だから、箱型の適当な建物でいいのです。それでも1日だと厳しいですか?」
「ただの四角い建物って感じ?ん~、それなら何とかいけるかな?」
「私とミルクが手伝えば楽勝だよ!」
「三人でパパっと作っちゃおう!」
「おお!最強魔法使いが勢揃いとは心強いのです!」
「俺から頼むつもりだったのだが、クーヤに先に言われてしまった。でも助かったぞ!瓦礫は明後日までに何とかするからハンバーガー屋を頼む!」
「任せといてよ!」
ボクもハンバーガー屋さんの構造を思い出して、絵に描いておかなきゃだ!
悪そうなお兄さんも考えてるだろうから、軽く話し合った方がいいですね。
トナカイに乗った悪そうなお兄さんが、ハムちゃんをゾロゾロ引き連れ貧民街に帰っていった。
「んじゃピコねえを連れて来るのです。たぶん変なのが二人ついて来ますが」
そう言って、ジャーキー工房に入っていった。
◇
当然のようにピコねえにくっついてきたラン姉ちゃんとぺち子姉ちゃんを加え、大人数でアパートの前までやって来ました。
「白い壁が無くなってるよ!」
「向こうの土地も無事に買えたし、大奥の工事も終わったから、もう必要なくなって取っ払ったんじゃないか?」
「しまったーーーーー!ハンバーガー屋さんを建てる時に、魔法エフェクトが派手なベレッタお姉ちゃんを隠そうと思ってたのに!」
「ルーン文字が出るのって最初だけだし、気にしなくていいんじゃない?」
「クーヤは気にしすぎ」
「ぐぬぬぬ・・・、まあいっか~」
『ほわあああ~~~~~』って声が聞こえたからそっちを見ると、ベレッタお姉ちゃんとチャムねえとプリンお姉ちゃんが、大奥と建築途中の会社を見て目をキラキラさせていた。
「この二つの建物だけ格が違う!そっちの建築途中の建物もすごくない!?」
「ウチらが住むアパートって本当にココなんスか!?なんか隣の建物にハムちゃんが乗ってて笑えるんスけど!」
「美しすぎる!!今日から此処に住むんですよね!?」
「おう!まだ家具が無いからガランとしてるけどな」
古代人コンビはともかく、プリンお姉ちゃんはずっとアパートが完成するのを楽しみにしてましたからね~。
タタタタタタッ
建築中の会社の中からタモさんが走ってきた。
「お待ちしておりました。アパートが完成しましたよ!」
「注文通りに頑張って作ってくれてありがとうなのです!間接照明の最終チェックはどうでしたか?」
「まったく問題ありませんでした。でも実際に住んでみて気になる点が見つかりましたら、隣の建物に出入りしているウチの従業員にご報告下さい」
「了解なのです!」
「皆様が中に入った後フワフワ絨毯を撤去しますので、そこはご了承下さい。床が汚れるのが気になるならば、すぐに代わりになる物を購入するとよろしいかと」
「なるほど~。あ、でも似たようなヤツを持ってたような気がするから大丈夫なのです!」
「そうでしたか!では私はそろそろ失礼します。また家を建てることが御座いましたら、『ムギマル建設』を宜しくお願いします!」
そう言うと、タモさんは建築途中の会社の中に入っていった。
「さてと、んじゃ『大奥』に入って必要な物をメモりまくるぞ!」
「「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
ここを適当に終わらすと、絶対に買い忘れが発生して、何度も家具屋さんに通うハメになりますからね。
みんな、今こそ頭をフル回転させるのです!