第488話 オルガライドの街を案内しよう
西門でベレッタお姉ちゃんとチャムねえの通行料を支払い、ボク達はオルガライドの街に入った。
出入りするたびに何度もお金を払ってらんないから、冒険者ギルドのカードを作るか、ボクみたいに役所で商業カードを作った方がいいですね。毎年税金を引かれますけど、毎回通行料を払うよりも圧倒的にお得なのです。
「美しい街並みだね♪」
「門兵もピリピリしてなかったし、すごく平和そうな街で安心したっス」
「へーーーー!治安が悪い国って門兵でわかるもんなの?」
「治安が悪い国は、ちゃんと通行料を払っても兵士に嫌らしい目つきで見られて、賄賂を渡さなかったら悪者に狙われたりするっスね」
「なにそれ、最悪!!」
「荒れてた頃のハイドリムドでも、そこまで酷くなかったよね~」
「でも悪者に狙われまくった」
「ジグスレイドはちょっと頭がおかしかったから・・・」
「本当に治安が悪い国を、私達が知らないだけなんだよ」
いかんですぞ?もっと楽しい会話にしなきゃ。
「あとでまた西区に戻ってくるから、先に中央区を案内するのです!」
「とりあえず真っ直ぐ冒険者ギルドに行く?あ、二人とも商業ギルドの方かな?」
「冒険者として活動するかどうかわからないから、商業ギルドにしよう!」
「ウチはもちろん商業ギルドっス!」
「じゃあ役所だね♪それではしゅっぱーーーつ!」
変な鳥に乗った一行はすごく目立ってたけど、目をキラキラさせているベレッタお姉ちゃんとチャムねえに色々説明してたから、周りの目など気にならなかった。
そして役所に突入し、商業カードを作りました!
二人とも冒険者ギルドのカードと同じ金額の20000ピリン支払ったわけですが、ボクがカードを作った時にお金を払った記憶が無いことに気付き、ライガーさんかレオナねえが支払ってくれていたことが判明しました。
借りを作ってたことにすら気付いていなかったとは不覚なのです!
たぶんお金は受け取ってもらえないから、お礼だけでも言っとかなきゃな~。
どっちのカードも毎年口座から自動的に税金が引かれるシステムなのですが、セルパト連邦で作った冒険者カードも税金を引かれるはずだから、色んな国でカードを作りまくるのって危険かもです!
まあ、口座にお金が入ってなかったらカードが使えなくなるだけなので、更新をサボってたせいで借金まみれになるってことはないんだけど、冒険者ランクや商業ランクが下がるのは激痛かもしれません。
お金はあるわけだし、一度セルパト連邦まで入金しに行った方がいいですね。
ボクは結構お金を残してある気がするから大丈夫だと思うけど、他のお姉ちゃん達の口座にいくら入ってるのか知らないんですよね。合流したら確認しておこう。
もしかしたらミミリア王国の冒険者ギルドで入金できるかもしれないから、聞いてみた方がいいかな?年齢制限のせいで、クーヤちゃんはこっちのギルドカードを持っていないわけですが。
―――――『シェミール』を見上げる。
額から汗が一滴ツツーッと垂れた。
なんという禍々しいオーラを放っているのだろう・・・。
この中に一歩足を踏み入れた途端、魑魅魍魎が一斉に襲い掛かって来るのだ。
「入らないんスか?」
「クーヤちゃん、なんでそんなに切羽詰まったような顔をしてるの?ここってクリスさんが働いてるお店なんだよね?」
「素人めが・・・。ここは気楽に入っていいような店じゃないのだ」
「クーヤにとってシェミールは魔境」
「他の人には全然問題無いから気にしなくていいよ」
この前来た時に敗北したからハゲは使えん。
そうか、わかったぞ!黄色くて目立ちすぎるからすぐバレるのだ。
「タマねえ!ポンチョを交換してください!」
「なるほど。確かに黒づくめなら誰もクーヤだって気付かない」
「そうかなあ?」
タマねえとポンチョを交換し、黒ショタになった。
そして黒眼鏡を装着。
フハハハハ。もはや完全に悪そうなショタだ。
万が一バレたとしても可愛さのかけらも無いわ!今日はいける!
「勝ったな」
「悪の化身クーヤだ!恐ろしすぎてマダムですら近寄ることができない」
「そうかなあ?」
本日の主役二人を先頭にして店に入ることにした。
ビビってるわけではない。念のためだ。
ガチャン
「「いらっしゃいませ~!」」
「わあああ~~~~~~~~~~!」
ベレッタお姉ちゃんとチャムねえが感嘆の溜息を漏らした。
このお店って本当にオシャレですからね。黒眼鏡のせいで薄暗いけど。
オシャレで素敵な服に釣られた二人が、マネキンの方に駆け寄っていった。
―――――前の防御が無くなり、エミリーお姉ちゃんと目が合った。
「あーーーっはっはっはっはっはっは!クーヤちゃんが黒眼鏡してるーーー!」
タタタタタッ
ヒョイッ
「エーーーー!一瞬でバレたんですけど!タマねえ、話が違う!」
「黒クーヤちゃんもかわいい!でも黒眼鏡は邪魔ね」
エミリーお姉ちゃんに黒眼鏡を外され、盛大にぺろぺろされた。
「あそこを見て!」
「あっ!黒いけど、間違いなくあの子よ!」
「行くわよ!」
ドドドドドドドドドドドドドドドド!!
「にょわああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
◇
マダムの大群に襲われ、クリスお姉ちゃんによって救出されたのは1時間後のことだった。
「クーヤくん、ようやくあの二人を街に招待したのね!」
「うぅ、酷い目にあったのです」
「なんでタマちゃんと服を交換してるの?」
「もうどーでもいいです。ところでボクの黒眼鏡見ませんでしたか?」
「はいっ!」
エミリーお姉ちゃんが持ってた。
「ありがとなのです。みんなまだお買い物中?」
「うん!」
「すごくお洒落な最新の服をオススメしたから、あの二人は試着室の中よ」
「目をキラキラさせてたから、いっぱい買ってくれそう♪」
さっき104万ずつ渡したけど豪快に使っちゃいそうですね。まあ服なんて何着あっても欲しいのが女の子ですし、好きなだけ買うといいです。
ベレッタお姉ちゃんとチャムねえだけじゃなく、他の人達もあぶく銭を手にしたばかりだったから、結局ボク以外の全員が服を買い漁り、買い物が終わったのはさらに1時間後のことだった。
女性の買い物は、時間も長いのです!
服にあまり興味が無い戦闘民族達はみんなパンダ工房にいるので、早く帰ろうって声がなかったせいでこうなったのかも。
会計を見ていたのですが、1人につき20万とかいってました。
古代人コンビなんか30万超えてましたね。
これにはシェミールの店員さん全員がニッコリ。
お姉ちゃん達も良い買い物ができてニコニコしながら店を出ました。
「いや~、みんなメチャメチャ買いましたね」
「もう目移りしちゃって、買い物が止まらなかったよ!」
「これでもう、しばらく服を買わなくてもいいっスね~♪」
「家具屋さんでお金を払わなくていいみたいだから、ちょっと買い過ぎちゃった」
「いいんじゃない?またすぐ所持金が増えそうな気がするし」
「お腹空いた」
「もうお昼過ぎてますね。久々に中央公園に行こうよ!」
「いいかも。お昼は露店だね♪」
中央公園にたくさんある露店で串焼き肉とサラダを買い、ベンチに座った。
ここに来るとガールハント時代を思い出しますな~。
「うっま!」
「この串焼き肉、タレがすごく美味しい!」
「そうなのです!この辺に売ってる串焼き肉って大体どれも絶品なのですよ」
「サラダも美味しいよね~♪」
「ここにマヨ置いとくから勝手に使ってください」
「あ、使う使うーーーーー!」
古代人二人の案内ってことで教会とか学校にも行ったりしましたが、結局自分達が楽しいことばっかりしながらアホ鳥で中央区を歩き回りました。
ただ武器屋さんとか防具屋さんには入りませんでした。
だって、どう考えても古代の武器防具の方がすごいんですもの!
ブロディさんには悪いけど、ちょっと恥ずかしくてお見せできませんな。
・・・さてと、そろそろパンダ工房に向かいますか!