第486話 ラン姉ちゃんとぺち子姉ちゃんの企み
大奥1階のオーナーズルームですが、実はリビングだけじゃなくトレーニングルームにもトイレがあったりします。
誰かがトイレばっかりあるアパートだって言ってたけど、本当にトイレだらけなのですよ。ただボク達の家である1階には、ホニャ毛や古代人以外にもいっぱい人が集まりそうだったから、トイレを二つにしたんですけどね。
というわけで、レミお姉ちゃんが1階に便器くんを設置しにいったので、ボク達は住人の部屋をじっくり見てみることにした。
さっきは急いでたからちゃんと見てなかったし、ピコ姉ちゃんがどの部屋に住むか悩んでいたから、一つ一つ見せてあげるのです。
「一人で住むには広いくらいじゃないかしら?」
「ワンルームにして住人を増やすかどうかで悩んだのですが、さすがにワンルームだと味気ないかな~と思って1LDKにしました」
「私なら十分な大きさだよ!部屋はキレイだしトイレ付きだし大浴場まであるし、最高の環境だと思う!」
「すぐ隣でハンバーガー屋さんがオープンするみたいだしね♪」
窓の方に歩いていって景色を見てみると、『208号室』はボクん家側なので、素晴らしい眺めだった。
「やっぱり住むならこっち側かな~?」
「まだ反対側を見てないし、わからないわよ?」
「じゃあ『207号室』にGO!」
ガチャリ
なぜこの組み合わせになったのかはわかりませんが、シーラお姉ちゃんとミルクお姉ちゃんとナナお姉ちゃんと一緒に『207号室』に入った。
「うん。まだ工事中だけど、ほとんど映画制作会社しか見えませんね」
「右前方に少しだけ街並みが見えるから、『205号室』よりはこっちかな」
「自分の部屋にいる時って外の景色なんか見ないから、私ならそこまで気にしないと思うわ」
「景色が見たければ、くつろぎ空間に行けばいいだけだもんね~」
言われてみると、たしかに自分の部屋にいて景色を気にすることって無いかも。
まあそれでも景色が良いに越したことはないから、選べるなら反対側だよね。
部屋の構造は一緒なので、景色だけ確認しながら『201号室』まで来ました。
「うん。この部屋がいい!」
ピコねえが、外の景色を見ながらそう言った。
「こっち側でいいの?」
「あのハムちゃんが見えるのもいいけど、左側に道路が見えるじゃない?なんと、この部屋に住めば、会社に出入りする人達を監視できるのさ!!」
「思ったよりも下衆い思考で決めたんスね・・・。でも窓の近くで着替えちゃダメですよ?こっちから見えるってことは、向こうからも見えるのですから」
「む、確かに・・・。まあそれくらいのリスクは仕方あるまい」
ピコねえがよくわからない思考でこっち側の部屋を選択したので、ベレッタお姉ちゃんとチャムねえには、ボクん家の庭が見える『202号室』と『204号室』をオススメできますね♪
「ここがあたし達の部屋か~!」
「いい部屋にゃね!」
ラン姉ちゃんとぺち子姉ちゃんがなんか言ってますよ?
「おい、お前ら!ここ私の部屋だから!!」
「わかってるわよ。家賃を払う権利はピコルにあるわ」
「ウチらは住むだけにゃ」
「私に家賃を払わせて居候しようだなんて、お前らいい根性してやがるな!」
「そんなに褒めないでよ」
「照れるにゃ~♪」
「褒めてねえわ!!二人とも出てけーーーーー!」
「っていうか、そろそろ仕事に戻らなきゃだし。あなたも出ていくのよ?」
「しまったーーーーー!今日から仕事なの完全に忘れてた!」
「ウチもスッカリ忘れてたにゃ!」
おっと!長居しすぎたし、ボク達もそろそろ空飛ぶ島に行かなきゃね。
そんなこんなでアパート見学が終了し、便器くんの設置が終わったレミお姉ちゃんと合流したわけですが、もう家具を置いていいかタモさんに聞いてみると、業者が出入りするからあと二日待ってほしいと言われました。
すなわち今日と明日で大浴場の工事が終わるみたいです。
よく考えたら、プリンお姉ちゃん抜きで家具を選ぶわけにはいかないから、ちょうど良かったかもしれませんね~。
お姉ちゃん達と話し合った結果、明日はベレッタお姉ちゃんとチャムねえをオルガライドに連れてきて、召喚士達の訓練にあまり興味が無い人達で街を案内することに決まりました。
一応病気のことがあるからクーヤちゃんの部屋で一泊し、次の日、召喚士三人のカロリーゼロバトルを応援した後、家具屋さんに突撃です!
家具が無いとアパートに住めないから、ピコねえも一緒に行くみたいです。
古代の金貨が高値で売れて、20万ピリンもの支度金ができて良かったですね♪
ただピコねえの部屋に居候しようと企んでるラン姉ちゃんとぺち子姉ちゃんも、一緒に行くらしいですよ?
自分達の寝具が無いと、あの部屋で寝ることができませんからね~。
家具を買う時にお金を出してくれるかどうかは知りませんが・・・。
たぶんピコねえがキレないように色々とお手伝いするつもりなのでしょう。大家さんとしては、『普通に部屋を借りて家賃払いなさいよ!』って感じなのですが。
まあでも、アホ三人衆が近くにいるのは面白いですし、そこまでうるさく言うつもりは無いです。
というわけでアホ三人衆をジャーキー工房に送り帰し、レミお姉ちゃんを家に送って、ママさんが帰ってくる時間にまたお邪魔しますと言って家の外に出た。
「あ、そうそう!1000万手に入るの忘れてました」
「「はあ!?」」
ピコねえに支度金ってことで古代の金貨を2枚渡し、この前の宝石屋さんに売りに行かせたら、1枚10万ピリンで売れて、『100枚までならこの金額で買い取ります』って伝言をもらったとみんなに説明した。
「そんなの売るに決まってるだろ!!」
「金貨なんて腐るほどあるわ!」
「あ、ちょうど良かったかも。明日あの二人を街に連れてくるんでしょ?」
「生活費が必要だよ!」
「ベレッタお姉ちゃんとチャムちゃんに100万ずつ渡して、残りをみんなで分配するって感じでいいんじゃない?」
「えーと?800万を11人で割ると・・・、1人72万くらいか」
「じゃあ、このまま宝石屋さんに向かうのです」
「「オーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
ワーっと中央区にある宝石屋さんまで突撃し、1000万ゲットしました!
「またお金持ちになった」
「家具を買ったらすぐ無くなっちゃいそうだけどね」
「いや、大奥の家具は土地代と建築費の残りで買うから、その金は生活費として持っていてくれ」
「おお、じゃあ普通にお金持ちだ!」
「端数の8万ですが、ベレッタお姉ちゃんとチャムねえに4万ずつ追加ってことでいいですか?」
「それで構わんぞ。あの二人って一瞬で金持ちになれる資産があるのに、こっちの都合で売らないでいてもらうわけだから、金に不自由させるわけにゃいかん」
筋肉神装備うんぬんで、ルーン装備って最終兵器的な扱いになったから、ここ一番で放出したいんですよね。
一連の流れはすでにベレッタお姉ちゃんとチャムねえに話してあり、生活に不自由させないってことで了承してもらってます。
っていうか二人とも、千年前の最強装備のインフレ具合に思う所があったようで、軽々しく放出してたらどんな状態になるか知っていたのです。
魔法知識にしても時代の変化を見極め、『またオレ何かやっちゃいました?』ってのは、ここ一番でやるってことになっております。
でもナナお姉ちゃんとミルクお姉ちゃんが我慢できない気がするから、長くは持たないでしょう。大騒ぎになっても面倒なだけだし、ベレッタお姉ちゃんとチャムねえが古代人だってのは隠すつもりですが、二人の実力は知れ渡るだろな~。
◇
ブオーーーーー
心を込めた丸洗いによって、例の如く気絶していたベレッタお姉ちゃんでしたが、クーヤちゃんのドライヤーテクによって今は気持ち良さそうな顔をしてます。
「はい、しゅーりょーーーーー!」
ベレッタお姉ちゃんが『んーーーーー!』と両腕を伸ばした。
「丸洗いはどうだったっスか?ニシシシシ!」
チャムねえの一言で、ベレッタお姉ちゃんがビクッとなった。
「あれは危険だよ!癖になったら依存症みたいになるやつ!深入りは禁物だよ!」
「まったくもって同意見っス!!」
みんな同じようなこと言ってますが、湯治が終わってからも毎日練習台にされていたプリンお姉ちゃんは大丈夫なのでしょうか?
「ねえねえ、二人とも病気はもうバッチリ治った感じ?」
「うん!完治したと思う」
「毎日女神の湯に入ってるから、前以上に絶好調っスよ!」
ならもう大丈夫だね。
「じゃあ明日の朝、ボク達の街に招待するのです!」
「「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
「千年後の世界だよ!楽しみだね♪」
「メッチャ楽しみっス!ここにいると千年後って感覚が無いっスからね~」
千年後の世界を見ることで、止まっていた彼女達の時がやっと動き出すのです。
驚きと同時に悲しみと切なさも感じると思うけど、ボク達が楽しさで埋め尽くせばいいのだ。とりあえず貧民街は避けて、西区と中央区を連れ回そう。
ふぅ、とうとう魔境シェミールに突撃する時が来たか・・・。




