第481話 アホ三人衆、最強便器を知る
映画制作会社に就職したハズなのに、実は便器屋さんだったと知り、助手達が『嵌められた!』と憤慨している。
そういえばティアナ姉ちゃんとモコねえもキレてましたね。
映画を作る華やかな世界から一転して、社会の底辺っぽい便器の世界に連れていかれたら、そりゃぶちキレるのも無理ありませんが。
しかしこの三人も便器くんの素晴らしさを知れば、なぜウチの会社が便器に命を懸けているのかわかるハズ!
「キミ達は最高の便器を知らない」
ボクの一言を聞いて、三人のコメカミに青筋が立った。
「最高かなんか知らないけど便器は便器でしょ!」
「クックック、甘いんだよな~。これだから無知無能の恥知らずは・・・」
「この黄色ムカツクんですけど!」
「極一部の人しか知らにゃいのに無知無能の恥知らずは酷いにゃ!」
「だったら試してみればいいのです。レミお姉ちゃんの家のトイレには最新型の便器くんが設置してありますから、これを機会に本物を知るといいです」
「クーヤちゃん、はい!」
「ん?」
レミお姉ちゃんに下敷きのような物を手渡された。
よく見るとクリアホルダーで、中の紙には便器くんの絵と文章が描いてあり、便器くんの取扱説明書だった。
「説明書じゃないですか!っていうかこの街にクリアホルダーなんてあったの!?あ、もしかしてレミお姉ちゃんが作ったのかな?」
「クリアホルダー??」
「えーと、この透明な入れ物のことなのです」
「あ~、トイレの中で説明書を読むから、最後に手を洗って紙を持ったら濡れて破れちゃうじゃない?だから濡れた手で持っても大丈夫なように作ってみたの♪」
「これはこれで売れそうな一品じゃないですか!」
「売れるかな~?」
ダメだ、この人やることすべてが天才すぎる。商品が無尽蔵に増えてくのです。
そういえば、『ピンポーン』って鳴る呼び出しブザーも簡単に作ってたし!
一度、特許の申請をしに役所に連れていかなきゃダメですね。
「お漏らし寸前の人がいたら手を上げてください!」
「寸前ではないけど、10段階でいうと6くらい?」
「ん~、7!」
「10にゃ!!」
「「お漏らし寸前じゃないかーい!」」
「じゃあぺち子姉ちゃん、トイレに案内しますので、この説明書を見ながら最新型の便器くんを使ってみてください」
「めんどくさいトイレにゃね~」
「最初だけですよ」
というわけで、ぺち子姉ちゃんをトイレに案内して戻ってきた。
「たぶん10分から15分くらいトイレから出てこないね」
「どうしてそんなに時間が掛かるわけ?」
「最新型だからです。驚きと快適さと面白さで、少しトイレで遊ぶハズなのです」
「トイレが面白いとか意味不明なんですけど!」
「あ、そうそうレミお姉ちゃん。映写機の話なのですが、『巻き戻し』機能も付けてほしいのです」
「まきもどし??」
顔の前で手刀を作った。
「ここが一時停止した場所だとすると、早送りしたらこう右に進むわけですが、巻き戻しってのは今見ている場面からこう最初の方に戻して、同じシーンをもう一度見ることができる機能なのです。あのキュルキュルした早送りの逆バージョンですね」
「なるほど!えーとすなわち、進む方向を逆にすればいいわけよね?たぶんそんなに難しくないからやってみるわ」
「お願いしますです!」
これでビデオデッキとしての機能はバッチリなのです。
一番喜びそうなのはエロビデオ組ですが。
バタン
トイレからぺち子姉ちゃんが出てきた。
初めて便器くんを体験した時のお姉ちゃん達と同じく、恍惚の表情をしてます。
「ここのトイレ最強すぎるにゃ!!まさかこれほどまでに格が違うとは恐れ入ったにゃ!ウチは本当に無知無能の恥知らずだったにゃ!」
「「おおおおおおおおおお!」」
「トイレのあの嫌にゃ匂いがしにゃいんにゃ!むしろ良い香りだったにゃ~!」
「おっとぺち子姉ちゃん、ネタバレはそのくらいで!」
「あ、すまんにゃ!さあさあ、ピコにゃんもとっとと行くにゃ!」
「そこまで高評価だと楽しみになってきたかも!」
案の定、ピコねえもぺち子姉ちゃんと同じく恍惚の表情で帰還し、好奇心が抑えられないラン姉ちゃんがすぐさまトイレに飛び込んでいった。
そしてみんなと同じく、10分くらいトイレで遊んでから説明書を手に帰還した。
「まさか下から風が吹いてお尻を乾かしてくれるなんて思わなかった!しかも水がジャパーーーっと出て便器の掃除までしてくれるの神すぎない!?もう凄すぎてビックリした!あたしも便器くん欲しい!」
「あんなところに水が直撃したから思わず声が出ちゃったよ!でも拭く必要すら無いって、とんでもないトイレだよね!」
「ししょーーーーー!ジャーキー工房に便器くん欲しいにゃ!便器屋さんの社員にゃらそれくらい優遇してほしいにゃ!」
「「それだーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
どうやら便器くんの凄さを知って、みんな興奮が収まらずって感じですね。
天才レミお姉ちゃんの恐ろしいところは、洗浄機能の水すら温水が出るようにしてあり、すでに改良する必要の無いパーフェクト便器くんなのだ。
当然のように便座も温かいし、風にしても温風が出てくるので、すでに冬の寒さまで想定して作ってあるのです。
ただ最強すぎるから、便器くんをいくらで売るか悩んでるみたいですけどね。
たぶんボクなら工事費込みで100万ピリンって言われても買うと思う!
まあそこまでぶっ飛んだ金額にはしないだろうけど。
「もちろん社員を優遇するつもりでいますけど、トイレに水を引く必要があるから、魔法使いがいなきゃ出来ないし、設置に何日か掛かるんですよ。だからナナお姉ちゃんかティアナ姉ちゃんの時間に余裕があればって感じになります」
「なるほど・・・、結構大掛かりな工事になっちゃうのね」
「あっ!私が住む予定のアパートに、便器くんを設置するとか言ってなかった?」
「うん。ウチのアパートは10年先を行く最強アパートですからね。住人達の部屋はすべて最強トイレ付きです」
「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
普通のアパートがどんな感じなのかまったく知らないけど、美しさと快適さだけで勝負ならこの街最強のアパートだと思うんだよな~。
最初から一人暮らしを想定していたので1LDKにしました。ただ玄関と大浴場とくつろぎ空間で派手にスペースを使ってしまったから、8人までしか住めません。
ぶっちゃけますと、14代将軍様の意向です。
だってアパートの名前、『大奥』ですもん。
そもそも男子禁制ですから、家族とかお呼びじゃないんですよ。
しかし完成が近いとなると、ピコねえとベレッタお姉ちゃんとチャムねえが、住人1号2号3号で決まりかな?レオナねえの思惑から外れたメンツですけどね。
たぶんあの人は映画に主演する女優さんとか狙ってるような気がする。
その前に部屋全部埋めちゃう?いや、さすがに怒られそうですね。
「後でやるのも面倒だから、今から便器くんを設置しにいこうかな~」
「おお!ボクもアパートが気になるから一緒に行くのです!」
「やったーーーーー!クーヤちゃんと一緒にお出掛けだーーーーー!」
「わぷっ!」
レミお姉ちゃんにぎゅっと抱きしめられた。
「ハイ!ハイ!私もちょー気になる!」
「ウチも気ににゃるにゃ!」
「もうこの際だからあたしらも見にいかない?」
「アパートに行くなら、パンダ工房にいるみんなも連れてった方がいい」
「うん。こうなったらみんなで行くのです!じゃあレオナねえ達も連れていくから、とりあえずパンダ工房に寄るね」
「「アイアイサーーー!」」
こうして街の便器屋さん一行は、パンダ工房に向かって出発した。
アパートがどんな感じになっているか、すごく楽しみなのです!