第48話 メルドアって、実は・・・
突如目の前に魔物が出現したことに驚いたタマねえが、ショタを守るように手を広げて、メルドアとの間に立ち塞がった。
・・・え？
タマねえは俺を魔物から守ってくれてるのか？
さっき出会ったばかりの間柄なのに、身を挺して、か弱い幼子を守ろうとするなんて、変な子だけどめっちゃいい子じゃん！！
「タマねえ、大丈夫だよ！この白い魔物はボクが出した召喚獣なの！」
「・・・え？クーヤがこれを！？」
「うん！アイツらが近寄って来ても『メルドア』が守ってくれるよ！でも向こうは人数が多いから、メルドアの横をすり抜けて来る奴がいるかもしれない。気は抜かないでね！」
「わあああああ！クーヤすごい！！」
さて、これで防御力が20アップしたけど（クエクエ基準）、細かい指示を出さなきゃ、タマねえにグロ画像を見せることになってしまうかもしれない。
「おい！何なんだよあのデケェ魔物は！？」
「ちょ、ちょっと待て。アレって南の森の奥にいる・・・」
「ひょっとして、メルドアジェンダじゃねえのか！？」
・・・ん？アイツら、メルドアのこと話してね？
ああ、森に行けば沢山いるだろうから、知っていてもおかしくないのか。
なんせ裏の森に入って最初に出会った魔物だからな～。
メルドアには過度な期待をせず、防御に徹してもらうのが良いのかもしれない。
「冗談じゃねえぞ・・・、森の主じゃねえか！！」
「何でそんなのが此処にいるんだよ！？」
「知らねえよ！！に、逃げるか？」
あれ？なんか森の主とか言ってない？
初っ端に出会った魔物だから、『スライムみたいな雑魚敵なのかもな～』とか思ってたけど、実はあの森最強の魔物だった！？・・・マジかよ！！
対峙した時、自分が無力なショタだから震えるほど怖かったものだとばかり・・・。
森の最強生物だったのなら、そりゃ怖いわ！
俺、よくそんなの倒せたな・・・。
ならば遠慮することなんてない！
奴らが逃げ腰ならば、追いかけて行って倒すのみ！！
「メルドア！俺と隣の黒髪の女の子以外は全て敵だ！アイツらの手足を攻撃して全員無力化してくれ。致命傷を与えるのは禁止だからな！」
『オン！』
メルドアが『任せとけ！』という凛々しい返事をしてから、もの凄い瞬発力で誘拐犯達の方へと走って行った。
『ガルルルルルルル！』
「ぎゃあああああああああああああ！！」
「き、来たあああアアアッッッッ！！」
「バカ、来るな！クソッッ！アギいいイイイィィッ！！」
うん。
たしかに手足にしか攻撃はしてないけど・・・、思いっきりグロ画像です。
タマねえ、あんなのは見ちゃいけません！！
・・・って何をボーっと見ている！援護射撃せんと！！
「お前だろッッ！あの魔物を連れてきやがったのはッッッ！！死ねええええ！！」
しまったッ！！いつの間にこんな近くまで！？
チイッ！
―――その時、タマねえが狼藉者の前へ飛び出して行くのが見えた。
ドガッッ！！
「ほゲッ！？」
タマねえによるバールの一撃が、薄汚れた男の右膝に直撃。
ドシャーーーーーッッッ！
剣を持った男が俺の目の前に転がって来た。
「い、イデエよおおおおおおおオォォォォォ！！」
ドカッ！
「ぐおッ！」
タマねえが転げまわる男の右手を蹴り、その手から剣が離され転がって行く。
「タマねえ、ナイス！！」
「これで安心」
タマねえはバールで両手が塞がっているので、転がってる剣は俺が拾い上げ、ってめっちゃ重いやんこれ！
「危なかったーーーーー！ありがとうタマねえ！！」
「クーヤの方がすごい。タマは1人倒しただけ」
「そんなことない！タマねえだって凄いよ！！」
タマねえって基本的に無表情の子なんだけど、今のひと言で、ちょっと嬉しそうな顔になったのがわかった。
うん、やっぱ女の子は笑顔が一番だ！
転がってる男が邪魔くさいので、タマねえがバールで通路の隅っこへと転がして行った。
・・・なんかちょっと笑える。
って笑ってる場合じゃねえ！メルドアの援護しなきゃ！！
ターーーン ターーーン ターーーン ターーーン ターーーン
間違って当ててしまわないように、メルドアの背後にいる誘拐犯を狙撃していく。
「鉄板！」
ボフッ！
稀に飛んで来る魔法は鉄板でガード。
ってか、なんであのハゲは火の魔法ばっか撃って来るんだよ！？火事になりたいの？バカなの？死ぬの？
ターーーン ターーーン ターーーン ターーーン ターーーン
「ぐわああああッッ！」
そのハゲも、とうとうカブトくん3号によって足を貫かれ地面に倒れた。
そして敵の増援も悉く撃退し、ようやく俺達以外に立ってる者はいなくなった。
◇
「よくやったぞメルドア！わしゃしゃしゃしゃ！」
メルドアのモフモフした頭を撫でて、最大級の愛情を込めて労った。
目を細めてウットリしているので、メルドアも喜んでいるのだろう。
ふとタマねえを見ると、一緒にモフりたそうな顔をしてソワソワしていた。
「タマねえも一緒に撫でていいよ！怖くないから！」
「・・・いいの？」
恐る恐るタマねえがメルドアの背中を撫でる。
「うわ～～～～～～！やわらかい！！」
「大きくてちょっと怖いけど、かわいいでしょ？」
「かわいい。好き」
それから5分くらいモフモフしてたけど、死屍累々といった現場が目に入って我に返った。
「そろそろ外に出よう。夕食に遅れちゃう」
「うん！」
この牢屋ゾーンは魔道具による光しか無いので、今が何時なのかさっぱりわからないけど、たぶんまだ夕食には間に合うハズ。
牢屋への通路の入口らへんは、カブトくんに足を貫かれた誘拐犯や、メルドアに手足を攻撃されたことによるグロ画像で酷い有様だけど、かなり警戒しながらメルドアを先頭におっかなビックリ通り抜ける。
「痛っ！」
「ユ％ネ＜を、た、頼む！もうお前らには、二度と近寄らない、から・・・」
見ると手足から血を流してる男が、タマねえの左足首をガッシリ掴んでいた。
「どうする？」
「『ユ％ネ＜』って何？」
「えーと・・・、怪我を治す人」
ああ、この男は治療師を呼んでくれって言ったのか。
でもいいのか？人を呼んだら誘拐犯なんて逮捕されると思うんだけど。
「悪者だけど、死なれたら気分悪いし呼んで来てあげようか。悪者の危険なアジトに来てくれる人がいるのかは知らないけど・・・」
「クーヤがそう言うのなら」
タマねえが男に『わかった』と返事をしてから、二人と一匹は奥のドアを潜り抜ける。
そして薄汚れたアジトの中を通ると、建物内は完全に無人だったので、犯人全員がショタとタマねえの二人によって潰されたということがわかった。
いや～、無事に脱出することが出来て良かった～～～～～！！
あとは治療師を探して家に帰るだけだ。
・・・でも貧民街に治療師なんているの？
